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【システム導入編12:プロジェクト立て直しのためのピースとは】

本マガジンの過去投稿は上記に入れています。

本マガジンは、ものづくりの現場でシステム導入する場合のポイントについて解説するシステム導入編です。工場のIoT推進部に配属された清史朗は、あるプロジェクトの担当になりますがなかなかうまくいっていません。そこに新米課長の紫耀もサポートに入って指導しながら、奮闘していきます。細川義洋氏著「システムを「外注」にするときに読む本」の内容を学びながら自分の立場にでどうすべきかを考えていきます。これまで要件定義と業務フロー図の作成について、そして、発注者として責任・姿勢、そして、ベンダの選びについてまなんできました。今回は、第4章「社内の協力を得るために」の後半を解説します。

・・・・・

🧒:おはよう。

👶:おはようございます。今日も第4章ですね。前回、システム担当の赤羽さんが行き詰って会社を休んでしまい、「御用聞きシステム」というプロジェクトはじ実質崩壊してしまった。そこで美咲さんと白瀬さんに蒲田社長がプロジェクトの立て直しほしいと頼んでいたところでしたよね。京浜マーケットに事件が起きてしまうということでしたよね?気になって・・。どんな事件なのでしょうか?

◆情報漏洩が発覚

🧒:美咲さんと白瀬さんと蒲田社長が打ち合わせしている最中に物流担当常務の神田さんが社長室に入ってくるんだ。そこで、ある記事のコピーを社長に見せる。

👶:コピー?

🧒:それは、マルシェ山の手というスーパーマーケットの社長が流通業界誌のインタビューに答えた記事だ。マルシェ山の手は同じ京浜マーケットの競合だ。その記事に京浜マーケットが企画している「御用聞きシステム」とそっくりな「オマカセ出前サービス」が載っているというんだ。そのマルシェ山の手は「3か月後から会員になった高齢者向け訪問型注文取りと宅配を行うサービスを開始する」というもので、顧客の購買履歴から商品を進めること、販売員にタブレット持たせることなど書かれているんだ。

👶:丸パクリじゃないないですか。。。

🧒;そう。それも写真に写っているタブレット画面も京浜マーケットで検討している画面とそっくりだというんだ。

👶:ということは、構想だけでなくて検討中の仕様も流れてしまっているということですね。

🧒:そうそう。今回のサービスは囲い込みが肝だから先手必勝だ。アイデアを盗んででも先にやってしまいたいと思うのは変じゃない。

👶;でもそれって、誰かが流したとしたら営業機密漏洩ですよね。犯罪ではないのですか?

🧒:そうかもしれないけど、それを証明するのは難しい。まずどこから流れたのかを調べないといけない。その時、その調査依頼を蒲田社長から美咲さんは受ける。そしてこの仕事に関わっていくことになるんだ。

👶:おー出番ですね。

🧒:ただ、情報が盗まれたとしても、京浜マーケットにできなくてマルシェ山の手ができたということは事実だ。そこに前回美咲さんが言っていたシステム導入のために不可欠なことが隠れている。それを確かめる上でも犯人を見つける必要があるんだ。

👶:なるほど。でもやっぱり犯人は赤羽さんですかね。。

🧒:状況からみると確率はあるけど、赤羽さんが情報を流す動機がない。

👶:でも、それを手土産に転職するっている。

◆犯人はベンダの営業マン

🧒;いやいや、そんなことしたら転職先で居づらくてしょうがないだろ。。。しかし、画面の設計情報まで理解して、他社に展開してくなんてなかなか難しい作業だ。そうなるとできる人は限られてくる。すぐに実際に犯人は中野さんだと確信する。そして、美咲さんは白瀬さんに指示をだして、二人に飲みに行かせて情報収集させ、さらに中野さんを京浜マーケットの取締役会に呼び出すんだ。その時は当然情報漏洩のことではなく、純粋に実態と今後の対応を聞きたいとうそをついてね。

👶;おお。大胆確かに、彼女しかほかにいないですしね・・。

🧒;実は、美咲さん会社にはマルシェ山の手のコンサルをしている人もいるようだ。さて、次の週の取締役会で、御用聞きシステムの継続について議論されていた。議論が中盤になったころ、美咲さんは中野さんを紹介し、「情報漏洩について今回議論をする」と言い、慌てふためく中野さんをしり目に、「ごめんなさい。あなたを呼んだのはあなたがやったマルシェ山の手への情報漏洩について断罪するためなの」といきなり言うんだ。

👶:ぎょえー。大胆・・。

🧒;当然中野さんは最初は白を切るのだけども、美咲さんがカマをかけ、結局中野さんは白状することになるんだ。場内は騒然だ。

👶;そうですねよね。びっくりしますよ。皆の前で犯人が白状するなんて・・。

◆競合がシステムを作れた理由

🧒;でも、中野さんは逆切れする。ここからがポイントだ。

👶:逆切れ・・。

🧒:下記が実際の対話だ。

中野:「仕方ないじゃないですか! ウチは何人もエンジニアを張り付けて待ってるのに、御社は何も決められずにグズグズした挙句、プロジェクト自体を壊しかねない状況だったんですよ? このままじゃウチは1000万円以上の損失です」

美咲:「プロジェクトを壊しかねない? マルシェ山の手ならうまくやるって言うの?」

中野:「その通りです。あちらは御社と違って、トップの方針を末端の社員まで浸透させる風土があります。どんな商売をして会社を儲けさせるか、そのために必要な商品・サービスは何か、業務プロセスはどうすべきか、体制やITはどうあるべきか、そんなことを繰り返し繰り返し、社員たちに研修やトップからのメッセージングで徹底してるんです。オマカセ出前サービスで高齢者を囲い込み、マルシェ山の手を地域になくてはならない存在とすることで安定した売上を確保する。それが会社の未来を安定させる。そういうシステム全体の目的と意義を社員全員が認識してるんです。」

👶:むむ。ここで京浜マーケットとマルシェ山の手と違いを話していますね。システム担当だけでなく、その他メンバーの意識が大きく違うと。

🧒;そして、美咲さんがマルシェ山の手のメンバーも忙しいのじゃないか、ふつう手伝わないのじゃないかというと、

「あちらの社員にとっては、システム開発への参加も本業なんです。みんな、協力するんじゃなくて、参加してるんです。新システムを実際に使うことになるユーザー部門のキーマンは、それまでの業務の中で本当に自分がやるべきことだけを残し、残りは周囲の人や派遣さんにもお願いします。こちらみたいにヒマなときに手伝ってやるなんて意識はありません。プロジェクトへの参加を人事考課の対象にもしてるんです」

👶:協力ではなく参加・・。なるほど。つまり、京浜マーケットには、システム化の目的を社長自ら全社員に刷り込む、ユーザー部門のキーマンの意識を変える、システム開発への参加を本業にするための体制作りと、その姿勢や実績を人事考課にも組み込むということが足りなかったのですね。

🧒:そう。その通りだ。そして、中野さんは会議室を出ていったんだ。そして、この状態に気づいた蒲田社長は、赤羽さんの上司で、パワハラ体質の大森さんを降格させた。そのまま大森さんは会議室を出ていった。

👶:なるほど。それが正ですね。

🧒;そして、場が静まった後、美咲さんは外で待つ赤羽さんを呼ぶ。そして、社長もう一度チャンスを赤羽さんに与える。実際、赤羽さんももっとできることがある。全社員にシステムの重要性を理解させ、無理にでも説得しなければならなかった。相手に時間がないのであれば、作らせればいいし、技術用語がわからないならば勉強会をして教育すればいい。

👶;ぐさ、、、私もですね。。

🧒;そして、何よりこれは社長がオーナーのプロジェクトだ。参加しないということは社長の意に背くことになる。それでいいのかというくらいに迫らないといけない。そして、いくら社長といえども、このシステム開発のオーダーは社長なのだから協力させるために社長に働きかけなければならない。そんな覚悟をもたなければならいんだ。

👶:わ、わかりました。私も覚悟をもって進めていきます。なるほど。。。

◆社内の協力を得るためのポイント

🧒;そして、再度プロジェクトが指導するところで4章は終了だ。最後に本章のまとめとして社内の協力を得るためのポイントについて書かれている部分を紹介するよ。よく読んでみてくれ。

□システム担当者は、往々にしてエンドユーザーの協力が得られず孤立する
□エンドユーザーにヒアリングをするときには、最低限の業務知識を得ておくこと
□難解なIT専門用語を使わない
□相手が忙しい中、時間を割いてくれていることに感謝する
□システム担当者が他部門と調整をするときは、その上司がフォローと支援をする
□エンドユーザーの協力を得るには、システム開発の意義や目的について、経営トップからのメッセージングを繰り返す
□経営陣は、システム開発も社員全員の本業であるという意識づけとしくみの改革をすること

👶:わかりました。ありがとうございます。

・・・・・・・

今回は、トップおよび周りの社員たちはどういう姿勢でシステム導入に臨むべきなのかということを解説しました。いかに、実際に使用する人が主体的に関わるかですね。それが成功・失敗の一つの要因になります。さて、これで4章を終了します。次回は、第6章の解説にはいります。5章と7章は割愛するため、そこで本マガジンを終了します。

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