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本が好き。

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紙の本もKindleも大好きだ。 面白かった本、懐かしい本、これから読みたい本。 本と読書について語りたい。
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「ステイ・ホーム」しようにも家がない。祝・全米図書賞受賞◇柳美里「JR上野駅公園口」を読む。(河出文庫 2017年)

「ステイ・ホーム」しようにも家がない。祝・全米図書賞受賞◇柳美里「JR上野駅公園口」を読む。(河出文庫 2017年)

著者の柳美里は正直だ。平明な言葉で淡々と事実を積み重ね、そこに本当に生きて死んだであろう人物を描き出した。

その人物は貧しい東北の町から出稼ぎに来て、首都圏の大規模体育施設を作り1964年の東京オリンピックに貢献した。その後21歳の我が子浩一を突然亡くし、老いては妻にも先立たれた。そしてたどり着いた上野公園でホームレスとなり、通りすがりの人々の言葉を聞き、同じ毎日を過ごすホームレスたちの日常を見

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音楽最高◇スティーヴン・キング印のサイコ・スリラー「シークレット ウィンドウ」(2004年アメリカ映画)

音楽最高◇スティーヴン・キング印のサイコ・スリラー「シークレット ウィンドウ」(2004年アメリカ映画)

「俺の小説を盗んだな」。突然の訪問客。墓場から来たような南部訛りの忌まわしい男、シューター。

作家であるモート(ジョニー・デップ)は、妻の不倫の現場を目撃し失意のうちに湖畔の山小屋に引き籠もる。モートは謂われのない突然の盗作疑惑の追求に苛立つ。身の潔白を示すため離婚した妻に連絡を取ろうとするが身体が動かない。

何者かに飼っていた老犬を惨殺されるに及び行動を起こすモート。作品が盗作ではないと証明

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ドストエフスキー「賭博者」に爆笑。突然の吉本新喜劇。

ドストエフスキー「賭博者」に爆笑。突然の吉本新喜劇。

これは面白い。めんどくさい独り善がりの議論が延々と続き、前半の第8章までは退屈で仕方がないが、第9章の直前から、爆発的に面白くなって一気に読めた。

新潮文庫の原卓也訳「賭博者」だ。

「賭博者」は、ルーレットにのめり込む主人公と、周りの怪しい人物たちのもったいぶったやりとりが描かれている。周りの人物たちは、恐ろしいほどに低俗な貴族と貴族気取りの愚か者ばかり。今回再読して、前半の偏執狂的な人間関係

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