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パン職人の修造 101話〜 江川と修造シリーズ

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独立して江川と店を始める修造。パン職人として、経営者として、一家の主人として。頑張れ修造。
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#パンの小説

パン職人の修造131 江川と修造シリーズ 製パンアンドロイドと修造

パン職人の修造131 江川と修造シリーズ 製パンアンドロイドと修造

さて、製パンアンドロイドアンコンベンチナルβ750が世に出ることになった。

今までも製パン用のロボットはあったものの、とにかく故障が多くて困っていたがその原因の多くは粉の目詰まりによるものだ。その点β750は江川のしつこい要請により、ボディの周りを薄くて丈夫なシートでコーティングしてあるから目詰まりは防げる。

動きも滑らかになり、パン作りができるアンドロイドを平方は動画にとってあちこちに営業し

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パン職人の修造130 江川と修造シリーズ 製パンアンドロイドと修造

パン職人の修造130 江川と修造シリーズ 製パンアンドロイドと修造

リーベンアンドブロートが創業して半年が過ぎた。

修造と江川は2人で生地を成形してバヌトンという発酵の為のカゴに入れていく作業をしている。

そしていつも気の利くカフェ部門の岡田はテキパキと店の清掃を済ませ、窓ガラスの汚れがないかチェックしていた。

そのガラスの向こう、駐車場兼入口の方から『基嶋機械』の営業マン後藤とその他三人の男が歩いてくる。

岡田は店の前に移動して、出迎える為に立って待って

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パン職人の修造128 江川と修造シリーズ パン屋日和

パン職人の修造128 江川と修造シリーズ パン屋日和

仕方ない、普通の事を普通に話すかと覚悟を決めた。

「あの、田所と言います。リーベンアンドブロートは生活とパンと言う意味で名づけました。毎日の生活にパンは欠かせない、そこには色んなライフスタイルがあって、色んな場面で色んなパンが食べられている。縁あってこの笹目市に店を構えたんですから、地元のお客さんの生活にリーベンアンドブロートのパンを取り入れて頂けたらと思っています。パン屋さんの仕事は過酷と思っ

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パン職人の修造127 江川と修造シリーズ パン屋日和

パン職人の修造127 江川と修造シリーズ パン屋日和

そんな訳で修造の芸術作品は公会堂のイベントに飾られる事になった。

沢山の人に分かりやすい物をと考えて、パンのヴィーナスというテーマにする。

生命の息吹と未来への羽ばたきだ。

しかし修造のイメージを実現化するにはパーツの数が半端ないしとにかく重くなるだろう。それを支える為に土台も重くした。

「完成してから運んだんじゃ壊れそうだから現場で組み立てたいんですよ」

修造は秘書に電話した。

そし

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パン職人の修造126 江川と修造シリーズ パン屋日和

パン職人の修造126 江川と修造シリーズ パン屋日和

「えっ」

そんな風に言われるとは思わなかったので横田は驚いてピリッと緊張したが、平然を装ってトングとトレーを持って店内を回った。

プレオープンの時にここにきた時パン粉がここのパンは世界大会のパン、パンロンドのパンそしてドイツのパンを置いている。

「これとこれと」時々パン粉の方を向いてトングをちょっと動かして『これ?』とそれとなく指すとパン粉が目で合図する。

横田は店内を一周見回って「これで

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パン職人の修造125 江川と修造シリーズ パン屋日和

パン職人の修造125 江川と修造シリーズ パン屋日和

「パンが沢山売れるのは晴天の日とは限らないんだ。今日みたいに25度前後で少し曇ってると買い物してる奥さんは「まあこのぐらいの気温で天気なら買ったものが痛まないからゆっくり帰れるわよね」と言うわけで、いつもより店内をゆっくり回って多めにトレーに入れる事になる。俺はそれをパン屋日和と呼んでいる、まさに今日みたいな天気の事なんだよ江川」

と秋口にお客さんで溢れ返る店内を見て修造は言った。

江川も確か

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パン職人の修造124 江川と修造シリーズ 満点星揺れて

パン職人の修造124 江川と修造シリーズ 満点星揺れて

「次の試合相手の親子は息がピッタリ手強そうだな」
修造が向かいのコーナーで試合開始の合図を待っている親子を観察した。
修造親子と同じ年頃だ。
勝ち上がって来るだけあって動きも正確で所作が決まってる。

「お父さん、私、足が震えそう。緊張してきちゃった」

流石に決勝戦ともなるとピリッとする。

修造はしゃがんで緑の目線で話した。

「緑、自分を信じて、今まで練習してきた一番の動きを思い出せば良いよ

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パン職人の修造123 江川と修造シリーズ 満点星揺れて

パン職人の修造123 江川と修造シリーズ 満点星揺れて

店から出て行った藤岡を見送り、一人座ったままで残りのコーヒーを飲みながらさっきの涙が溢れてくる。

それを店の外から覗き込んだり引っ込んだりする大坂の姿があった。

仕事の帰りに駅の近くで食事をして帰ろうと思って店内を覗いたら二人がいたという訳だった。

うわ

俺見ちゃった

立花さんが泣いてるとこ。

どうしよう。

なんだよあの超絶イケメンは。

何を話してたんだろう。

お似合いだったのに

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