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詩 大切なものたち 記憶の中で

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形象化と現実は、少しズレていて、本当の出来事より印象に残ったりします。
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2022年11月の記事一覧

詩)慶応通りの沖縄料理や

詩)慶応通りの沖縄料理や

慶応通りの沖縄料理やに入った
ひとりでもいいかい
どうぞどうぞ兄貴と
調子良く誘導されて
泡盛なにかいいのあるの?
お任せでいいから
飲み方どうしますか
だいたい水割りの方が多いんですけど
じゃあ 水割りで と注文
数量限定とある沖縄おでんを頼む
兄貴どこから来たんです?
ああ茅ヶ崎からね
へえ あのへんぼくも知り合いがいるんです
そうなの? 沖縄料理やもいくつかあるよ
そうなんですか 行ったこと

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詩)髪の毛、一本

詩)髪の毛、一本

何処かで少年の魔法の角笛が鳴り
身体に記憶された月が
ほのかな白い熱を胎動し始める

髪の毛が一本 街路樹の銀杏の中を舞う
青 黒 赤 いろいろな色彩が見えて
髪の毛は浮きあがる

コントロールが出来ないのはなんて不思議でおもしろいんだろう
予測不可能 自分の感情とか空気感や体調とか
音がすうっと聞こえ誰もいない場所で

必要のない音が僕に働きかける
異なる感覚 一本の髪の毛は人がいないところに

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詩)贅沢な生き方をしよう

詩)贅沢な生き方をしよう

宛名のない手紙を書いてみたい
抱きしめてあなたを
そうっと
なにもない日を想い

いやなことをなにも解決出来ない
先延ばししてもなにもない
どうしようもなく
立ち止まっているしかない
繰り返し繰り返し考えて
それでもなにも変わらずなにもよくならない
それでも 

贅沢な生き方をしよう
雨の日には少しゆっくり歩こう
風が呼んだらその通りになびこう
ワインは明るい日差しにかざして飲もう
今日はいい日だ

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詩)流れの中の生

詩)流れの中の生

採血で看護師が「いつもどちらの腕から採りますか」と聞く
いつもどちらの手からか解らないので 両方の袖をまくってみた
左手の青く細い血管に注射針が刺され すうっと血が注射針から細い管を通っていく

流れている 流れているんだ
水の流れ 昔こどものころ 海岸で浅瀬だと思って深みにはまった
どぼどぼどぼ 浮き輪が外れ もがいていると
水の流れの中で 不思議な声が聞こえた
誰かが僕を見ている 水の流れ

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詩)病院のドンキホーテ

詩)病院のドンキホーテ

病院にいる
検査デアル
なんだか病院にいると
病人になった気分になる
いやぼくは
病人ではなく検査に来ただけだと少し長く分かりにくい言い訳をしたいと思うが
ここでぼくは受付を通り
順番通りの番号になり
呼ばれたらその通り動き
終わったら会計し
この病院を出ていく存在でしかない 

みんな同じ顔で
同じような雰囲気を纏い
腕を組み
何やら結果らしき紙を見
誰かと誰かが何かをひっそりと話し
手持ち無沙

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詩)赫い花

詩)赫い花

生は 落ち葉 そう思い 落ち葉を拾う
ああ なるほど こんなにもいろいろと 持ち合わせている
重なり合う色 複雑な模様 欠け方の多様性 曲がり方
一枚ずつ違う形
抜けるような青の秋の日 地面に落ちた 積み重なる落ち葉
ひとつひとつ 筋書きがあったのだ
もう誰もその一枚一枚に 振り向くこともないとしても
それは何かを諦めたからではなく
その 瞬間 まで

在った
という


赫い花 咲くはずのな

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