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何処かで少年の魔法の角笛が鳴り
身体に記憶された月が
ほのかな白い熱を胎動し始める

髪の毛が一本 街路樹の銀杏の中を舞う
青 黒 赤 いろいろな色彩が見えて
髪の毛は浮きあがる

コントロールが出来ないのはなんて不思議でおもしろいんだろう
予測不可能 自分の感情とか空気感や体調とか
音がすうっと聞こえ誰もいない場所で

必要のない音が僕に働きかける
異なる感覚 一本の髪の毛は人がいないところに
変化を感じとり 空気の振動を聴診器のように

それは胎内の隠れた響き 水生昆虫が発する
こどもの声 変調させられた音響
モノはいかに狭く特殊なマイク

生きることの意味は聞こえ無い音
無指向性のマイクは心の中の音を拾う
どんな無も音がある それこそが存在

気候変動が人間をどうするのか 脱人間は
音から現れる 世界のほんの一部の音
聞こえない サトウキビ トタン屋根 

北緯20度 海鳴りはゴーゴーと 震えている 
世界はもともと空洞だと感じて 途切れる
何か自身の情動が一本の線になる

2022年に詩集を発行いたしました。サポートいただいた方には贈呈します