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詩 大切なものたち 記憶の中で

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形象化と現実は、少しズレていて、本当の出来事より印象に残ったりします。
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2021年6月の記事一覧

詩)ドラム缶〜僕だけの分度器

詩)ドラム缶〜僕だけの分度器

草っぱらのドラム缶は
ちょっと塩っぱい
あのなにか。

元はブルーの缶だったのだろうドラム缶
今はさびたドラム缶 くたびれている
ドラムの中には
薄っすらと油が浮いた水が溜まり
誰も知らない僕のワンダーランド
自分独りで草っぱらへ来ては
魔法のランプみたいにアラジンみたいな魔神でも出てこないか
自分の身長よりちょっと低いドラム缶の淀んだ水を
いつもしげしげと眺めた

ドラム缶の中の水は赤茶に濁っ

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詩)愛には足らない思い

詩)愛には足らない思い

ことばの缶詰が送られて来ました。
とても期待して缶切りを持ってきて
ギコギコ
開けました。
ギザギザの缶のふたを開くと
「へ、an、11へ、」
暗号?
どうやらこれは愛を知らないと読めない言葉らしい。

そういえば
僕はいつ愛に弾かれたのだろう。
思いだそうとすると
どうしても辿れない先の切れた
記憶に気づいた。
あの時
「もう いいんだよ 大丈夫さ 」
と言えなかった。
辛いとかじゃなく
後悔と

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詩)日野コンテッサ1300 三日月の昭和

詩)日野コンテッサ1300 三日月の昭和

男はその時 何か欠けている 三日月
女は もちろん 知っている
知らないふりをして やり過ごし
お互い よりかっかっているような
いないような 
それが家族という
形に見えていて

日野コンテッサ1300 記憶に残る最初の車だ。コンテッサは日野が自慢のクーペ。車体は何色だったろう。思い出せない。
親父は家族を乗せて運転することが大好きだった。生きがいだった。息子は男2人の兄弟。2人は後部座席に座ら

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詩)春のうた

詩)春のうた

土の色が ただの鉛色にしか見えなかった日々

独りであることを 肯定し

4畳半の世界にも ほのかに香る 桜の花びらが

アスファルトの上で 舞っているのを 

何の感情もなく眺めていた日々

他人を傷つける言葉を 虫が湧き出すように

次々と繰り出しながら

信じることを軽蔑し 豊かであること

色彩のあるもの全てと敵対し

愛されることなど 決してないのだと

唇をかんで 天井のシミをにらみつ

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詩)1964年のTOKYOオリンピック・円谷幸吉

詩)1964年のTOKYOオリンピック・円谷幸吉

「私は高校生だったが、『東洋の魔女』の回転レシーブ、マラソンのアベベ選手、敗者に敬意を払ったオランダ柔道のへーシング選手など今も鮮明に覚えている。こうしたことを子どもたちにも見てほしい」菅総理2021年6月9日の党首討論

1964年のあの日 
テレビの画面は1時間以上「走る哲学者」アベベの姿を写し続けていた
2位の選手以下は全く画面に入らない。
アナウンスが日本人が2位で国立競技場にに入ってきた

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詩)若さとはフランクフルト定食

詩)若さとはフランクフルト定食

遅くなった帰り道
アルバイトの入金日はまだで
財布のお金は乏しくて
いつもなら380円のフランクフルト定食
フランクフルト2本と目玉焼き 丼飯と豚汁。
食べられるけど今日は辞めとこう
次の日に払うお金を計算して千円札1枚は残して置きたくて

下宿に戻ればみかんがある
昨日買ったSサイズだ
少し酸っぱい雲州みかん

橙色の灯りの間を
腹を空かせて
カツカツと大股で
夜道を早足で歩いていた
それこそ何

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詩)京都 祇園會館

詩)京都 祇園會館

八坂神社の向かい
昭和33年に開館した歴史ある映画館
京都の夜を彩る歓楽街 祇園に建つ
出入り自由 入れ替えなしの3本1000円

祇園會館がぼくの「京都」の始まりだった
京都にいながら京都に弾かれて
京都はよそよそしく ぼくの前に立っていた。
祇園會館がぼくを愛でてくれるまでは

新聞奨学生で朝刊が朝4時 夕刊が夕方4時300部
朝 起きるのはすぐ身体は慣れたが夕刊がきつかった。
市電と市バス2

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