おざわ

短歌が好きです。短歌の好きなところをたくさん話したいです。ほとんど妄想です。

おざわ

短歌が好きです。短歌の好きなところをたくさん話したいです。ほとんど妄想です。

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  • 一首感想

    一首評というのもおこがましく、ただただ好きな短歌について話したいと思っています。

記事一覧

歌集『祝杯と鍵のなにもかも』感想

先日の文学フリマ東京38にて購入させていただいた錦木 圭さんの歌集『祝杯と鍵のなにもかも』を読みました。自分にとって救いの歌が多く、間違いなく人生で出会ってよかっ…

おざわ
2週間前
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一首感想『サイダーの泡を残してこの夏は人魚のように消え去ってゆく』

読後の爽やかさと切なさの共存がとても印象的な歌だと思った。伊波真人さんの歌は独特の雰囲気がある。 サイダーの清涼感と、人魚から連想される海の涼しさに爽やかな夏を…

おざわ
1か月前
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一首感想『ライターのどこかに炎は隠されて君は何回でも見つけ出す』

この本の前後の文脈からおそらく恋愛の歌なんだろうと思う。それも少し冷められているのか、都合良く扱われてしまっているのか。タバコを吸う彼がライターをつけるような情…

おざわ
1か月前
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一首感想『星空がとてもきれいでぼくたちの残り少ない時間のボンベ』

一目見た時、すごく青春の輝きを感じる歌だと思った。 夏に向かう季節の中で読んだからか、夏の夜の星空を想像した。この歌が含まれる連作の題が「夏へ旅立て」であること…

おざわ
1か月前
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一首感想『滝と宴を同じテーブルに寄せ合ってきみが忘れてゆく夜にいる』

夜の歌が好きだ。自分もよく夜を歌に読み込んでしまうし、人の歌に出てくる夜を想像するのが好きだ。自分の今の興味のあるテーマなのかもしれない。 滝と宴は全く異なるよ…

おざわ
1か月前
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一首感想『瓶の中でかかってて胸しめつけるシロップ漬けのカセットテープ』

この歌を初めて読んだ時のきゅっと胸をしめつけられる感じがとても好きだと思った。 カセットテープなのでもちろん何かしらの音源を録音していて、シロップ漬けにされてい…

おざわ
1か月前
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短歌

意味のない夜を灯りにする夜を正しく踊り狂おうよ 春

おざわ
3か月前
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本 感想

夜明けの全てを読んだ。 PMSとパニック障害に悩み生き辛い世の中で居場所を作り懸命に生きている二人とその周りの優しい世界のお話だった。映画はまだ観ていないけれど、…

おざわ
4か月前
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短歌

街灯が水面に揺れる目黒川で波紋がワルツを踊ってみせる

おざわ
4か月前
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一首感想『ライナスの毛布になって包む夜のしんしん積もる二月のひかり』

この歌は、冬にしか味わえない暖かさを感じることのできる素敵な歌だと思う。 まず、ライナスの毛布というと、スヌーピーに出てくるライナスから名付けられた心理学用語で…

おざわ
5か月前
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一首感想『ブランコの鎖に春の体温が残されていて、繋いでもいい?』

ブランコが好きなこともあり、なんとなく雰囲気が好きだと思った。 鈴木晴香さんの短歌は、なんとなく肌感覚で好きで、そこから意味考え始めて、理解すると共感がすごいな…

おざわ
5か月前

一首感想『あさがおが朝を選んで咲くほどの出会いと思う肩並べつつ』

一目見て、素敵な出会いについて詠んだ歌だな、今隣にいる人に対してその絆の尊さを思えるなんて素敵だな、と思った。 「あさがおが朝を選んで咲くほどの」出会いってどの…

おざわ
8か月前

一首感想『拾ったら手紙のようで開いたらあなたのようでもう見れません』

この短歌を一目見た時、言葉がすっと入ってくる感覚がありつつ内容の理解が及ばなくて、なんだか混乱した。 早とちりで「手紙=あなた」とはどういうこと?と思っていたけ…

おざわ
9か月前
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一首感想『簡単に想像していた 来年もこの番組に出ている我を』

俵万智は素直な言葉を素直に短歌に詠むところが好き。口語でストレートな言葉を使って表現するから共感できていつも素敵だと思う。 短歌を習い始めたら、すごいこねくり回…

おざわ
9か月前

一首感想『病室は豆腐のような静けさで割れない窓が一つだけある』

キリンの子の1番初めの短歌。本を開いて1つ目がこれでびっくりした。まっすぐ意味をなぞると1つだけ窓のある静かな病室のことを詠んでいるのだろうか? 豆腐のような静け…

おざわ
9か月前

『レディは影の実力者』感想

悪役令嬢転生モノが好きだ。 現代社会に生きる主人公が物語冒頭になんらかの形で死を迎え、現代社会ではなく異世界に生を受ける話は、異世界転生モノいうジャンルに括られ…

おざわ
2年前
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歌集『祝杯と鍵のなにもかも』感想

先日の文学フリマ東京38にて購入させていただいた錦木 圭さんの歌集『祝杯と鍵のなにもかも』を読みました。自分にとって救いの歌が多く、間違いなく人生で出会ってよかった1冊だなと思っています。
以下感想です。

細かい砂の塔を作るということは海辺や公園だろうか。この歌の前に載っている「静かの海の東経を見る ねむるには早い地図から指で追いつつ」という歌から海のイメージに引っ張られたまま海で砂の塔を作るイ

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一首感想『サイダーの泡を残してこの夏は人魚のように消え去ってゆく』

読後の爽やかさと切なさの共存がとても印象的な歌だと思った。伊波真人さんの歌は独特の雰囲気がある。

サイダーの清涼感と、人魚から連想される海の涼しさに爽やかな夏を思い起こされる。海へ行きサイダーを飲む夏は夏の王道だと思う。泡を残してという言葉から砂浜に押し寄せた波の作った泡のようなイメージも連想される。消え去っていく様子が人魚のようだという文脈は理解した上で人魚、夏という言葉が並ぶことから夏に海を

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一首感想『ライターのどこかに炎は隠されて君は何回でも見つけ出す』

この本の前後の文脈からおそらく恋愛の歌なんだろうと思う。それも少し冷められているのか、都合良く扱われてしまっているのか。タバコを吸う彼がライターをつけるような情景が思い浮かぶ。彼がライターの火をつける仕草は手慣れていて、普段からライターを使っていることが伺える。

ライターが何の比喩なのかを考えつつ妄想する。
私の心であるならば、君は、君のどこが好きなんだろうと思うような私の冷めた心の奥に眠る君を

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一首感想『星空がとてもきれいでぼくたちの残り少ない時間のボンベ』

一目見た時、すごく青春の輝きを感じる歌だと思った。

夏に向かう季節の中で読んだからか、夏の夜の星空を想像した。この歌が含まれる連作の題が「夏へ旅立て」であることも鑑みて、ここからは夏の歌という妄想で書き連ねます。

上の句は夏の青春アニメみたいで懐かしいような切ないような気持ちになる。夏休みの旅行での最終日の夜、みんなでバーベキューしたり花火をしたりとひとしきり楽しんだあとに、地面に横並びに座っ

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一首感想『滝と宴を同じテーブルに寄せ合ってきみが忘れてゆく夜にいる』

夜の歌が好きだ。自分もよく夜を歌に読み込んでしまうし、人の歌に出てくる夜を想像するのが好きだ。自分の今の興味のあるテーマなのかもしれない。

滝と宴は全く異なるようで実はその特徴は綺麗に対比があることに気付かされる。
自然のもの/人工的なもの、流動的なもの/皆がその場にとどまることで成立するもの、恒久のもの/一時的なもの、と相反する要素を持っている。
同じテーブルにのせるということはその二項対立の

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一首感想『瓶の中でかかってて胸しめつけるシロップ漬けのカセットテープ』

この歌を初めて読んだ時のきゅっと胸をしめつけられる感じがとても好きだと思った。

カセットテープなのでもちろん何かしらの音源を録音していて、シロップ漬けにされているということはきっとそれほど保存したいものだということだと思う。瓶の中でずっとかかっているその音源がシロップ漬けにされたことで、シロップにはその味が染み込んでいっているし、音源も甘く素敵な思い出に変化している。胸をしめつけるような思い出が

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短歌

意味のない夜を灯りにする夜を正しく踊り狂おうよ 春

本 感想

夜明けの全てを読んだ。

PMSとパニック障害に悩み生き辛い世の中で居場所を作り懸命に生きている二人とその周りの優しい世界のお話だった。映画はまだ観ていないけれど、脳内では上白石萌音と松村北斗で映像化して読んでた。
自分はPMSではダウナーになり泣くが、キレるタイプではないし、パニック障害になったことがないので、こんな苦しいものなのか、と胸が苦しくなった。
パニック障害になってすぐ山添くんが病院で

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短歌

街灯が水面に揺れる目黒川で波紋がワルツを踊ってみせる

一首感想『ライナスの毛布になって包む夜のしんしん積もる二月のひかり』

この歌は、冬にしか味わえない暖かさを感じることのできる素敵な歌だと思う。

まず、ライナスの毛布というと、スヌーピーに出てくるライナスから名付けられた心理学用語で、幼児期におこる特定の物に執着を見せる行動、いわゆる安心毛布のことかと思われる。ライナスの毛布になる、ということは主体は毛布になったのであり、主体がないと不安になってしまう誰かが存在する。思わずライナスの言葉に引っ張られて幼児で想像してし

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一首感想『ブランコの鎖に春の体温が残されていて、繋いでもいい?』

ブランコが好きなこともあり、なんとなく雰囲気が好きだと思った。
鈴木晴香さんの短歌は、なんとなく肌感覚で好きで、そこから意味考え始めて、理解すると共感がすごいなと思うことが多い。芸術は肌馴染みが大事だと思っていて、歌は解釈ができればできるほど好きになるタイプなので、鈴木晴香の短歌がすごく好き。

『繋いでもいい?』は「」で括られた会話文じゃなくて地の文で書かれているので、おそらく主体の言葉だろうと

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一首感想『あさがおが朝を選んで咲くほどの出会いと思う肩並べつつ』

一目見て、素敵な出会いについて詠んだ歌だな、今隣にいる人に対してその絆の尊さを思えるなんて素敵だな、と思った。

「あさがおが朝を選んで咲くほどの」出会いってどのような出会いなんだろうか。「ような」ではなく「ほどの」であるということは「あさがおが朝を選んで咲く」ことは程度の比喩らしい。
主体は、肩を並べている恋人友人家族その他誰かとの縁をそれくらいの出会いだと思っている。その人との絆を大事にしてい

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一首感想『拾ったら手紙のようで開いたらあなたのようでもう見れません』

この短歌を一目見た時、言葉がすっと入ってくる感覚がありつつ内容の理解が及ばなくて、なんだか混乱した。

早とちりで「手紙=あなた」とはどういうこと?と思っていたけれど、「〇〇=手紙のよう=あなたのよう」となるはず。
検索すると手紙とあなたという異質なものが同化しているという解釈や、あなたが眩しすぎて見れないという趣旨の解釈をしている人がいたりしたけれど前者は難しくてよくわからないし両者ともあんまり

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一首感想『簡単に想像していた 来年もこの番組に出ている我を』

俵万智は素直な言葉を素直に短歌に詠むところが好き。口語でストレートな言葉を使って表現するから共感できていつも素敵だと思う。
短歌を習い始めたら、すごいこねくり回して何を言いたかったか伝わらなかったり、感情があまり乗ってないのに走り出して面白みのない短歌ばかり作ってしまって、素直な気持ちをわかりやすく伝えることの難しさを感じた。
やっぱり素直な人って1番可愛いよね。
俵万智は恋愛の歌がすごく好き。私

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一首感想『病室は豆腐のような静けさで割れない窓が一つだけある』

キリンの子の1番初めの短歌。本を開いて1つ目がこれでびっくりした。まっすぐ意味をなぞると1つだけ窓のある静かな病室のことを詠んでいるのだろうか?

豆腐のような静けさってなんだろう。絹豆腐ってパックから出すと白くてつやんと型取られているから、なんだか人工的な感じがするということ?言われてみると豆腐って病室みたいな色している。それとも無機物ということ?数ある無機物の中から豆腐を取り合わせるところが面

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『レディは影の実力者』感想

悪役令嬢転生モノが好きだ。

現代社会に生きる主人公が物語冒頭になんらかの形で死を迎え、現代社会ではなく異世界に生を受ける話は、異世界転生モノいうジャンルに括られる。
その異世界転生モノのなかでも、中世ヨーロッパのような世界における貴族社会を舞台とした乙女ゲームの主人公の恋のライバルに転生するのが悪役令嬢転生モノと呼ばれている。
その現実味のない世界で絶対に敗れなければならない圧倒的ライバルとなっ

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