『レディは影の実力者』感想


悪役令嬢転生モノが好きだ。

現代社会に生きる主人公が物語冒頭になんらかの形で死を迎え、現代社会ではなく異世界に生を受ける話は、異世界転生モノいうジャンルに括られる。
その異世界転生モノのなかでも、中世ヨーロッパのような世界における貴族社会を舞台とした乙女ゲームの主人公の恋のライバルに転生するのが悪役令嬢転生モノと呼ばれている。
その現実味のない世界で絶対に敗れなければならない圧倒的ライバルとなった主人公達が、自分の状況を打破し定められた運命を変えようと懸命にもがく姿がたまらなく愛おしい。


乙女ゲームの主人公本人や、悪役令嬢のメイドや家族、乙女向け小説の中のモブキャラに転生するパターンも多く見受けられるが、『レディは影の実力者』は乙女向け恋愛小説の主人公の妹に生まれ変わる話だ。
この物語の主人公は、逆ハーレム小説の主人公 リリアンヌの妹 リリアンヌに転生する。

初めはユリアンヌが周りの男に振り回されないように努力している主人公だが、途中から姉の優しさに触れて本当に妹としてユリアンヌを敬愛し始める。
それと同時に自分が転生者である事に引け目を感じ、実の妹ではないのにユリアンヌの愛情を受ける事への罪悪感に苦しみ始める。

主人公が
「私はお姉ちゃんさえいればそれでいい でも同時にお姉ちゃんが怖い」
「私は誰かを好きになったらそれが怖くなってしまうの その人が私を置いて去って行ってしまうんじゃないかって 私のことを嫌いになってしまうんじゃないかって…」
とユリアンヌへの感情を独白するシーンがある。

転生したことによる苦しみや葛藤がここまでリアルに描かれる作品は少なく、異世界転生の枠を超えたリアリティが存在している。
めちゃくちゃ面白いです!

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