一首感想『ライターのどこかに炎は隠されて君は何回でも見つけ出す』


ライターのどこかに炎は隠されて君は何回でも見つけ出す

鈴木晴香(2021)心がめあて(株)左右社

この本の前後の文脈からおそらく恋愛の歌なんだろうと思う。それも少し冷められているのか、都合良く扱われてしまっているのか。タバコを吸う彼がライターをつけるような情景が思い浮かぶ。彼がライターの火をつける仕草は手慣れていて、普段からライターを使っていることが伺える。

ライターが何の比喩なのかを考えつつ妄想する。
私の心であるならば、君は、君のどこが好きなんだろうと思うような私の冷めた心の奥に眠る君を好きな気持ちを呼び起こすのが上手なのかもしれない。君のことを少しだけ嫌になっていたり、好きじゃないかもなんて思うような私のことはお見通しで、私を容易く操作して私の心に君へ募らせた想いの炎をつけるのだろう。手慣れた手つきで。なんでこんな男が好きなんだろうか、でも好きなんだよな〜となる気持ちに共感してとても苦しい。しかもそれが結構嬉しいことも含めてまた嫌になるんだろうな。

ライターが君自身だった場合、人生はライターみたいで、君が何の気なく炎をつけられるところに尊敬の念を抱いているかもしれない。何もしないと冷たいままの自分の人生というライターの扱い方を知っている君が、熱量を持ってやりたいことに心を燃やしていたり、人生を楽しむコツを知っていて自分にはない視点で世界を楽しんでいるところに惹かれているのかもしれない。自分にないものを持つ人は素敵だ。

自分ごととして、自分にとってのライター・炎・君とは、そんな君の素敵な部分とは…と考えるとさらに楽しい歌だと思う。苦しかったり羨ましかったりするのであれば、自分もそのライターの使い方を覚えて自分でその炎を見つけ出せるようにならなければいけないな、という最近の自戒と共に。

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