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展覧会まとめ

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観た展覧会の記事をまとめていきます
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2023年4月の記事一覧

重要文化財の秘密(国立近代美術館)の感想

重要文化財の秘密(国立近代美術館)の感想

前期に行きました。展示されている作品全てが重要文化財であり、日本の近代美術の展開と「正典」を知ることができるとても良い機会でした。

概要何より、ホームページの作品紹介の小ネタが面白いです。バーっとピンクに染まり、それを指で拭うことで文字が出てくる仕組みです。遊び心があります。ぜひ試してみてください。

作品は教科書に載っているような作品ばかりですし、美術初心者の方でも楽しめるもので、とても良かっ

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フェルメール展(アムステルダム国立美術館)感想

フェルメール展(アムステルダム国立美術館)感想

フェルメールの作品28点が一堂に会す、前代未聞の展覧会がアムステルダム国立美術館で開かれています。この記事はそのレポートです。

概要

オランダの曇り空には何度来てもまったく慣れませんし、この展覧会が世界的に注目を浴びているにも関わらず、祝祭感は特に感じられませんでした。平熱のアムステルダムです。

前回訪れた時はレンブラントの《夜警》目当てだったこともあり、常設展しか見ていません。ですからここ

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2人展という残酷さ  芳幾・芳年(三菱一号館)感想

2人展という残酷さ  芳幾・芳年(三菱一号館)感想

概要質量共にとても見応えがありました。美術館が長期休館する前の最後の展示として、華やかなものだったと思います。

どんな展示だったかは多数のレビューが既に存在するのでそちらを。

感想①比較困難なところも多い

2人展というのはそれぞれの違いを際立たせ、より個性と共通性を強調するという点でスリリングかつ、豊かなものがあると思います。比較して初めて見えてくるものがあるわけです。

例えばファン・ゴッ

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ブルターニュ(西洋美術館)感想

ブルターニュ(西洋美術館)感想

シーレ展が日本における西洋美術展の未来を暗示するものだとしたら、それを受け止めどう展覧会を構成するかの「回答」になるような展示でした。

概要フランス北西部のブルターニュ地方は、フランスの中でも特に土着の伝統文化が根強く残る地域。近代のフランスの画家たちはその内なる異国性に惹かれて、頻繁にブルターニュへ赴くようになる。そこで興った創作と文化交流、またそれに惹かれて海を渡った日本人画家たちの作品も紹

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親鸞展感想(京都国立博物館)

親鸞展感想(京都国立博物館)

古美術の展覧会、特に仏教系の古美術の展覧会をどう見るかということの参考になれば幸いです。

概要浄土真宗の開祖親鸞の生誕850年を記念した大事業の一環です。

確かに生誕も臨終も京都でしたが、京都は基本的に親鸞を迫害して追い出した町なのでは、とツッコみたくなります。そんな誇らしげに語れる立場なのかと…。



3階から1階へ降りていくタイプの平成新館。最初は親鸞に続く7人の仏教者(龍樹・天親、曇

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エゴン・シーレ展雑感

エゴン・シーレ展雑感

日本における西洋美術の展覧会の将来性も見えてくる内容でした。

概要

2023年春、4月9日まで東京都美術館で催されていたエゴン・シーレ展は、会期の初めに学生は無料という大盤振る舞いも話題になりました。非常にありがたいことです。今年の西洋美術の展覧会としてはかなり大きなものとして、注目を集めていました。

来場者が「エゴン・シーレ展というよりはシーレとウィーン世紀末の美術展」だったと皆言う通り、

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「ラテンアメリカの民衆芸術」展の感想

「ラテンアメリカの民衆芸術」展の感想

大阪万博記念公園にある国立民族学博物館で行われている「ラテンアメリカの民衆芸術」は内容的に素晴らしいだけでなく、鑑賞者に謎をもたらすものでもありました。

展示の概要

ラテンアメリカの民衆芸術はいわゆるファインアートではないもの、という括りでとりあえずは大丈夫です。

例えば下のような土人形や素朴な玩具です。

これが第一章としてずらり並ぶのは圧巻なのですが、展示は早々に「これらはどのような文化

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