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ベートーヴェン以後の弦楽四重奏曲
「誰も新しい葡萄酒を古い革袋に注いだりしない。そういうことをすれば、新しい酒が革袋を破り、酒は失われ、革袋も駄目になる。新しい葡萄酒は新しい革袋に。」(田川建三訳『新約聖書』マルコによる福音書2章22節)
ベートーヴェンが弦楽四重奏曲の分野でしたことは、新しい葡萄酒を古い革袋に注ぐようなことだった。その結果、革袋は破れ、酒はこぼれてしまった。だから後輩世代の作曲家は、まだ破れていないころの革袋
楽器が決める音楽のかたち
1928年4月20日、電子楽器オンド・マルトノが初めて音楽シーンに登場した。レヴィディスの「交響詩」の中で、発明者のマルトノ自身が演奏。この楽器の特色を聴衆に印象付けた。広範囲のグリッサンドや表情豊かなポルタメントはその後、多くの作曲家の心をとらえる。
もっとみるゲヴァントハウス管が "ゲヴァントハウス" を失っていたころ
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団は2020年9月、240期目の演奏会シーズンを迎える。1781年にゲヴァントハウス(初代)を本拠地としてから途切れることなく、コンサートの暦を積み重ねてきた。とはいえ、綿々と続く歴史が断たれそうになったこともある。もっとも大きな危機を迎えたのは第二次世界大戦末期のことだ。
画像:2代目ゲヴァントハウス(1900年)
ブラームスの管弦楽小品
画家の個展に行く。代表作が正面の壁に掛かっている。周囲のスペースには、その絵画につながる習作群も展示される。作家によってはその習作が、完成度の高い一作品となっている場合もある。技法の試験場としての役割と、個別作品としての品質とが両立しているのだ。ブラームスの管弦楽小品もまた、そんな両面を兼ね備える。
チェリビダッケ 最後の録音
その日、ミュンヘンの演奏会場ガスタイクの前は、「チケット求む」と書いた札を掲げた人々であふれかえったという。1996年6月4日、セルジュ・チェリビダッケの指揮によるミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサート。多くの聴き手が、このコンビの最後の演奏会を予感して、ローゼンハイマー通りの坂下(ガスタイクは急坂の意)に集った。
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