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お金の意味と怖さ(自己紹介47)

今日は「お金」の話をします。


以前のバンドの失敗と、漫才での成功の明確な差は「お金」です。やりたい事、続けたい活動を守ってくれるのは「お金」と「お金によるプレッシャー」です。


お金が無いから練習日をズラそう。お金が無いからこのライブはパス。


こんなのは論外だと思います。


当然、自分の表現や芸事でお金をもらえたら最高ですが、アマチュアでそんなの難しいじゃないですか?


だから、自分の活動を支えるために「お金を作る活動」は何かした方がいい。でも、お金を作る活動が自分のやりたい事と直結していないのはおかしい。そこに疑問を持てないと、やりたい事に全力を尽くしているとは言えないと思うんですよね。


今日は、バンド「チャッカマン」の資金源についてお話しします。僕はこのバンドで、お金とは何なのか?について初めて本気で考えました。


この時、僕の未来が大きく切り替わった。そんな気がしてなりません。


今年の3月2日で30歳になります。これからの人生が素敵なものになるように、まずは今までのハードモードな人生を振り返っていこうと思います。


僕の自己紹介・自分史「ちょうどいいハンデだ」はこちらから!

バンドのレベル・僕の表現スタイルが、だんだんと上昇し始めたのと同じくらいのタイミングで、チャッカマンの活動を潤滑なものにする方法を考えました。


お金です。


自由に漫才をやり、自由にネタを創れたのは「カラオケ行脚」と「路上ライブ」という「収入源」があったからです。


スキルを磨くこともできて、上達のスピードも速かった。その上で、自分たちの活動費を作る事が出来たこの経験は、僕にとって大きな成功と確かな手がかりになっていました。


チャッカマンでも基本は同じです。


自分たちの活動に直結した何かでお金を生み、全額活動費に充てる。


漫才の時と違うのは、バンドは「非日常」的な要素が強いという事です。スキル転用が難しいんですね。


例えば、漫才で身に着けるべきスキルって「会話力」と「ネタ」です。カラオケ行脚をすれば、お客さんと「会話」が出来る。その上で、今自分たちが体験している「カラオケ行脚」という出来事そのものが「ネタ」になる。路上ライブも同じです。面白い通行人と話せば、それは会話力の向上につながるし、そのエピソードそのものがネタになる。


そこに過去の記事で僕が提示した「人気論」が加わればお金になるわけです。


でも、バンドは違います。バンドで行う路上ライブやカラオケ行脚は、一見スキルに直結しているようで、全く直結していません。


そうでしょ?


歌のうまさはバンドのパフォーマンスの「一要素」でしかありません。バンドで身に着けるべきスキルは「演奏能力向上」と「圧倒的な曲」。それから「ライブで印象に残る振る舞い」です。


路上ライブは、お金になるかもしれません。今後、ライブハウスに足を運んでくれる可能性もあるかもしれません。ただ、チャッカマンは煽りがすごいので、路上向けじゃありませんでした。


集まるお金も、時間に見合ってはいないでしょう。


漫才は2人分の活動費を賄えばいいわけですけど、チャッカマンは4人分の活動費が必要です。しかも、ドラム演奏を確保するためにスタジオに入らないといけないので、確実にかかるお金が増えます。


あれこれ試しましたが、継続してお金を生むには至りませんでした。


チャッカマンが向かうべきは「CD制作」と「ライブ」であり、カラオケ行脚や路上ライブは、バンドが本来向き合わないといけない活動とは別の稼ぎ口になる。要は、活動と直結しないので、アルバイトと変わらないと判断しました。


では、どうするか?


最終的に辿り着いたのは、自分たちの活動を切り売りするという方法でした。


僕は「人気論」をブラッシュアップしました。人気は広さだけでなく、高さもある。その高さに比例して出してもらえるお金も上がる。この仮説が正しいのならば、僕たちの活動をレベル70くらいで応援してくれる人が30人いれば確実に成功する。そう考えました。


まずは、レベル70を30人集める事から始めようと思いました。


どういう方法をとったか?


SNSを使いました。


高校2年生の終わり頃、高校生の間で爆発的に人気があったのが「Twitter」と「ミクシィ」でした。「ミクシィ」には、グループというサービスがあります。同じ趣味を持つ人や同じものを好きな人たちと「意見交換」をすることが出来る機能です。


僕はここに「チャッカマン広場」というグループを作りました。


僕たちのライブ情報やライブレポート、CDの制作情報などを発信する「無料のファンクラブ」のようなものです。


当時は、このグループにお金を発生させるといった、今でいうオンラインサロン的な発想はありませんでした。


僕が狙ったのは、ここに入ってくる人を人気レベル70まで上げる事です。


ライブ後に、このファンクラブに人を誘います。


ライブ前の写真や、ライブでやるセットリスト、新しい曲の歌詞、ライブの感想などを書いて、グループ内にいるファンの「関心」を高めました。


実はこの時、この後どうやってマネタイズするかは全く考えていませんでした(笑)


とにかく、育んでいく事だけに集中していました。


カラオケ行脚で学んだ、目標と現在地点を共有するのが効果的という一点だけを信じ、ひたすら年末ライブに最短で出場するんだ。という意思を綴りました。


運用を初めて1か月ほどが経過すると、グループ人数は48人になっていました。恐らくですが、アクティブに稼働してくれているメンバーは25人程度です。コメントしてくれる人がそれくらいだったと記憶しています。


コメントには、丁寧に返事をしました。


バンドのスタイル上、ライブ中にグループメンバーをいじったり、執拗に絡んだりは出来ませんでしたので、とにかくこのグループ内では「丁寧なやりとりを心掛けました」


この25人は、この時点で人気レベル58くらいだと考えていました。


あともう少し。そんな風に思っていたのですが、どうやら僕の見立ては甘かったようです。


「チャッカマンについて語るオフ会をやりませんか?」


グループ内で誰かがそうコメントしました。


僕はすぐに「ありがとう!」と反応しました。


するとこのコメントに対して、多くのグループメンバーが「よしやろう!」というコメントを残してくれました。そして、第1回「チャッカマンオフ会」がスタートします。


僕たちはゲストとして呼ばれました。当然、参加にお金はかかっていません。


第1回のオフ会では、集まった17人のグループメンバーの皆様とお話をしただけでした。僕が想定していたよりも、だいぶ年上の方が集まっていました。


このオフ会で特に言われたのが「グッズやCDを作るなら、お金は私が出します」でした。僕が作った「チャッカマン広場」のアクティブユーザーは、とっくに人気レベル100になっていたようです。


このオフ会のあと、グループメンバーは一気に増えました。


オフ会に参加してくれた人が、次のライブに知り合いを呼んできてくれて、気に入ってくれた人が、グループに参加してくれるのです。


人数が75人を超えたあたりで勝ちを確信しました。


75人中、アクティブユーザーは35人程度だと思います。無料のグループなので、温度差は激しかったです。


35人の人気レベル100が集まれば、活動に困る事はないはず。


そういう算段でいました。


結果的にチャッカマンは、活動規模が大きくなります。


僕は3つのマネタイズを実施します。


・オフ会投げ銭ライブ

・公開練習

・CD協賛


です。


その後もオフ会は定期的に開催されました。オフ会と言っても、基本的には「会議」です。


どうすれば、チャッカマンが年末ライブに出場できるか?


この議題を、グループメンバーがずっと考えてくれました。なんてありがたく、なんて素敵な空間なんだろうと思いました。


僕たちは、オフ会があればできるだけ参加していました。大体が、ライブ後の打ち上げ兼オフ会という流れで構成されていたので参加しやすかったです。


僕たちは「お礼」の意味も込めて、オフ会でアコースティックライブをしました。現在制作中の新曲やライブで評判のいい曲のアコースティックバージョンなんかをやりました。ライブをすると、追加でお金を出してくれるグループメンバーが現れました。


今思えば、ファン限定ライブのような感覚です。しかも、有名なバンドと比較すると「圧倒的に距離感が近い」です。僕たちは、自分たちで「簡易的なスナック」を作り出すことに成功したわけです。


中には、あの曲歌えませんか?と他のアーティストの曲をリクエストしてくれる人も現れました。その場でパッと出来なくても「次回までに仕上げるから、またオフ会に来てくださいね」と言って、次回本当に演奏します。


するとリクエストしてくれた方が、1万円をくれました。


「少ないですが、これをCDの制作費にしてくださいね!ありがとうございます!」と言われました。


ライブは大体週1くらいです。だからオフ会も週1でありました。


僕たちは、オフ会の投げ銭で月に5万円。多いときは、8万円程度の売上を作っていました。


オフ会。それは、好いてくれている人たちと会える場所です。


自分たちを好いてくれる人たちと「会う場所」を作れたらお金になる。そう気づいた僕は、練習風景を公開する事にしました。


ライブの物販スペースに、練習する日程を書いたホワイトボードを置いておきます。この日の練習は、チケットさえ買ってもらえれば見学可能です。という形にしました。チケットは1枚2,500円です。限定10名までにしていました。


これがかなり売れました。


ライブとは違う絶妙な距離感と、ここでしか見られない風景に価値が生まれたのです。大体月に3回は「公開練習」をやっていました。どの回も最低7枚はチケットが売れたので、最低52,500円。最高で100,000円の売上を上げました。


このチケット販売は、僕の中で「大きなイノベーション」でした。なにせ、原価がかかりません。スタジオ費以外はすべて「粗利」です。今思うと、もう少し値段が高くてもよかったかもしれませんね。


当然、見せられない練習もありました。新曲づくりはすごく地味です。多分、退屈だと思います。あとは、ライブ前の通しの練習なんかは公開しませんでした。セットリストを守るためです。


今だったら、ライブ前の通し練習は、値段を上げて販売すると思いますけどね(笑)


回数を増やすというのも実行しました。公開練習を月5回やったこともあります。


でも、結果的に売り上げは変わらなかったんです。気づいたのは僕たちのバンドの規模間です。「ファンの数―公開練習の回数」がちょうど0になる。これが、適正回数です。ここを見誤ると、失敗するので気を付けないといけないと思いました。


最後はCD協賛です。


収録したアルバムの「歌詞カード」に名前を入れるので、協賛してもらえませんか?


という活動です。


これで、CDの制作費はペイできます。なんなら余裕で儲かります。この協賛という仕組み。高校生の頃の僕は、そういうお金の回し方を知りませんでした。これは、グループメンバーにいた会社の社長に教えてもらった技です。


「CDを作るなら協賛するよ」


そう言われました。


協賛という概念が無かった僕は、その方から「協賛」という仕組みについて教えてもらいました。ファンクラブって、役に立つんだなぁと思った記憶があります。


CDに名前を入れると、お店や会社、個人としては露出になるから「広告効果」がある。そこにお金を払ってもらい、活動費とする。


ざっくりいうと、こんな感じです。


僕は考えました。


名前だけ入れて、本当に協賛になるのかな?


と。


そこで僕は、プランを盛り込みました。


CDに名前を入れるだけ。CDの歌詞カードにお店や会社のHPのQRコードも一緒に入れる。CDを物販で買ってくれた人に一緒にお店のチラシも渡す。


この3プランを用意しました。もちろん、3つ同時購入も可能です。


これが、めちゃくちゃ当たりました。


75人のファンクラブ。1回のライブの動員数は50人以上。これは、お店や会社の認知獲得には十分使えると判断しました。その上で、購入者に、きちんと協賛を届けるためには、接触頻度を増やす必要があると思いました。


正直この活動は、他のバンドマンから顰蹙をかう危険性があります。でも、それでCDが作れて、きちんと届ける事が出来るのなら構わないと判断しました。実際、バンド内でもこの方法は結構揉めました。


そんなのロックじゃないって感じですね(笑)


最終的には僕が「周辺で誰もやっていない事を、進んでやって革命を起こすのがロックだろ?」と、訳の分からない事を言っておし進めました(笑)


この活動は、ファンクラブのグループメンバーが営業をしてくれたこともあって、実に43万円ものお金を集める事に成功しました。


偉業としか言えないです(笑)


初めて制作したCDは、売れる前から黒字でした。確実に勝ちでした。


この頃の僕は、扱うお金の大きさにビビっていました。下手なものは作れなくなった。そういう感覚に震えました。


これが、お金によるプレッシャーです。


僕は、表現したり何かを創ったりするとき、手を抜いた事はないと思います。でも、あの日これだけのお金を受け取った僕は確かに「下手なものを創ったら死なないといけない」と思いました。


そうなんですよ。


人からお金を集めるというのは「期待の集合」なんです。君たちなら、きっと面白い事をやってくれるよね?という期待。これ、絶対に裏切れないじゃないですか?(笑)


行くしかないんですよ。


そしてこの「行くしかない」という気持ちこそ、自分の表現や創作の力を「底上げ」してくれる原動力なんです。完璧なものを、約束した日時に届ける。お金をもらうって、そういう事なんです。


お金を視野に入れない者の「芸」や「表現」の価値は、一部の名人や達人と呼ばれる人を除けば、大したことないなぁと思っています。


だってそれ、本気じゃないもん(笑)


僕はあの日、今まで身体が経験したことがない、ねっとりした汗をかきました。僕が首を突っ込んだ世界は、とんでもない「期待」と「重圧」がかかる世界なんだって。


お金を稼ぐのは簡単。そんな風に言う人いますけど、それって多分、お金の価値を正しく把握してない人ですよね。恐らく使い方が壊滅しているので、一生労働から抜け出せないと思います。


お金は、その人・その商品の期待と価値を図る尺度です。稼ぐのは簡単でも、正しく還元できないと、永遠に労働ループからは抜け出せません。高校2年生の僕は、普通の高校生が手にできないような「沢山の期待」を背負ったことで、そんな事を考えたわけです。


当然ですけど、年末ライブはしっかり出場しましたし、動員数も100人までやりました。初めて作った120枚のCDは完売です。ほぼ、インディーズデビューと同じくらいまでやり切りました。


ここまでやらないと、期待という呪縛から逃れられないという思いで、必死になってやりました。


あの時協力してくれた方に、胸を張って「成功です!」と言えなかった場合を想像すると、今でも背筋がひんやりします。


はぁ~、しんどい(笑)


お金の話はシビアですよね。自分史を書いている僕からすると、少し味気ない感覚があります。


とはいえ、これも僕の歴史です。


お金には色々な事を教えてもらい、色々な事を気づかせてもらいました。


この話を無しにして、ちょうどいいハンデだは語れないと思っています。


今日の話に出てきたお金の集め方は、多分誰でもできます。大事なのは、コツコツ活動する事だと思います。


お金の話をした後にこんな事を言うと、綺麗事だと言われかねないのですが、僕はこの活動を通して、お金と同じくらい、貴重な財産を手に入れました。応援してくれる人やスキルです。


どうせ活動費用を稼ぐならば、自分の活動に直結したほうがいい。


お金は、その人・その商品の期待と価値を図る尺度。


この2つこそ、僕が得た大事な教訓です。ぜひ、皆様のお役に立てればと思います。


それでは、続きはまた明日に!

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