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がらくた宝物殿短編脚本部門

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引越し

引越し

引越しを業者に頼むと、テキパキと荷物を次々に運んでくれます。

ちょっと前まで自分のものと信じて疑うことのなかった品々が、介入の余地なく部屋の外へ舞い出ていきます。自分の物なのに全く手を出す余地のない鮮やかな手捌き。見ることしかできない私は、必死に築いてきた生活が溶けてなくなっていくようで虚しさと無力感に襲われます。

このまま盗られてしまうんじゃないかと思うくらい業者の方の作業は堂々としていてス

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十二人のいまさら十二人で集まった十二人

十二人のいまさら十二人で集まった十二人

 *pdfの方が読みやすいという方は以下リンクからどうぞ。

「十二人のいまさら十二人で集まった十二人」① 広めの会議室のような場所。12人の人々が集っている。
 テーブルの上にゼッケンが重ねておいてある。
 12人のうちのひとり、4がゼッケンの束を手にし、他の人に配る。

3 これ、ゼッケンつけるんですかね
4 ああ、ちょっと見せてください。1,2,3……人数分あるからとっちゃっていいんじゃない

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グラウンド、半分

グラウンド、半分

2020年3月。「サフランライス3」という、それはそれはすてきそうな、演劇の短編持ち寄り企画に参加する予定だったのですが、結局参加がかなわなかったことがあります。その後、なにか作品を残しておけないかとうじうじしていました。そのときに書いた作品です。読み返してみたところ、たった何ヶ月か前のことなのに、遠くのせつない思い出になっていました。そんな、発掘された私の3月を公開してみます。

久々に最後には

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「真夜中のテレフォン」

「真夜中のテレフォン」

こんばんは、がらくた宝物殿です。演劇をやったり考え事をしたりしています。

先日パソコンのフォルダを整理していたら、未上演の本が出てきました。2020年1月公演の候補として作ったものだったと思います。今回はこういう感じの作品じゃないな、と思って見送った記憶がうっすらあります(一部を上演作品にも入れましたが)。演劇だとうっとうしいけれど、読み物としてはこういうのもあるか、ということで読み物として公開

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戯曲「荒野にて: 文明が滅んでも滅ばなくても、退屈はあるし、やることはない」公開

戯曲「荒野にて: 文明が滅んでも滅ばなくても、退屈はあるし、やることはない」公開

こんばんは。
「サフランライス3」という短編持ち寄り演劇公演に参加できなくなってしまいましたので、上演候補作のひとつ「荒野にて: 文明が滅んでも滅ばなくても、退屈はあるし、やることはない」の戯曲を公開してみます。

文明が滅んでしまった後、世界には荒野が広がっています。我々はそんな荒野しかない世界で文明の残骸を引きずりつつ、何をするでもなく退屈を紛らし死を待つしかない……という想像を巡らせた挙句に

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戯曲「事の次第 -セカイノオワリ」公開

戯曲「事の次第 -セカイノオワリ」公開

こんばんは。がらくた宝物殿です。
現在、福岡で演劇活動をしております。3月に予定しておりました「サフランライス3」というすてきな短編持ち寄り演劇公演に参加できなくなってしまいました。(詳細はがらくた宝物殿ホームページ内「〈がらくた宝物殿〉の『サフランライス3』参加辞退のおしらせ」をご参照ください)

公演には参加できなくなってしまいましたが、作品が完全に無に帰してしまうのは大変にせつないことです。

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コント『みかん畑』

みかん狩りの常連客がすごいというネタです。
基本的にないと思いますが、もし上演したい場合はご連絡ください。

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みかん狩りのインストラクターに連れられ、果樹園にやってくる参加者三人。
一人だけ異様にわくわくしている。(*については同時に読むこと)

管理人 「えー、本日はみかん狩りにお越し頂きありがとうございます。皆さんにおいしくて新鮮なみかんを

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