浦野文孝

千葉市在住、古代史を研究するアマチュアです。邪馬台国・ヤマト王権を中心に僕なりの説を紹…

浦野文孝

千葉市在住、古代史を研究するアマチュアです。邪馬台国・ヤマト王権を中心に僕なりの説を紹介します。一部記事は有料です。なお、僕は邪馬台国九州説ではありません(かん違いする人がいるみたいなので念のため)。アイコンは千葉県市原市出身のイノシシ形埴輪、トップ画は吉野ヶ里歴史公園のそば畑

記事一覧

箸墓は300年前後、ホケノ山は270年前後:シンプルな根拠

箸墓[はしはか]古墳(奈良県桜井市)の実年代は3世紀中頃と言われることが多いです。しかし、3世紀中頃の根拠は意外と知られていないと思います。 邪馬台国近畿説から、…

浦野文孝
1か月前
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封泥の専門書発刊:『秦帝国と封泥』

僕は2024年4月26日のnote記事で、邪馬台国問題を解決する決定的証拠は金印ではなく、「封泥」だということを紹介しました。 封泥とは、古代中国で文物を送る時や保管する…

浦野文孝
1か月前
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画文帯神獣鏡(下):倭の五王が受け取った同型鏡群

千葉県立中央博のグッドジョブ7/6に千葉県立中央博物館で辻田淳一郎さん(九州大学)の講演がありました。千葉で辻田さんの講演が聴けるとは思っていなかったので感激しま…

浦野文孝
2か月前
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Google Map:東田大塚古墳が10万回閲覧

Google Mapには「地図に載っていない場所を追加」できる機能があります。追加登録を申請するとGoogle Mapで審査があり、認められれば、Google Mapに表示されるようになりま…

浦野文孝
3か月前
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画文帯神獣鏡(上):卑弥呼の時代に近畿の中心性はなかった

古代の遺跡や古墳から出土する銅鏡の中で、画文帯神獣鏡[がもんたい・しんじゅうきょう]は、僕が一番好きな鏡です。 どうして好きかというと、画文帯神獣鏡はわかりやす…

浦野文孝
3か月前
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考古学の論文・書籍は間違いが多すぎないか?

考古学の論文や書籍には間違いが多いと思います。ここで間違いというのは、以下のようなものを指します。 根拠となる論文やデータを正確に参照していない 本文に整合性が…

浦野文孝
4か月前
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邪馬台国解決の決定的証拠:封泥は見つかるか?

僕は2024/3/8のnote記事で、邪馬台国問題は現段階では結論は出ないということを書きました。結論は出ないと考える理由は以下のとおりです。 魏志倭人伝は倭国を「遠い南の…

浦野文孝
5か月前
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春成秀爾氏・下垣仁志氏の論文を斬る:『古墳・モニュメントと歴史考古学(何が歴史を動かしたのか3巻)』より

本書(雄山閣、2023年12月)は、古墳に関する最新の論文25本を収めています。その中から以下の2本を取り上げます。 「箸墓古墳築造の意義」(春成秀爾) 「巨大古墳の被…

浦野文孝
5か月前
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千葉市土気地区:縄文の落とし穴のメッカ

今回は卑弥呼から離れて、僕が住んでいる千葉市緑区の郷土史がテーマです。  JR外房線の土気[とけ]駅南口には、あすみが丘、あすみが丘東という住宅街が広がり、昭和の…

浦野文孝
5か月前
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Nスペ「ヤマト王権 空白の世紀」を見て

2024/3/24のNスペ「ヤマト王権 空白の世紀」を見ました。特に気になった3点についてコメントします。 トップ写真:奈良県渋谷向山[しぶたにむかいやま]古墳 (2020年10…

浦野文孝
6か月前
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中公ムック『歴史と人物・日本百名墳』「箸墓古墳は卑弥呼の墓か」を読んで

中公ムック「歴史と人物18」『日本百名墳』の「箸墓古墳は卑弥呼の墓か」を立ち読みしました。僕はX(Twitter)やThreadsで感想を投稿しましたが、noteでも投稿します。 …

浦野文孝
6か月前
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Nスペ「邪馬台国の謎に迫る」を見て

2024/3/17のNスペ「邪馬台国の謎に迫る」を見ました。僕はX(Twitter)やThreadsで感想を投稿しましたが、noteでも投稿します。 (トップ写真=イラストAC) 酸素同位体…

浦野文孝
6か月前
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魏志倭人伝は間違いだらけ:短里はなかった

卑弥呼の都がどこにあったのか、長い間、論争が続いていますが、実は、魏志倭人伝には、編者である陳寿なりの答えが書いてあります。  入れ墨の風習や逸話のところに、一…

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浦野文孝
6か月前
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朝日新聞記者サロン「すごいぞ!奈良の古墳 富雄丸山古墳と桜井茶臼山古墳に迫る」を聴いて

2024年3月5日午後にオンラインで、朝日新聞記者サロン「すごいぞ!奈良の古墳 富雄丸山古墳と桜井茶臼山古墳に迫る」が開催されました。 福永信哉さん(大阪大学)、岡林…

浦野文孝
6か月前
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イノシシは危険な動物ではありません

ミスリードする報道はやめてほしいイノシシが危険な動物であるかのように誤解させる報道が相次いでいます。 ANN 2023/12/13 イノシシ捕まえようとかまれる 30針縫うけ…

浦野文孝
7か月前
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後漢書郡国志から、魏志倭人伝の方角と1里を考える

魏志倭人伝では、方角の記載が実際とは異なるとか、1里の長さが魏の時代の1里435m※よりもずっと短いといったことがよく議論になります。 例えば、魏志倭人伝は末盧国から…

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浦野文孝
8か月前
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箸墓は300年前後、ホケノ山は270年前後:シンプルな根拠

箸墓は300年前後、ホケノ山は270年前後:シンプルな根拠

箸墓[はしはか]古墳(奈良県桜井市)の実年代は3世紀中頃と言われることが多いです。しかし、3世紀中頃の根拠は意外と知られていないと思います。

邪馬台国近畿説から、中国鏡、三角縁神獣鏡、炭素14年代測定を根拠とした、主に3つの説が出されています。国立歴史民俗博物館(歴博)の炭素14年代の説はメディアなどで引用されることも多いので、聞いたことがある人がいるかもしれません。

どの説もなかなか理解が難

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封泥の専門書発刊:『秦帝国と封泥』

封泥の専門書発刊:『秦帝国と封泥』

僕は2024年4月26日のnote記事で、邪馬台国問題を解決する決定的証拠は金印ではなく、「封泥」だということを紹介しました。

封泥とは、古代中国で文物を送る時や保管する時に、封印に使われた泥(粘土)のことです(リンク先はトーハクサイト)。封泥に印が捺[お]され、文物が正当なものであることの証明とされました。封泥の使い方は、トーハクのオンライン月例講演会(2021年2月)のYouTubeがわかり

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画文帯神獣鏡(下):倭の五王が受け取った同型鏡群

画文帯神獣鏡(下):倭の五王が受け取った同型鏡群


千葉県立中央博のグッドジョブ7/6に千葉県立中央博物館で辻田淳一郎さん(九州大学)の講演がありました。千葉で辻田さんの講演が聴けるとは思っていなかったので感激しました。

同型鏡とは?

講演のタイトルは「同型鏡と5・6世紀の東アジア」でした。

同型鏡というのは、元になる原鏡に粘土を押し当てて鋳型をつくり製作された複製鏡です。押し当てる時に足で踏んだと考えられ、「踏み返し鏡」とも呼ばれます。踏

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Google Map:東田大塚古墳が10万回閲覧

Google Map:東田大塚古墳が10万回閲覧

Google Mapには「地図に載っていない場所を追加」できる機能があります。追加登録を申請するとGoogle Mapで審査があり、認められれば、Google Mapに表示されるようになります。

僕は2022/10/31に奈良県桜井市の東田[ひがいだ]大塚古墳の登録を申請して認められました。そうしたところ、東田大塚古墳の閲覧数が1000件、5万件、10万件の節目節目にGoogle Mapからメー

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画文帯神獣鏡(上):卑弥呼の時代に近畿の中心性はなかった

画文帯神獣鏡(上):卑弥呼の時代に近畿の中心性はなかった

古代の遺跡や古墳から出土する銅鏡の中で、画文帯神獣鏡[がもんたい・しんじゅうきょう]は、僕が一番好きな鏡です。

どうして好きかというと、画文帯神獣鏡はわかりやすいからです。外側から4番目に「半円方形帯」と呼ばれる、半円と方形が順番に並ぶ文様があります。これがあれば画文帯神獣鏡だとすぐわかります。ちなみに、「画文帯」は外側から2番目の文様を指します。

画文帯神獣鏡は主に2つの時代の古墳などから出

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考古学の論文・書籍は間違いが多すぎないか?

考古学の論文・書籍は間違いが多すぎないか?

考古学の論文や書籍には間違いが多いと思います。ここで間違いというのは、以下のようなものを指します。

根拠となる論文やデータを正確に参照していない

本文に整合性がない

誤字脱字

この記事では僕が気づいた間違いを紹介します。

『纏向学の最前線』より(纏向学研究センター、2022年8月):トップ写真

『纏向学の最前線』は纏向学研究センターが10周年記念で、2022年8月に刊行された論文集で、

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邪馬台国解決の決定的証拠:封泥は見つかるか?

邪馬台国解決の決定的証拠:封泥は見つかるか?

僕は2024/3/8のnote記事で、邪馬台国問題は現段階では結論は出ないということを書きました。結論は出ないと考える理由は以下のとおりです。

魏志倭人伝は倭国を「遠い南の大国」と誤解した。その背景には西晋王朝への忖度があった。里数・日数・風習・戸数・統治機構・卑弥呼の墓など、内容は誇大で間違いだらけになった

魏志倭人伝からは、どのような遺物・遺構があることがふさわしいかも読み取れない。これま

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春成秀爾氏・下垣仁志氏の論文を斬る:『古墳・モニュメントと歴史考古学(何が歴史を動かしたのか3巻)』より

春成秀爾氏・下垣仁志氏の論文を斬る:『古墳・モニュメントと歴史考古学(何が歴史を動かしたのか3巻)』より

本書(雄山閣、2023年12月)は、古墳に関する最新の論文25本を収めています。その中から以下の2本を取り上げます。

「箸墓古墳築造の意義」(春成秀爾)

「巨大古墳の被葬者」(下垣仁志)

春成秀爾さん(国立歴史民俗博物館)の論文は問題が多いと感じました。下垣仁志さん(京都大学)の論文はおもしろいのですが、疑問が浮かびました。

歴博の箸墓の年代根拠が不十分であることがより明らかに春成さんは較

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千葉市土気地区:縄文の落とし穴のメッカ

千葉市土気地区:縄文の落とし穴のメッカ

今回は卑弥呼から離れて、僕が住んでいる千葉市緑区の郷土史がテーマです。 

JR外房線の土気[とけ]駅南口には、あすみが丘、あすみが丘東という住宅街が広がり、昭和の森という自然公園と接しています。

これらの整備に先立って、1970年代から地域全体にわたって発掘調査が行われました。遺跡群は「土気南遺跡群」「土気東遺跡群」「昭和の森遺跡群」と分けて呼ばれています。残念ながら、すべての遺構は開発され、

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Nスペ「ヤマト王権 空白の世紀」を見て

Nスペ「ヤマト王権 空白の世紀」を見て

2024/3/24のNスペ「ヤマト王権 空白の世紀」を見ました。特に気になった3点についてコメントします。

トップ写真:奈良県渋谷向山[しぶたにむかいやま]古墳
(2020年10月撮影)

ヤマト王権は統一国家だったのか番組では、ヤマト王権を初の統一国家としていました。今回は登場しませんでしたが、福永信哉さん(大阪大学)も、3/5の朝日新聞記者サロンで、櫻井茶臼山古墳の銅鏡の集積から、「ヤマト王

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中公ムック『歴史と人物・日本百名墳』「箸墓古墳は卑弥呼の墓か」を読んで

中公ムック『歴史と人物・日本百名墳』「箸墓古墳は卑弥呼の墓か」を読んで

中公ムック「歴史と人物18」『日本百名墳』の「箸墓古墳は卑弥呼の墓か」を立ち読みしました。僕はX(Twitter)やThreadsで感想を投稿しましたが、noteでも投稿します。

トップ写真:奈良県東田大塚古墳(2020年10月撮影)

想像で語っているのではないか記事の中で、橋本輝彦さん(纏向学研究センター)は、勝山古墳・東田[ひがいだ]大塚古墳が卑弥呼と台与の墓、箸墓古墳はその後の男王の墓、

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Nスペ「邪馬台国の謎に迫る」を見て

Nスペ「邪馬台国の謎に迫る」を見て

2024/3/17のNスペ「邪馬台国の謎に迫る」を見ました。僕はX(Twitter)やThreadsで感想を投稿しましたが、noteでも投稿します。

(トップ写真=イラストAC)

酸素同位体比による纏向の年代番組では、箸墓古墳の年代は250年前後であり、卑弥呼の墓の可能性が高いことを印象づけていました。

僕は「箸墓は250年前後」には根拠がないことを2023/5/26のnote記事で詳しく解

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魏志倭人伝は間違いだらけ:短里はなかった

魏志倭人伝は間違いだらけ:短里はなかった

卑弥呼の都がどこにあったのか、長い間、論争が続いていますが、実は、魏志倭人伝には、編者である陳寿なりの答えが書いてあります。 

入れ墨の風習や逸話のところに、一見唐突に女王国の位置情報が登場します。

会稽郡東冶県というのは、今の中国福建省の福州市付近です。その東方ですから、陳寿は女王国が台湾付近にあると推定したことになります(ここでは魏志倭人伝の「1万2000里」の記述に合わせて「女王国」と記

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朝日新聞記者サロン「すごいぞ!奈良の古墳 富雄丸山古墳と桜井茶臼山古墳に迫る」を聴いて

朝日新聞記者サロン「すごいぞ!奈良の古墳 富雄丸山古墳と桜井茶臼山古墳に迫る」を聴いて

2024年3月5日午後にオンラインで、朝日新聞記者サロン「すごいぞ!奈良の古墳 富雄丸山古墳と桜井茶臼山古墳に迫る」が開催されました。

福永信哉さん(大阪大学)、岡林孝作さん(橿原考古学研究所)、朝日新聞の今井邦彦さん(記者)、清水謙司さん(支局長)が出演して、約1時間半のサロンでした。 

全体的にとてもおもしろく、勉強になりました。ただ、もちろん疑問はたくさんありました。 

僕の印象に残っ

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イノシシは危険な動物ではありません

イノシシは危険な動物ではありません


ミスリードする報道はやめてほしいイノシシが危険な動物であるかのように誤解させる報道が相次いでいます。

ANN 2023/12/13 イノシシ捕まえようとかまれる 30針縫うけが 罠破って脱出か(トップ画像は閲覧注意)

朝日新聞 2024/2/7 イノシシと遭遇…対策は 被害拡大、けが人は昨年度最多81人

Abema.tv 2023/12/16(?)

どのニュースも2023年12月12日に

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後漢書郡国志から、魏志倭人伝の方角と1里を考える

後漢書郡国志から、魏志倭人伝の方角と1里を考える

魏志倭人伝では、方角の記載が実際とは異なるとか、1里の長さが魏の時代の1里435m※よりもずっと短いといったことがよく議論になります。

例えば、魏志倭人伝は末盧国から伊都国を「東南」と書きますが、末盧国を唐津、伊都国を糸島とすると、実際の方角は東※です。

また、魏志倭人伝は朝鮮半島南部の狗邪韓国から対馬国までを「千余里」と書きますが、直線距離では約93km※ですから、1里は93mにしかなりませ

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