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ものかきのおかしみと哀しみ

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すれ違った人たち
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2019年7月の記事一覧

そこに入らなくていい人が文句言う問題

そこに入らなくていい人が文句言う問題

いや、どう考えても対象じゃないでしょという人が「思ってたのと違う!」と怒ってたり、トンチキな批判レビュー書いてる問題。

人類の歴史上ずっとある問題なので仕方ないと思ってはいるけど、やっぱり不思議だ。

おっさんが竹下通りのパンチの効いた店に飛び込んで「なんで俺のもの置いてないんだ!」と文句言ってるようなもんだよなといつも思う。そこ、入らなくていいから。

だいたい多いのが「宣伝してるから来たんだ

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石に混じる

石に混じる

会場に一歩、足を踏み入れると、そこは妖しい輝きに満ちていた。

老若男女が一心不乱に大小数百あるブースに群がり、身ぶり手ぶりを交えながら熱心に何かやりとりしている。

僕は、そのなんだかよくわからない渦を見つめ立ち尽くす。

こんな光景をどこかで見たことがある気がする、と僕は思う。どこかはよくわからない。たぶんトルコのバザールみたいなところだ。

僕には並んでいる商品の価値も意味もわからない

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より少なく多くのことを

より少なく多くのことを

なかなか伝わらないと思う。

「より少なく多くのことを」って、少ないのか多いのかどっちやねん。突っ込まれるのもわかっている。でも、そうしたいなと思うのだ。

より少なく多くのことを生きる。

なんだろう。「生き方」というと壮大すぎるし「日常の歩き方」だと、なんだか軽すぎるしありがちなタイトルみたいになる。そういうのじゃなくて。

フランス語で「Art De Vivre」ということばがあるけど(昔、

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居酒屋で名前を失くした日

居酒屋で名前を失くした日

居酒屋の順番待ちが、いまだによくわからない。なんだか自分だけがいつも忘れられている気がする。

暑い午後だった。街に覆いかぶさるように盛り上がっている積乱雲を見ていると、だんだんビールの泡にしか見えなくなった。

どこでもいいからビール飲みたいね。妻も同じことを考えてたらしく、通りを歩いて目についたビルの地下にある居酒屋に入った。

入り口は狭く、すでに何組かのお客が待っていた。店のレジの後ろが細

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自分のイメージはつくれるけどつくらない

自分のイメージはつくれるけどつくらない

あえて、つくらなくていいや。と思ってしまう。

ライティングを通してブランディング(なんか手垢でべとべとするけど)とかグロースハック周辺に関わってたりもするのに、いいのか。

ダメだろう。イメージ大事。わかってます。だけどなぁ(心の声)。

なにを言うかよりも、だれが言うか。なにを書くかよりも、だれが書くかで世の中動いてるのは本当のことだし、だからなおさら「イメージ」をちゃんとつくれてないと、だれ

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理想という名のゴースト

理想という名のゴースト

人はよく「理想」を語る。体型から結婚や暮らし、仕事のスタイルまで。

あーそういの理想だよね。会話の中でも理想という文脈に疑問を持つことなくナチュラルに語られる。

だけど、そもそも「理想」ってどこからやってくるんだろうね。

いつも理想はこっちが「来てくれないか」と頼んだわけでもないのに、いつの間にか僕らの話に加わってる。

え、誰かの知り合いなの? と疑問に思われることもなく、

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わかりにくい田舎暮らし

わかりにくい田舎暮らし

東京から信州に移り住んで3年が経った。思ってた以上のこともあれば、思ってたそのままなこともあるし、思ってもなかったこともある。うれしいことも、びっくりなことも含めて。

まあでも、そんなのどこからどこに移り住んだってあると思う。

のだけど、周りからみれば「憧れの田舎暮らしどうなの」とか「YOUは何しに田舎へ?」といった興味というか疑問はいまだに持たれる。

そんなのみんな自分の人生を生きるのに忙

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経営者の小さな孤独

経営者の小さな孤独

売れるってなんだろう。

何十億円も売り上げたヒット商品をいくつか持つ経営者との打ち合わせの中でしみじみ思った。

大ヒット商品が必ずしも思い入れがすごくあるものとは限らないのはよくある話だ。

まあいいものだけど本当に売れるのかな、という商品がすごく売れてしまうと、その商品が会社のイメージのコアな部分になってしまったりする。

だからダメってわけでもないけど、それだけじゃないんだ

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駅ナカコンテンツが多すぎると息苦しくなる

駅ナカコンテンツが多すぎると息苦しくなる

最近、東京駅が疲れる。信州と各地を行き来してるとハブ的なターミナルなので、利用しないわけにいかない。東京駅、好きなんだけどね。

駅が疲れるってなんなのか。人が多いのは多いけど、それは東京住みも長いので慣れてる。大きな駅は毎日が無言の祭りだから。

なんで疲れるんだろうと考えていて思ったのは「駅ナカ」の増殖っぷりだ。

横浜駅と並んで永遠に終わらない工事でお馴染みの東京駅だけど、工事が終わったんだ

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ハイコンテクストな私たちが文章で伝え合う理由

ハイコンテクストな私たちが文章で伝え合う理由

ものすごく一般論。日本語はハイコンテクストで英語はローコンテクストと言われる。

ハイコンテクストとは、言語のバックグラウンドにある共通の価値観、文化、思考様式などが文字通り高いレベルにあること。みんながある程度、同じ文脈で通じる世界。

だから、主語がわりと明確でなかったり抽象的な文章でも通じる安心感がある。らしい。そのへんは適当に理解してね、で済んだりしてしまう。

「検討しておきます」が、そ

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海老フライサンドの終わり

海老フライサンドの終わり

もういまは会えない。あのとき確かめていれば。

いまでもふとしたときに、そんな気持ちになることがある。はい、そこ。気持ち悪いとか言わない。

海老フライサンドの話だ。

なぜかきょうは僕のTLに海老フライがよく流れてくるので、思い出したのだ。

その日、僕は取材先に向かうために名古屋の地下街を歩いていた。名古屋の地下街は天井が低い。徳川家康が命じたのかもしれないし、気のせいかもしれない。でも、やっ

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職業はどんどん「生き方」になっていく

職業はどんどん「生き方」になっていく

雨が続くと、ちゃんとしたパンが食べたくなる。
お手軽な軽いふわっふわのパンではなく、パン宇宙と呼びたくなる重力を感じられるしっかりしたパンが。

べつに雨が降ってなくてもちゃんとしたパンは食べたくなるのだけど、雨の日のほうが「そういう気分」は強い。イースト菌で発酵させたパンも食べるけど、雨の日は野生酵母とか自家製酵母で発酵させてつくられたパンがいい。

まあ、そんなのは個人差の極みで、僕の場合はだ

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ちょっとずつ間違ってる人になりたい

ちょっとずつ間違ってる人になりたい

世の中には2種類の人間がいる。よく間違える人と、ほとんど間違えない人だ。

ちなみに、この「何でも2種類分類法」は、それ言われると萎える人が結構いるので使うときは慎重さが求められる。

問題なのは2種類では足りない場合だ。

世の中には2種類の人間がいる。俺か、俺以外か。これは足りてる。
ふつうの最中か、切腹最中か。これはたぶん足りてないし、そもそも人間ではない。ちなみに切腹最中はそのキレ気味のネ

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淡路島の玉ねぎが僕をライターにした

淡路島の玉ねぎが僕をライターにした

淡路島の玉ねぎがなければ、いまの僕はなかった。

意味のわからないことで知られている(そんなに知られてません)僕のnoteだけど、いくらなんでもそれはないと思われるだろう。

だけど本当なのだ。淡路島の玉ねぎがなければ、少なくともこうやってライターとして生きられてはいない。感謝しかない。

遭難したときリュックに入っていた玉ねぎをひたすら食べて助かった――わけでもない。携行食なら他のものにしたほう

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