そこに入らなくていい人が文句言う問題
いや、どう考えても対象じゃないでしょという人が「思ってたのと違う!」と怒ってたり、トンチキな批判レビュー書いてる問題。
人類の歴史上ずっとある問題なので仕方ないと思ってはいるけど、やっぱり不思議だ。
おっさんが竹下通りのパンチの効いた店に飛び込んで「なんで俺のもの置いてないんだ!」と文句言ってるようなもんだよなといつも思う。そこ、入らなくていいから。
だいたい多いのが「宣伝してるから来たんだ、買ったんだ」「◯◯に載ってたから」というもの。どうも「宣伝に弱い」というか、わりとまともに反応する人たちが一定層いる。
なんだろう。「宣伝」との距離が近すぎるのかもしれない。宣伝してるからそのとおりとは限らないし、宣伝だからとちゃんと距離を取れる人ばかりとは限らないのだ。
まあ、宣伝そのものも「5」のことを「5のまま」伝えることなんてない。だいたい「10」とか「15」ぐらいに盛るから、そこで余計なものを招き入れてしまってる面もあるけど。
それでも「全宇宙が大感動」と書かれてたら、そこに入らないと自分が除け者にでもされてる気がするのだろうか。
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で、そうやって本来来なくていい人が入らなくていい場所に入ってきて「思ってたのと違う」「こうするべきだ」とかいらん説教までしてるのをどうしたらいいのか。
リアル店舗なら明らかに「そういう」意匠の店舗デザイン、本なら「そういう装丁」をして来てほしい読んでほしいお客さんを絞ったとしても、気にならないのか視界に入らないのか「入ってきてしまう」人がいる。
なので入り口でなんとかするのは難しい。入らないで、手に取らなくていいからと言っても近づいてくる人はいるから。
オープンなプロダクトや場所である以上、なかなか現実的な解決策はない。
昔、書店でアルバイトしていた大学生の女の子が、自分ですごくマニアックな本を出したときのことを思い出す。書名を出すとあれなのでぼかすけど、結構話題になってすぐ重版がかかった。
その女の子はべつに著述家になりたかったわけでもないので、なんていうか周りが盛り上がってるのを「ぽかーん」と眺めながら、相変わらず書店でバイトも続けてたのだ。
あるとき、彼女がたまたまレジに立ってるときに、自分の本をおじさんが手に取って持ってきたらしい。どう考えても読者対象ではない。
「この人、この本に何の用があるんだろう??」
そのとき彼女はこう思いながらレジで本を受け取ったのだという。なるほど。
気持ち悪いとかではなく、状況をちょっと突き放して眺めてみる。もちろん、そこで偏執的なことがあれば別だけど、そうでなければおもしろがる。何か知らない世界があるのかもしれない。
揶揄する意味ではなく、なんていうかそこには「もののあはれ」「いとをかし」が漂っている気がする。
その話を聞いて以来、僕も「そこに入らなくていい人がいる」状況をそう思って眺めてるのだけど。