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1人百人一首

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#現代詩

1人百人一首〜蛇含草と年の瀬〜

「服くらい着ろよ」「一服しているの」二人の終わりを纏った1K

年の瀬に買わない番号言ってみる白い煙とあなたの香り

わたくしは誰かのために生きている見つけれてないけどそのうちいつか

優しさを誰かにあげたりもらったり私は生きたこの1年を

来る年はどんな1年こうしたいああしたいとか若さの息吹

依存性チェックをしながら飲むチューハイ「大将おかわり」もう一杯

後朝の別れも惜しまぬ誰そかれ

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都々逸その5

奇しくももらったワンカートンあなたの口づけ思い出す

ぽつんとひとり師走の粉雪それでも私はここにいる

家族に会える故郷に帰るそんな私を好きでいる

大きな瞳冷たい心煙草呑みの弱音と笑い

やめてください仕事中ですこぼれる笑みに俯くことも

近づきたいのそれでも怖いこのままこのまま平行線なら

好きになることこんなに怖い大人になった奥手になったにっちもさっちも動けない

都々逸その4

あんたがいなけりゃ代わりはごまんとおおきにありがとまた来世

夏の終わりにこぼれる牡丹虚空に首振る扇風機

玉ねぎふたつ静かなキッチン1リットルの麦茶を飲み干す

嘘という名の本音をついて遊びだったよわかってる。

弱い男がふかした煙田んぼに力と書くのにね

そんなこんなで思い出したり嫌いになったり自由だね

苦虫数匹潰して飲めばこんなことでも思い出に

一人百人一首~後朝~

夢のあと生まれたままの我がいて覚めた部屋にはは独りぼっちで

頬をつけ遊び疲れて眠ってるふたつの裸に朝日が注ぐ

いるようないないようなそれくらい曖昧模糊なら終わりがないから

しかと見て助演女優の怪演をみんなが傷つくアンコール

都々逸その3

夏は短し恋せよ乙女夜伽の君は蛍のように

店に来る人ピースを見せる2人でいれば世界は平和

酔うか酔われる勝つか負けるか好きになったらあなたの負けよ

近けりゃ熱い遠けりゃ寂し炎と氷と好いたひと

こたえはいいのいつもの喫茶で私はいつでも待つ女

すれ違ってもまた目を合わせて逢って魅せるわ負けないわ

狩が下手な女豹は独り腹が空いても戦をするの

一人百人一首〜七夕〜

織姫の願いも虚しくしとしとと14ミリの雨音響く

彦星よ義理の親父を踏みつける勇気もないならそれまでなんだよ

あなたなら私をどこかへ連れ去ってくれると思ったそんな七夕

他愛もない仕草も癖も横顔も永遠にきらめく北斗七星

わたくしはどこかで待っておりますと伝えることのできない哀しさ

1人百人一首〜憧憬〜

越えられぬ壁ならすり抜け遠回りなんでもいいけどなんにもできない

半袖のあなたに会ってみたいのよ聞きたい触れたい脱がせたい

家飲みは奴ケチャップが1番だそんなお酒をあなたと飲みたい

恋心隠して熟れる繊細な実であるけれど摘んだら終わり

もう少し黙っていればその心我と少しは近づいたのか

忘れない夜中に歩いたこの道をもうないふたりの小さな思い出

他愛もない仕草も癖も横顔も永遠にきらめく北斗七星

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都々逸その2

耽美で甘美主の指先素肌と心に火を灯す

一番二番n番なれど主の心だけが欲しい

のめばのむほど渇望するもの酒と煙草とおまえの心

今宵だけは2人でいよう今日も明日も明後日も

恋人ごっこもままごとなれど嘘も誠も君次第

我の心はとうに染った主の気持ちがないことだって

逃した魚は大きかったの我のいけすはあなたのものよ

あなたの口ずけ胸の奥そこボヤとくすぶり大火事か

都々逸その1

私の知らぬお前の方が今日も明日も欲しくなる

主の言い訳我の言い訳ずるい大人になりきれぬ

主のやさしさかりそめなれどとーんときたの嘘になれ

抱くか抱かれる誰が決めるの我はおまえに抱かれたい

一人百人一首〜間男〜

あの人の棄てた弁当ゴミ袋君が持ってく行ってらっしゃい

逃げるべき選択をするしないなどとっくの昔に決めてることでは

追い詰めることになるなら私などハナからいない方が華です

華だとか蝶もなれずわたくしはただ傷つけるスズメバチかも

高鳴りは禁煙すれば治るのかドライフラワーになってゆくのか

胸が痛い煙草のせいだきっとそう今日も今日とて会いたいような

1人百人一首~倫理の道~

君の知らない私がふえてゆくマックのポテトが今日はしょっぱい

引き返す電車はもうない11時倫理の道の片道切符

タップして品定めをすにんげんに許されるのか神でもないのに

干上がった池のほとりを連れられる我は飛べないカモの雛なり

閨の中視界が揺れる午前2時空き缶たちの視線は冷たい

一人百人一首~The Stranger~

一人百人一首~The Stranger~

見たのでしょう己の中の綺麗事だけで済まない想いの炎

今日もまた冷たい空気に抱かれゆく私の身体透けている夜

すれ違う回送電車流れゆく回想思い出せない階層

ベランダで吐き出す煙が夕焼けを吸い込んでいく紅くしてゆく

1人百人一首~ラフマニノフピアノ協奏曲第2番第一楽章~

デカダンス未来のこととか不安とか赤い穂先がまぎらわせてる

群青に突き出す筒が見送った私もいつか白い煙に

さよならとここにいてとが潮時の私たちに満ちたり引いたり

これからの2人の世界決めかねてラフマニノフが静かに響く