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富士下山って何?

富士山を愛する全ての人に届きますように。
18年前に私が始めた「富士下山」の真の目的は「富士山の自然を守ること」。山頂エリアの利用過多、オーバーツーリズムをエリア分散と季節分散で解消することです。富士山の新たな楽しみ方として注目されている昨今、「下って楽しむ」という手段のみを取り入れたマインド欠落型のツアーが増えていることに心を痛めています。
沢山の人に訪れていただき、富士山の素晴らしさを届けることはとても大切な活動です。しかし、エコツアー事業者である私たちが目指すべきは「訪れる人」を増やすことではなく、ツアー参加を通して「自然のために行動できる人」を増やすことだと考えています。
「楽しむ」ことは大前提に、すべての事業者が「富士山の自然を後世に繋ぐ」という共通の目的を掲げて「富士下山」を広めていくことを願っています。


富士下山という社会活動

少人数制のエコツアー

富士下山は単なる旅行の形態ではなく、富士山を守り、後世に繋ぐための社会活動です。
“富士下山”は文字通り富士山を五合目から下るツアーを意味します。
日本には古来より富士山に登る事で功徳を積むという信仰形態がある通り、現在では富士山観光と言えば富士登山というほど一般化された旅行形式になっています。こうした信仰形態に因るところもあり、日本人の間では富士山は登る事に価値がると盲目的に考えられてきました。 

富士山頂からのご来光は富士登山最大の魅力

私たちが提案する富士下山は、この富士山観光の概念を覆し、富士山の中腹から裾野を下るという、ありそうでなかった観光形態を開発し、新たな観光需要を見出すことに成功しました。
同時に、これまであまり知られてこなかった富士山の自然、歴史、文化にスポットを当てることによって、この山が持つ本来の魅力を世の中に発信することにも成功しました。 

富士下山の魅力

「富士山の魅力は五合目より下にその七割がある」が私の持論です。
富士山は日本一高い山であると同時に日本最大級の火山です。つまり、その自然は標高差によって様々な環境を生み出し、またその噴火した時代、場所によって様々な変遷を遂げています。一言に富士山といっても驚くほど多様な自然環境が私達を迎え入れてくれます。富士五湖を代表とする湖群、鬱蒼とした青木ヶ原樹海、大人数人でやっと抱えることの出来る程の巨木の森、噴火の爪跡が色濃く残る火口群、植物たちの極限の世界である森林限界、天地との境とも言われる広大な砂礫地など、その見どころは枚挙にいとまがありません。

8月、登山シーズン真っただ中でもこの静けさ

また、古くから神の住む山として多くの信仰を集めてきた山でもあります。山体そのものをはじめ、山中に建立された神社仏閣、信仰の歴史が深く刻まれた登山道や石仏、朽果てた山小屋さえも富士登山信仰の歴史と文化の象徴なのです。
そして、驚くことにこれらの全てが五合目より下に存在しているのです。
火山荒廃地が続く五合目より上の自然環境とは、その豊かさ、多様さにおいて比較になりません。
また、利用者数の少ない登山道は、現代的にアレンジされた五合目より上のそれとは異なり、昔の登山史跡が当時のまま数多く残されており、古の登山者やその様子に思いを馳せながら歩くのにもうってつけです。

信仰の歴史を今に残す石仏群

富士下山のデザイン

こうした様々なフィールドを専門のガイドが楽しく、分かりやすくご案内するのが私たちのツアーなのです。
私たちは“富士下山”を通して、富士山の豊かな自然や歴史文化に触れ、その営みを知り、理解を深めることによる、旅行者の保全意識の向上をねらい、後世に富士山をつなげていくことを目的としています。人が人を愛する過程と同様、“富士下山”は、そのツアーを通して、「親しむ」→「理解する」→「守る」という行動様式の変化が興こるよう設計されています。

また、ピークハントを目的としないこのツアー形態は、参加者の体力や興味、年齢などに応じて様々なコースを選択できるのも大きな特徴です。目的地をゴールとする多くのトレッキングツアーとは異なり、感動の先にある旅行者の意識変化をゴールとしているため、対象者に適したコースの選択はとても大切です。「登らない」ことで体力の弱い子ども達、ご高齢者、ハンディキャップを持つ人たちも富士山を楽しむことが可能となるのです。

そして、四季を通して富士山の自然に触れることができるのも大切なポイントです。夏の一極集中を回避し、春、秋、冬の富士山の魅力を押し出すことによって、来訪者の季節的な分散をかなえられるようデザインしています。

最高年齢85歳!

富士下山が目指すもの

このツアーは当社立ち上げより現在に至るまで継続実施している当社のオリジナルツアーです。
「富士山の知られざる魅力に出会う自然旅行」をコンセプトに、富士山を五合目から下り、自然、歴史文化をゆっくり楽しむエコツアーです。
 
現在、富士山の観光は大きな問題を抱えています。それは“オーバーツーリズム”です。毎年25万人を超える旅行者が富士登山に訪れる一方で、日本には“富士山に登らないバカ、二度登るバカ”という言葉も存在します。では、なぜこのようなオーバーツーリズムが起こるのでしょうか?
それは登山者が五合目より上の狭いエリアに集まりすぎることが原因なのです。現在、富士山は五合目まで車で登る事が出来るため、昔の人々が命がけで登った聖なる山というイメージはなりを潜め、日本の象徴としてのイメージはそのままに、気軽に山頂にチャレンジすることが可能な人気の山になりました。そして今では、世界各国から多くの旅行者が訪れます。これにより現在の局所的なオーバーツーリズムが発生しているのです。
しかしながら、五合目より下には多くの静かなエリアが存在し、豊かな自然と史跡が昔のまま残されているのです。
こうしたギャップを打開するために、富士下山は旅行者の目的の分散を図ることにより、マスツーリズムのエコ化を目標値としています。いつの日か”富士山に登る賢者、二度目は下るさらなる賢者“と言われることを夢見て。

1人がやっとの細いトレイル。マナーを守って利用したい

このツアーの原点は富士山の素晴らしい自然、歴史文化を後世に残したいという思いです。そのためには、登頂という行為そのものを目的とする従来型の富士山観光ではなく、旅行者の意識改革という目的を達成するに足る高い質のツアーとガイドが必要不可欠です。旅行者が富士山の自然、歴史文化に親しみ、理解するツアーの作成と、そのためのガイド育成なくして持続可能な富士山観光はあり得ないと考えております。
「富士下山」を軸にしたエコツーリズム思想の定着によって、富士山の自然、歴史、文化を後世に残すことを活動の目的としているため、展開するツアーは富士山の自然を愛で、歴史文化を学び、その先の保護思想の裾野拡大に繋がるよう設計しています。そのためには富士山への造詣の深いガイドの存在が必要不可欠となります。
そこで、他団体のガイドも対象にしたスキルアップ講習会を開催し、知識のインプットだけではなく、伝える手法、ガイド自身のエコツーリズム意識の向上に努めております。これにより、ツアーに同行するガイドはインタープリテーションの手法を用い、楽しく、分かりやすく自然、歴史文化を解説することが可能になります。また、当社所属ガイドのみではなく、他団体所属のガイドもスキルアップ講習の対象とすることで、富士山全体のガイドスキル向上に努めることで面的なボトムアップを図っています。

団体の垣根を越えてそのノウハウを共有

富士下山 今後の課題 

今では、各社発の類似ツアーも増え、富士山の新たな楽しみ方として徐々に認識されてきてはいるものの、「下山するという行為」のみが形式として取りざたされ、最も大切な「保全への行動」というマインドのないツアーが横行しています。
こうした現状を打開するため、行政、企業、メディアとの連携をさらに深め、①ガイド育成、②マインドの流布、③子どもや社会的弱者(経済・身体)を対象としたツアー展開に取り組みます。

ジャパンツーリズムアワードにて国連世界観光機関(UNWTO)より表彰

私たちと一緒に歩いた先には、言葉にはならないほどの感動がきっと待っています!

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