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アナトール・リトヴァク監督『さよならをもう一度』からバーグマンの『春の雨の中を』そして再び『想い出』
一度気になると、どうしても観たくなる。それが映画の不思議なところで、最新映画よりも優先順位が高くなる、そんな経験をしたことがある方は映画ファンには多いと思います。
復刻シネマライブラリーの仕事をしていた頃、埋もれた50~60年代の名作映画の調べものをしていますと、わたしの浅い知識の外にあった、映画のあらすじやスタッフの情報に出くわすと、無性に見たくなってしまい、売れるかどうかのマーケティング根
絵師レイノルド・ブラウンと、『妖怪巨大女』をティム・バートンがリメイクするという話
以下は「映画.com」からの引用です。
米ワーナー・ブラザースが、1958年のSF映画「妖怪巨大女」をリメイクすることがわかった。米Deadlineによれば、新作はティム・バートンが監督、ギリアン・フリン(「ゴーン・ガール」「KIZU 傷」)が脚本を務める。
ネイザン・ハーツ監督、アリソン・ヘイズ主演の「妖怪巨大女」は、虐げられてきた裕福な人妻ナンシー(ヘイズ)が、地球外生命体により体を巨
一方通行の愛の結末『旅』とアナトール・リトヴァク監督の『想い出』
恋愛映画というジャンルがあるとしたら、さらにそれを「純愛」とか「失恋」とか「不倫」とかいう風にテーマに分けて分類して、より詳しく自分の好みを説明するのって楽しいですね。わたしは相思相愛の二人が狂ったように愛におぼれていくというのも好きですが、純愛の変化球とでもいいましょうか、相手が自分を愛している気持ちは分かるけどそれは相手の一方通行である、というような話が好きです。簡単に言えば片思い。
『フ
新しい家族『肉体の遺産』とヴィンセント・ミネリの『蜘蛛の巣』
『ロバート・ミッチャム、ジョージ・ペパード、ジョージ・ハミルトン、エリノア・パーカーが共演したヴィンセント・ミネリ監督の『肉体の遺産』に出会ったのは、本格的に復刻シネマライブラリーで西部劇のみならず広くドラマ作品や、巨匠たちの埋没した作品を掘り起こそうと考えてから間もない頃でした。若い時には興味が湧かなかったエリア・カザンやジョージ・シートン、ダグラス・サークのような監督作品を見ずして死ねるか、
もっとみる父と息子の映画・スチュワート・グレンジャーの『連発銃は知っている』と、ジェームズ・キャグニーの『追われる男』
この、どちらかというとあまり有名ではない西部劇をご存じの方は、相当のファンの方だと思います。どの映画史の本にも載っていませんし、誰も話題にしません。しかしながら私にとっては復刻した作品の中で思い出深い2本です。
しかし、ここでマニアックなお話を展開したいのではなく、この2本にまつわる「父と息子」のこと、そしてジャケットのキーアートのことについて最後に少し書いてみたいと思います。
『連発銃は知
復刻できなかったクロード・ルルーシュの『パリのめぐり逢い』と『あの愛をふたたび』
前回検討はしたものの復刻しなかった『愛のために死す』と『愛の亡霊』について書きましたが、今回はクロード・ルルーシュ作品についてです。わたし自身、クロード・ルルーシュ監督の映画とは古い付き合いです。
まだ幼稚園の頃に『男と女』が大ヒットし、我が家ではフランシス・レイのサントラ(EP)をよくかけていました。
他にもこの時代、ルルーシュとフランス・レイ、ジャック・ドゥミとミシェル・ルグランの全盛期
復刻出来なかった幻の2本『愛のために死す』と『愛の亡霊』
シャルル・アズナブールが歌った「愛のために死す」。これは元々アニー・ジラルド主演の映画『愛のために死す』に感激したアズナブールが、映画にインスパイアされて書いた曲です。
わたしはレイモン・ルフェーブル・オーケストラの演奏で知りました。このアレンジは本当に重厚で素晴らしい。もう50年近く聴いているのに飽きません。
ピアノのイントロからストリングスへ、そしてサビで再びピアノが盛り上げ、情感が感
エリノア・パーカーと愛し合うために必要な『渡るべき多くの河』
まず、わたしの書いた物語のあらすじから。
風来坊で毛皮猟師のブッシュロッド(ロバート・テイラー)はやさ男で女にモテモテ。しかし彼は北西部の安住地を求めてさすらい歩く根無し草の身で、結婚して身を固めて定住する気など毛頭ない。今日も先住民のショーニー族に襲われた娘を救ったものの、彼女の恋人と揉め事になって退散した。
ところがそのショーニー族に追撃され、あわやこれまでかと思ったその時、メアリー(エ
『男性の好きなスポーツ』スタンリー・ドーネンみたいなハワード・ホークス
『男性の好きなスポーツ』スタンリー・ドーネンのようなハワード・ホークスのスラップスティック・コメディ
<このnoteは、復刻シネマライブラリーで発売したBlu-rayの特典として封入したブックレットにわたしが書き下ろした解説です。ハワード・ホークスといえばジョン・ウェインとのコンビで、数多くの西部劇の傑作を生みだした巨匠ですが、その他にもわたし達を楽しませてくれるチャーミングな作品を遺してく
『決闘者』 無法時代の終焉を背景に人間の本性や不安を浮かび上がらせていく秀作西部劇
決闘者 無法時代の終焉を背景に人間の本性や不安を浮かび上がらせていく秀作西部劇
<このnoteは、復刻シネマライブラリーで発売したBlu-rayの特典として封入したブックレットにわたしが書き下ろした解説です。主演のジョック・マホニーは、かつてターザン俳優として知られていましたが『テキサス平原児』『ネヴァダの男』など西部劇にも出演しました。元女優のマーガレット・フィールドと結婚しましたが、その時
『生れながらの無宿者』 西部劇×捜索ミステリーの妙味
生れながらの無宿者 西部劇×捜索ミステリーの妙味
<このnoteは、復刻シネマライブラリーで発売したBlu-rayの特典として封入したブックレットにわたしが書き下ろした解説です。主演のジョック・マホニーは、かつてターザン俳優として知られていましたが『テキサス平原児』『ネヴァダの男』など西部劇にも出演しました。元女優のマーガレット・フィールドと結婚しましたが、その時の連れ子が後のサリー・フィール
マーロン・ブランドの『ゴッドファーザー』以外の仕事『シェラマドレの決斗』
TSUTAYAプレミアムでU-NEXTが観られるようになり、さっそく手続をして念願の『ゴッドファーザー』制作秘話にあたるTVドラマ『ジ・オファー』を鑑賞しました。大変興味深く、楽しめました。このドラマは制作のアルバート・S・ラディを主人公として描いているので、俳優たちはわき役なのですが、マーロン・ブランド役の俳優がいい感じを出していました。
復刻シネマライブラリーでは、マーロン・ブランド出演作
『原始人100万年』伝説の八頭身
ラクエル・ウェルチときたら『恐竜100万年』(1966年)。
ビキニ姿の原始人を演じて「20世紀最高のグラマー」と絶賛されましたね。『恐竜100万年』はイギリスのハマー・フィルムが手掛けた特撮映画で、もともとは1940年の『紀元前百万年』という石器時代を舞台にしたヴィクター・マチュア主演の恐竜映画でした。
この時の特撮はタダのトカゲ類にちょっとメイクするなどして、ズームアップして撮影し、そ
『征服者』 ジョン・ウェインが演じる若き日のチンギス・カン
征服者 ジョン・ウェインが演じる若き日のチンギス・カン
<このnoteは、復刻シネマライブラリーで発売したBlu-rayの特典として封入したブックレットにわたしが書き下ろした解説です。購入いただいた方に感謝の意を込めてnoteでは有料記事に致しました。ジョン・ウェインがチンギス・ハンを演じるという、映画ファンには珍品中の珍品として知られている「征服者」はその印象のため、長くDVD化されませんでし
『愛する時と死する時』レマルクの原作をメロドラマの巨匠が映画化した愛と廃墟の物語
愛する時と死する時 レマルクの原作をメロドラマの巨匠が映画化した愛と廃墟の物語
<このnoteは、復刻シネマライブラリーで発売したBlu-rayの特典として封入したブックレットにわたしが書き下ろした解説です。ドイツの小説家エリッヒ・マリア・レマルクが書いた同名小説を、同じドイツ出身で後にナチスを嫌ってハリウッドへ渡ったダグラス・サーク監督が映画化した傑作です。この作品がつくられた時代背景等につい