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優しいだけが愛じゃない


今朝の冷え込みは厳しかった。


バルコニーから登校途中の小学生の男の子を見かけた。

その男の子は半袖半ズボンでランドセルを背負って学校へ向かって歩いていた。

『こんなに寒いのに元気だな〜』と思いながら


私はふと4歳違いの弟の子供時代のことを思い出した。


弟は小さい頃から喘息持ちだった。

夜中に特に喘息の発作はおこる。

真夜中でも弟の発作がおこると、父と母が弟を病院に連れて行くので

(母はその頃は免許を持っていなかったので父が運転して)

私がふと目を覚ますと家で一人ぼっちだったことが何度もあった。


『絶対に風邪をひかさないように気をつけてください』

と医者から言われた母は、冬になると弟に服を着込ませた。

ズボンの下にもステテコ(肌着)、若い人は知ってるかな?

靴下は二枚重ね

上着も何枚も重ねて

帽子に手袋とマフラー

少しぽっちゃり体型だった弟の姿は丸々と着膨れしていた。


幼稚園に入園して、幼稚園の制服が半ズボンだった時は、母は弟にタイツを履かせてその上に長いハイソックスまで履かせていた。

それでも弟は風邪もひくし、喘息の発作も治らなかった。

あまりにも弟の喘息の発作が頻繁にあり

病院通いに付き合う父の仕事に支障があってはいけないと

50年前に母は(現在83歳)運転免許を取得した。

その当時は女性が運転免許を取るのはとても珍しかったそうだ


弟が小学校に入学して1年生になった時

担任の先生が母に尋ねたらしい。

『なぜあんなに服を厚着させているのか』と

母は弟に春の入学時でも結構服を厚着させていたのだ。

母は以前 医者から言われたことを担任の先生に言った。

『風邪をひかない為です』と


その話を聞いた担任の先生は

『わかりました。でもこのまま厚着させていたらますます体が弱くなりますよ。』

『〇〇君をもっと薄着にしてください。』

『冬でも半袖半ズボンで登校させてください。』

『そのためには秋から半袖半ズボンで体を慣れさせましょう。

大丈夫、きっと体が丈夫になれば喘息も治りますよ。』と母に言ったらしい。


母は先生のこの言葉にたぶん躊躇したと思う。

医者でもないのに大丈夫なのかと・・・


母のその時の気持ちを私は知らないが、

母はその担任の先生の言う通り、弟に厚着をさせるのをやめ

薄着で小学校へ行かせるようにした。

夏が終わり、秋が来てもその年は半袖半ズボンの登校が始まった。


冬になっても半袖半ズボン、靴下も短い靴下で登校し続けた弟。

そのうち薄着の弟は小学校でも、ちょっとした有名人になっていた。


小学1年生のその年は冬になっても弟は風邪をひかなくなっただけでなく、いつの間にか喘息の発作の回数もみるみるうちに減っていったのである。

そして弟は服が軽くなった分

体も軽くなったのか、動きも活発になって

どんどん元気な男の子になっていった。

いつ発作が起こるかわからないと親も子もビクビクしていたのが嘘のように


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母はのちにこう言った。

『〇〇(弟の名前です)の喘息が治ったのはあの先生のおかげだ』と

医学的なことはわからないし、もしかしたら、たまたま喘息がなおるタイミングだったのかもしれない。

でもやっぱり薄着になったことが弟が健康になった一番の理由だと思わずにはいられない。


先生のアドバイスを受け入れた母も偉いと思うし

きっと母は不安だっただろう。
親の立場になってみるとよくわかる。


親に向かって自信を持って意見を述べた先生もすごいと思う。

50年も前の話だが、その頃の先生は親にとっても一目置かれる存在だったような気がする。

そして先生と生徒と親との関係も今よりは良い意味で遠慮がなかった。


もちろん弟は、それからもずっと薄着で育った。

弟は小学校に入学した時は身長が学年でも一番低くて、いつも朝礼では先頭だった。

薄着になり、体を動かすことが大好きになった弟は

中学生ではバスケットボール部に入ってぐんぐん背が伸びて

バスケ部のキャプテンにもなり

中学を卒業する頃には185センチをゆうに越えていた。

結構モテてました(笑)


体の健康だけでなくて他のことでも

親になると子供が愛おしくて、ついつい手をかけ過ぎたり

干渉しすぎたり

心配しすぎて

過保護になってしまうのも仕方がないことかもしれない。

けれども


不安を取り除きたくて先回りして子供を守るだけが愛ではないのかもしれない

優しくするだけが愛情ではないことも時にはあるのだろう

時にはそれが辛くて厳しい選択でも


そんなことも考えながら

今朝の半袖半ズボンの男の子を見て、かつて喘息に苦しんでいた幼い弟のことを思い出した朝だった。


でも私は娘たちに過保護なんですけどね💦


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