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【1分フィクション】

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1分以内で読み切り可能なフィクション作品集。 2022年1月より週1本追加しています。(2024.4時点) 追記:2024年度は不定期更新
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2023年4月の記事一覧

散りぬは、花

散りぬは、花

春の嵐が巻き起こり

花も葉も風に吹かれて

遠くへと。

雲から落ちる雨が

耳の鼓膜を震わせて

冷めていく空気の塊。

あっ、雨音が聞こえない。
止んだのか?

下駄を履き

玄関を出ると

元気に走り回る子どもたちの声。

アスファルトには雨の滲んだ痕が残る。

息を吸えば
雨に濡れたアスファルトの匂いが
鼻に突き刺さる。

記憶が刺激され、
脳裏に浮かぶは過去の思い出。

胸の奥がキュッ

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「現在」は攫われた

「現在」は攫われた

夢をみた。

幼稚園児の頃
私はアニメのキャラクターに憧れて
将来はそれになるのだと信じていた。
まだ何も知らない、無知の恥も知らない。
この頃、私は早く小学生になりたかった。

小学生の頃
私はコロコロとなりたい職業を変えていた。
友達やエンタメ、家族や習い事の先生。
色んな人や物に刺激を受けて、影響される。
仲間はずれやグループを作り始める人間関係。
この頃、私はそんな世界に疲れていた。

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自惚れて、壊れて

自惚れて、壊れて

僕は天才で
コミュ力が高くて
色んな人に頼りにされて信頼されて
実は幅広い知識をもつ物知りで
サッカーが上手くて
イケメン素質のある顔で
僕がいなければ均衡は崩れる

実はそんな人間だってことを隠して
地味に静かに時間を流しているんだ。
だって目立てば、波風が立ってしまうから。

目立てば嫌われてしまうから。



帰りの電車を待つ駅のホームで
そんな想像を頭で描きながら
イヤフォンから流れる音

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夜を舞う

夜を舞う

南の空に放たれた無数の星を背に

私は舞う。

祈りを込めて

願いを奏でて

地球の全てを放つ扉の前で

私は舞うのだ。

空も海も境目の見えない漆黒に包まれた世界

誰にも気づかれず

ただひたすらに舞い続けてきた世の果ては

きらり煌めく世界の中心で

誰かのために

希望を乗せて 

昇華される。

私の舞なんて、

誰がどう評価してもいい。

この世界に私の正解は私だけなのだから。

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