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「現在」は攫われた

夢をみた。

幼稚園児の頃
私はアニメのキャラクターに憧れて
将来はそれになるのだと信じていた。
まだ何も知らない、無知の恥も知らない。
この頃、私は早く小学生になりたかった。

小学生の頃
私はコロコロとなりたい職業を変えていた。
友達やエンタメ、家族や習い事の先生。
色んな人や物に刺激を受けて、影響される。
仲間はずれやグループを作り始める人間関係。
この頃、私はそんな世界に疲れていた。

中学生の頃
なりたい職業がわからなくなった。
社会というものが如何に複雑か枠組みが見え始める。
成績や評価が全部の仕組みの中で生き続け、
誰もが何にでもなれるわけではないと知った年。
この頃、私は未来が初めて怖くなった。

高校生の頃
職業は繊細に具体化された。
未来が明確な意図を持って近づいてくる。
選択が人生を左右されると気づいたら、動けない。
それでも華やかな夢と希望も捨てきれない。
この頃、私は何もできなかった。

大学生の頃
職業にこだわりがなくなった。
周りと比較する就職活動。
とりあえず内定が欲しい、その一心。
スーツに身を包み、不乱に突き進む。
この頃、私は働く大人に憧れていた。


社会人の私が目を覚ます。


あんなにも憧れていた大人は
過去を振り返る人間になっていた。

振り返る過去も
沢山の素敵な思い出より
深く刻まれた痛々しい自分。


朝日が差しがかる薄暗い部屋で
ふと我に帰る。


目につーっと伝うものを拭い
ひとつだけため息を吐いて
また、一日。



私の現在は何処へ行ってしまったのだろうか。


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