祗燈 柃夜

暖かな日差しの中に揺れ動く影を、私は愛する

祗燈 柃夜

暖かな日差しの中に揺れ動く影を、私は愛する

マガジン

  • 〈ある人間の逃避行〉

    【月一更新】エッセイまとめ。とりとめのない日常を記します。

  • 【1分フィクション】

    1分以内で読み切り可能なフィクション作品集。 2022年1月より週1本追加しています。(2024.4時点) 追記:2024年度は不定期更新

  • ひとりごと。

    【随時更新】深い意味はなく、日常の中で感じたことを書き留めたものをまとめています。

最近の記事

  • 固定された記事

恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』<あらすじ/各話リンク>

「…この恋を素直に抱きしめていたかった」 あらすじカフェで出会った高校生のユリとヒロはある日をきっかけにお互い惹かれ始めていた。灰色な日常に差すその柔らかく温かい2人の時間を必死に守ろうとするが、感情に翻弄されて関係は瞬く間に形を変化させていく。時間が経ち、入り乱れる感情に向き合って出した答えにやっと辿り着いた時、彼らはある秘密を知ることに。全ての理由が明らかになった時、2人を待ち受ける悲しい結末とはーー。 青い痛みと心の春を映す脆くて繊細なラブストーリー。 相関図&

    • 〈文学フリマと雨〉

      Ep.2 5月19日。 小雨の降る中、私は胸を踊らせていた。 電車を乗り継ぎ、浜松町からモノレールで流通センター駅へ向かう。初めて来るモノレールの浜松町駅はとても綺麗だが、雨と人の多さのせいか少し空気が籠っていた。 羽田空港まで行くであろうスーツを持った人も多くいて、私と同じ目的地の人がいるのか不安になる。 でも、その不安はすぐに消えることとなった。 流通センター駅に着いて扉が開いた途端、人が流れるように出ていくではないか。あっ私も、と自分も忘れず降りる。後にある予

      • 暗黒の未来スコープ⑥

        恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』 【第三十六話】 (ユリ) ”ありがとう”のステッカー。 私と君のチャット欄に続きはなかった。 じっとそのシンプルなメッセージのやり取りを見つめながら、段々と後悔が押し寄せる。 あのあと、返事すればよかったかな。 メッセージについて直接聞いてもみたかった。 けどやっぱり勇気の出ないまま、今日みたいに事務的な会話で終わったしまうだけ。 ベッドに大の字で寝転び、天井を仰ぐ。 ドラマではこんな時、親友や幼馴染とかに相談するんだろうな。

        • 暗黒の未来スコープ⑤

          恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』 【第三十五話】 (ヒロ) 生物の行動が一斉に活発になり、周りの奴らが部活の練習でより一層の努力を振り絞っている。そんな夢と努力と仲間が宿る鮮やかな世界を、教室の窓から眺めていた。 元気の良い声、ホイッスルの音、砂を撫でる風。 これがアオハルかと他人事のように思ってみる。 実際俺には他人事で、青春とはフィクションだ。 担任に教室で話があると言われ待っているが一向に来る様子がない。バックれて帰ろうか。 ただあの担任だ。のちに面倒にな

        • 固定された記事

        恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』<あらすじ/各話リンク>

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        • 〈ある人間の逃避行〉
          2本
        • 【1分フィクション】
          90本
        • ひとりごと。
          20本

        記事

          暗黒の未来スコープ④

          恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』 【第三十四話】 (ヒロ) 過去も今も将来も全てが暗黒に包まれて。 答えのない出口を求めて、彷徨って。 俺はどう生きればいいのだろうか。 「お前、進学しないのか」 お節介な担任は俺をどうにかして進学させたいと言う。それからつらつらと何故進学するべきかを語り始めた。 俺に未来を求めてどうする。 進学など許されない行為だ。 未来の可能性を広げられることを強く熱弁する教師を前にして、こんな言葉は胸にしまっておく。 けれど進学しないにし

          暗黒の未来スコープ④

          【私がいないこの世界で】

          何も変わらない。 私がいなくても 時間は進むし 人は生き続ける。 それでも、迷ってしまう。 蔓延する疫病が人々の生気を食い尽くし、罹った人間は自らを失っていく。そして元となるウイルスは、皮肉にも我々人間の手によって日々力を増幅させていた。そんな中で、私の身体に潜む兵器は世界を助けられるそうだが、私も生ける一人の人間。私如きの人生の犠牲と世界の安定を天秤にかけてしまう。 ある日ある国から極秘支援要請が来た。 要請内容は身体の提供。 私の特異体質はウイルスを制御できる唯一

          【私がいないこの世界で】

          〈初めてのエッセイと目標〉

          少し震える心でフリック入力しながら、どう書き始めようか迷っている。 初めてのエッセイ投稿はどんなものになるだろう。 カフェの中で一字一字丁寧に打っては消したりして、やっとここまで辿り着いた。 やはり、苦手だ。 それもそう。 苦手だから今の今まで避けてきたのだ。 フィクションの枠に自分の気持ちを押し込めて表現してきた。虚像のキャラクターに自分や他人を投影したりもした。上手くできてないことやそのせいで中々伝わらないことは重々承知だが、それでも良かった。 じゃあなぜ、今エッセ

          〈初めてのエッセイと目標〉

          暗黒の未来スコープ③

          恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』 【第三十三話】 (ユリ) 陽気な季節でも 私の心は冷めたまま。 この先にある未来に、期待が持てなかった。 カラン 扉が音をたてる。 今日は水曜日ではない。 それでもつい寄ってしまった。 本当は毎日でも通いたいのだけれど。 そこは我慢。 いつも通り席につきホットココアを頼む。 カバンの中にあるファイルから課題確認表を取ろうとすると、ふと進路希望調査の紙が目に入った。 そういえば、君はどんな未来を歩もうとしているのだろう。結婚や仕

          暗黒の未来スコープ③

          暗黒の未来スコープ②

          恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』 【第三十ニ話】 (ヒロ) 柔らかな風景が 窓から滲み出て 空にかかる雲は 心なしか微笑んでいるように見える。 そんな希望に満ちた季節が来ても。 俺は何も変わらない。 ただ目の前の問題をこなしていくだけの毎日。 課題、バイト、あとは家のこと諸々。 放課後に遊んだりすることもしないし、密接に誰かと関わることもしない。 幸せな青春なんてものを望んではいけないから。 ガラガラガラ… チャイムが鳴り、新しい担任が入ってくる。 少々厳つ

          暗黒の未来スコープ②

          暗黒の未来スコープ①

          恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』 【第三十一話】 (ユリ) 新たな季節の兆しの中に住む 穏やかに戯れる人々は みんな幸せなのだろうか。 新学年、新担任、新たなステージ。 学生という身分に属してから、12年目に突入した。 もはや新しい学期だからといって楽しみなことは何もない。ただ、クラスの中で誰か仲良くなれそうな人を見つけなきゃいけないのは面倒だった。グループ分けで気を遣われたくはないし、余るのも嫌。 「ユリ~!!!!今年も一緒だね☆」 いつも語尾に星マークが見え

          暗黒の未来スコープ①

          花を咲かせ!

          それは突然だった。 離れ離れを迫られる選択。 誰にも止められない君の夢。 無限の可能性が限りあるものだと現実を知った時、君は焦った、そして戸惑った。 このままで良いのか、と。 この夢は見るもので叶うものではないのか、と。 夢を追いかけたところで夢に辿り着けるわけじゃない。理想は現実から程遠い。 でも、君は夢を選んだ。 それが、君だ。 私は拒む。 嫌だと心では叫んでいる。 ゆっくりと育む日常ではなく 熾烈に求める人生を生きる。 その人生にもう私はいない。 過去

          花を咲かせ!

          怪獣と君

          昼下がり。 日差しは強く、曇った胸の内を照らす。 照らされて焼かれた匂いに神経を休ませる。 怪獣は、可愛い君に包まれて愛を知ったあの日を思い出していた。 怖いから遠ざけるのではなく、知ろうとした君。 誰も信じられず、諦めていた僕を温めてくれた。 それなのに僕は君に何もできずにいた。 それが優しさだとも知らずに。 不快感さえ感じて、鬱陶しかった。 本当に、何も、できなかった。 知らんぷりされ、蔑まれるのが当たり前な僕。 傷つけられている事さえ知らなかった。 それを教えて

          恋と寒空⑥

          恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』 【第三十話】 (ヒロ) コート、ネックウォーマー、手袋。 これだけ防寒装備を整えても、 自転車を乗る人間の体感温度は著しく低い。 こんな時に、俺は俺が人間であることを肉体で感じる。 それ以外では”俺とは一体、何なのだろう”と常に思っていた。 おつかれ~とニヤリ顔で言うタクトと別れる。 からかいやがって。そんなに顔から滲み出ているのか? 一人になり、いつもなら一刻も早くこの寒さから逃れたいはずの道で俺は彼女と一緒にここを歩いたあの

          恋と寒空⑥

          恋と寒空⑤

          恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』 【第二十九話】 (ユリ) 暗い夜空に抱かれて 星を眺める時間に 思い出すのは君のこと。 田んぼ道、初めて君と歩いた日。 一瞬で蘇る記憶。 今日までに見たあらゆる君の姿が脳内で復元されていく。 「あー、好きだ。」 人を恋しくなるという感情が今まではわからなかったけど、知ってしまった自分が少し恥ずかしい。 ビュン 冷たい風が私の頬を叩く。 誰かが私に目を覚ましてほしいみたいに、怒っているかのように、痛い。 わかってる。 想像す

          恋と寒空⑤

          恋と寒空④

          恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』 【第二十八話】 (ヒロ) 笑顔は人を豊かにする。 彼女の微笑みにはどんな意味があるのだろう。 俺に向ける笑顔とカンナさんに向ける笑顔にはどんな違いがあるだろうか。 席に座ってただ話を聞いている彼女と俺の前で沢山話をしてくれる彼女。勘だけど、多分そこに差異はない。本当に笑顔は人を豊かにするのだろうか。 彼女が一人佇む時の”無”の表情。 俺の目にはその時が一番輝いて見えていた。 確かに作業をしながら遠くに見える彼女はとても愛らしい

          恋と寒空④

          恋と寒空③

          恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』 【第二十七話】 (ユリ) 偽りの時間。 それはいつもよりゆっくりと長く目の前を通過していく。 カンナ先輩が久しぶりにウクレレ教室に顔を出し、一緒にカフェに来た。「久しぶり、ヒロ」と先輩が挨拶をする。そういえばヒロって呼んでいたな。 たったそれだけ。 だけど私の心にヒヤリと氷柱の先が当たる。 私もそうやって呼べるようになれたらいいのに。 いつも一人でいる席に二人で座っていると、やっぱり少し違和感があった。ここはもう「カンナ先輩と来

          恋と寒空③