孤独なカメレオン①
恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』
【第三十七話】
(ユリ)
私が穏やかでいられない世界は
重くて、ヒリヒリと冷たくて
ひどく、透明だった。
…
「ユリ~!あたしね、私立の大学に行くことにしたんだぁ」
ランはいつもいろんなことを私に報告する。
恋愛、部活、家族、学校のゴシップ。
彼女は全てを他人に話すことに躊躇いがないらしく、受ける予定の大学まで教えてくれた。
かなりの難関大。そこまで話すんだ、と感心する。
「いいじゃん!応援するよ!!」
正直今のランの成績じゃ頑張っても届きそうにないけど、今彼女が欲しい言葉はそれじゃない。
「ありがと~☆」
と語尾に星をつけ、言いたいことだけ言って去る。
これが彼女だ。
いろんな相談のできる友達だったら良いのだろうなと思いつつ、無いなと改めて振り切る。
そもそも自分の話を一切する必要がないから友達付き合いを始めたのだ。彼女が私の話を聞くなんてありえない。
後ろの席からざっと教室を眺めてみた。
新学期に入ってから数週間とも経てばある程度グループが固まってきているようで、各グループにいる大体の人数を把握する。
今年もグループ決めに手間がかからなさそうだと一安心した。イレギュラーにグループ内の喧嘩がない限り、すんなり決まりそうだ。
ほっと肩を撫で下ろし、
ひとり机に顔を伏せ、
目を閉じる。
教室に響くクラスメイトの声たちが
段々と意識から遠ざかっていく。
これが現実に耳を塞ぐための、唯一の手段だった。
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