太陽の陰影③
恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』
【第四十五話】
(タクト)
さて、どこから始めようか。
俺とヒロが仲良くなったきっかけは、同じバスケ部の幽霊部員だったことって言えるかもしれない。
俺の場合はある部員と噛み合わなくて行かなくなっただけだけど、ヒロの場合は最初っからやる気がなくて、来たことなんか一度もないはず。
いつだったか結構仲良くなってからなんでバスケ部にしたか聞いたら、目を瞑ってランダムで決めただけらしくて、笑ったな〜。
兎にも角にも、中学の部活は強制だったから退部という選択肢はなくて仕方なく俺は幽霊になった。
他に入りたい部活もなかったし、変えるのが面倒だったこともあってね。
そんな中で2週間に一度の部員全員つまり全校生徒が参加しなければいけない”部活会議”っていう鬼畜なイベントがあった。
抜け出そうともすれば門番に見つかって、部活会議へ強制送還。
でもこれを避けるためだけに学校を休みたくはないし、誰にも迷惑かけたくない。だからめったに人が通らなくて門から遠い外階段で、毎回時間を潰してたんだ。
そして中学2年のある日、ヒロがそこに来た。
今までどうしていたかは知らなくて、この場所もたまたま見つけただけだったかもしれない。
急に顔も知らない奴が来て戸惑ったけど、無視するのもどうかと思って何部か尋ねたら、まさか同学年で同じ部活だとは驚いたよ。
そこからちょっとずつ話すようにはなったけど、仲のいい友人というわけでもなくて、この時間だけの知り合い。だけど仲間ができたようでちょっと嬉しかったのも間違いじゃなかった。
関係あるの?って感じかもしれないけど、この出会いが仲良くなるきっかけであってるんだ。
この後、俺の姉貴がヒロに出会ってしまうから。
今まで姉貴の色恋なんて関わりたくもなかったけど、ヒロには手を出さないでほしかった。
これはヒロだったからではない。
姉貴には厄介な問題があり、それを俺の生活圏に持ち込まれるのは真っ平だから。
それだけの理由だった。