マガジンのカバー画像

30日間の革命

100
毎日小説をアップしていき、100日間で1つの作品を作り上げます。
運営しているクリエイター

#実験

30日間の革命  #毎日小説2日目

30日間の革命 #毎日小説2日目

 文化祭に向けた話し合いは順調そのものだった。坂本が指揮をとり、役割分担や、発表する演目も無事に決まった。我が3年1組は、W.シェイクスピア作『マクベス』を行うこととなった。

 『マクベス』とはどんな内容なのか簡単に説明すると、「勇猛果敢だが小心な一面もある将軍マクベスが妻と謀って主君を暗殺し王位に就くが、内面・外面の重圧に耐えきれず錯乱して暴政を行い、貴族や王子らの復讐に倒れる」というものであ

もっとみる
30日間の革命 #毎日小説5日目

30日間の革命 #毎日小説5日目

 ”革命”

 この言葉を聞いたのは、確か世界史の授業が最後だったかもしれない。加賀は色々な思考を巡らせた。

 (これは冗談なのか?また俺をからかってるのか?)

 しかし、坂本の表情を見る限り、ふざけて言っているようには見えないし、何よりその言葉に強い想いが込められているようにも感じた。

 「革命って、フランス革命とか産業革命とかの革命?」

 「うん。その革命だよ」

 「まじ?」

 「

もっとみる
30日間の革命 #毎日小説8日目

30日間の革命 #毎日小説8日目

 大友孝一は武蔵中央高校の野球部監督である。自身も武蔵中央高校の野球部OBであり、監督就任10年となる。とにかく厳しいことで有名であり、野球部のみならず、ほとんどの生徒から恐れられている。しかし、その厳しさ故、生徒からは敬遠されており、中には悪口を言う人も少なくない。しかし森下は違った。どんなに厳しい指導やトレーニングでもついていき、決して反抗することはない。加賀の言う通り、一種の”洗脳”にも見え

もっとみる
30日間の革命 #毎日小説9日目

30日間の革命 #毎日小説9日目

 いつも通り、坂本は屋上のベンチにいた。そして、加賀は先ほどの話を坂本に話した。すると坂本はどこか納得したような穏やかな笑顔を見せた。

 「みんなが知らない一面か。森下君は大友先生の怖いだけじゃない一面を知っていたんだね。だからあそこまで頑張れるんだね」

 「どんな一面なんだろうな。めっちゃ気になるよ。でもさ、森下もそんなことで、あそこまで従順になれるんだから凄いよな」

 「ねえセト、人を動

もっとみる
30日間の革命 #毎日小説10日目

30日間の革命 #毎日小説10日目

 森下は野球部の練習が終わり、グラウンド整備など全ての片付けが終わったあとも一人で自主トレをしていた。その自主トレが終わり、身支度をしている頃合いを見計らい、坂本と加賀は声をかけた。

 「森下君、お疲れ様!」

 坂本が声をかけると、森下は驚いた顔を見せた。二人は3年間違うクラスであったため、接点はなく、これが初めての会話となった。

 「え? お、お疲れ様」

 戸惑いながらも返事をした森下は

もっとみる
30日間の革命 #毎日小説11日目

30日間の革命 #毎日小説11日目

 いきなり”革命”のメンバーになってほしいと言われた森下は困惑していた。何せ、言ってきたのがあの坂本小春だったからである。森下は坂本と同じクラスになったことはなく、会話もしたことがない。しかし、この学校で坂本のことを知らない生徒はいなかった。常に成績はトップであり、2年生から生徒会長を務め、体力テストでも上位に入る。そんな完璧にも近い坂本の名前は、どのクラスにいても耳に入ってくる。そんな坂本から”

もっとみる
30日間の革命 #毎日小説12日目

30日間の革命 #毎日小説12日目

 「うーん。ごめん、正直まだこの話を聞いただけだと判断できないよ。坂本さんとしっかり話したのも今日が初めてだし、そんな状態で答えは出せない。そっちが本気なら、なおさら中途半端には答えられない」

 森下は頭の中を整理しながらも、正直に自分の言葉で伝えた。

 「うん。ありがとう正直に言ってくれて。もしよかったら、明日から昼休み、第二視聴覚室に来てくれない?」

 「第二視聴覚室に? なんで?」

もっとみる
30日間の革命 #毎日小説13日目

30日間の革命 #毎日小説13日目

 加賀は翌日から最後の主要メンバー探しに動いた。坂本曰く、この革命を成功させるためには、主要メンバーが4人必要らしい。そして、その4人はそれぞれ違う役割を担うため、似た者を集めれば良いという訳でもないと坂本から言われていた。現在の役割を考えると、坂本は総指揮、森下は実行部隊。しかし、自分の役割は何なのかを加賀はまだ理解していなかった。

 ただ、現メンバーは少なくとも全員目立つ人物ばかりだというこ

もっとみる

30日間の革命 #毎日小説14日目

(いたいた。しかし、毎日あんな感じで一人で将棋やってんのかな?)

 加賀は、図書室の角で一人将棋をさす彼女を見てそう思った。

 将棋同好会は、5年前に将棋が好きな生徒で作られた同好会である。噂によると、一昨年には6人ほどのメンバーがいたそうだが、次第に人数が減っていき、今は手崎のみとなっている。

 加賀はとりあえず近くの席に座って様子を見ることにした。しかし、20分以上経っても、彼女は変わ

もっとみる

30日間の革命 #毎日小説15日目

 手崎恭子は、幼少期から将棋が好きという訳ではなかった。彼女が将棋に初めて触れたのは高校1年生の夏である。とりわけ何か好きなことがあったり、部活動に専念したりすることのなかった手崎だったが、放課後の図書室で静かに繰り広げられていた対局に目を奪われた。図書室の静寂の中、将棋の駒を指す「パチっ」という音のみが響く。お互い対話をする訳でもなく、ただただ盤を見つめ、真剣に駒を動かしている姿に、手崎の心は簡

もっとみる
30日間の革命 #毎日小説24日目

30日間の革命 #毎日小説24日目

 そこには、見知らぬ顔の二人と加賀がいるだけだった。馬場の想定では、坂本もこの場にいるはずだったが、坂本の姿は見当たらない。そして、この二人は誰なんだ。そんな思いがけぬ事態に、馬場は少し混乱していた。

 「お、馬場君も来たね。それじゃ、始めよっか」

 加賀は、皆がそろったことを確認して話し始めた。

 「ちょっと待ってください。すいませんが、まずこちらのお二人はどなたですか?」

 馬場は話を

もっとみる
30日間の革命 #毎日小説26日目

30日間の革命 #毎日小説26日目

 翌朝、加賀は坂本と通学路で会うことを期待して、いつもより早めに登校した。そして期待通り、通学路の途中で坂本の姿を見つけた。

 「小春、おはよう」

 「あらセト、今日も早いのね」

 坂本は、加賀が自分に会うために早めに登校していることを悟った。

 「その様子だと、メンバーの勧誘が上手くいったみたいね」

 「え、わかる? 相変わらずスゲーな小春は」

 「表情見れば、誰だってわかるわよ。顔

もっとみる
30日間の革命 #毎日小説27日目

30日間の革命 #毎日小説27日目

 「今日は集まってくれてありがとう。みんな席に座っていいよ。ならさっそくだけど、今日集まってくれた新しいメンバーを紹介していくね」

 加賀がそう言うと、坂本は口をはさんだ。

 「せっかくなら、自分自身で自己紹介しようよ。セトが紹介するより、そっちの方がよりお互いのことを知れるでしょ」

 坂本の提案に、教室内の緊張感は更に高まった。

 「そ、そうだよね。なら、神原君からお願いしていい?」

もっとみる
30日間の革命 #毎日小説28日目

30日間の革命 #毎日小説28日目

 「今度、他の生徒を集めて集会を行う予定なの。その集会に向けて、みんなには仕事をお願いすることになると思うから、よろしくね」

 他の生徒にも革命を浸透させるために、現在小規模での集会を計画中だった。森下がその集会に参加してくれる生徒を集めていた。

 「集会っていつやる予定ですか?」

 神原が坂本に問いかけた。

 「そうね。遅くとも、6月上旬にはやりたいと思ってる。集会に参加してくれる人の目

もっとみる