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30日間の革命 #毎日小説10日目

 森下は野球部の練習が終わり、グラウンド整備など全ての片付けが終わったあとも一人で自主トレをしていた。その自主トレが終わり、身支度をしている頃合いを見計らい、坂本と加賀は声をかけた。

 「森下君、お疲れ様!」

 坂本が声をかけると、森下は驚いた顔を見せた。二人は3年間違うクラスであったため、接点はなく、これが初めての会話となった。

 「え? お、お疲れ様」

 戸惑いながらも返事をした森下は、後ろにいた加賀を見つけさらに混乱した。

 「あれ、加賀? え? 何? どうしたのこんな遅い時間まで二人で残って。なんかあったの?」

 森下が混乱するのも仕方がない。野球部の練習は19時まで行われ、森下はそこから自主トレを1時間行うので、もう20時を過ぎている。学校に残っているはずのない二人に声をかけられれば、誰だって混乱する。

 「お疲れ! しかし森下って凄いよな。こんな遅くまで練習してたんだな。全然知らなかったよ」

 あくまで平然を装い普通に会話をしようとする加賀に、森下は不安を感じた。

 「いやいや、お前こそこんな時間まで何してんだよ。なんかあったの?」

 「いやー、何かあったって訳じゃないんだけどね」

 「もしかして、あれか? 監督とやっぱり何かあったのか?」

 「監督? いやいや、全然全然! 何にもないよ?」

 昨日急に加賀から大友について聞かれたことを思い出し、森下は勘ぐった。対して加賀は、自然に振舞おうとすればするほど不自然になっていた。そんなやり取りが続き、中々核心をつかない加賀に、森下は少しイラついているようだった。

 「あのさ、もし監督と何かあったのなら、言ってくれないとこっちも大変になるんだよ。何かあったからこんな時間まで俺を待ってたんだろ? 早く話せよ」

 森下に問い詰められ、加賀は焦った。

(と言われてもな、いきなり革命を起こそうなんて言ったら変人かと思われるしな)

 次の言葉が中々見つからない加賀を横目に、坂本が話し始めた。

 「急にごめんね。私は1組の坂本小春。今日わざわざこんな時間まで残っていたのには理由があるんだ。話を聞いてくれる?」

 「坂本さんのことは知ってるよ、有名だからね。いいよ。話があるなら、早く言ってよ」

 「私たちは、この学校で”革命”を起こすつもりなんだ。それでね、ぜひ森下君には中心メンバーとして仲間に入ってほしいと思って、スカウトしにきたんだ!」

 いきなり核心をついた坂本に、森下はもちろん、一番驚いたのは加賀だった。そして、少しの沈黙を経て、森下が口を開いた。

 「…………え? 革命? ごめん、言っていることがよくわからないよ」

 (そりゃそうだろ、革命なんていきなり言ってもこうなるに決まってるじゃん。だから俺は誤魔化しながら話していたのに、何を考えているんだよ小春は)

 加賀は頭の中でこう呟いた。

 困惑する二人をよそに、坂本はいつもと変わらない笑顔を浮かべ、再び話し始めたーー


▼30日間の革命 1日目~10日目
まだお読みでない方は、ぜひ1日目からお読みください!

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