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お菓子の裏側

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あらゆるジャンルのフランス菓子を食べて、作って、教えて、取材してかれこれ30年。それでも、まだまだ迷路に舞い込んでは、美味しいお菓子とは何ぞや?を追求する日々。しかし、ある日その… もっと読む
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記事一覧

ブルボンのヴァニラって言うけど、ブルボンて何?

ブルボンのヴァニラって言うけど、ブルボンて何?

アンリ4世の時代からルイ16世のフランスは、ブルボン王朝と言うが、それって、ブルボンのヴァニラと関係があるの? そもそも、ブルボンって言葉、どこから来た?

ブルボンとはですね、ブルボン王朝を築いた最初の王、アンリ4世(1553-1610)の縁の土地であるオーヴェルニュ地方にあるBourbon-l’Archambaultという村の名前から来ています。ここがブルボン家の発祥の地。

アンリ4世は、ナ

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アニョーパスカル。アルザスの復活祭のお菓子について

アニョーパスカル。アルザスの復活祭のお菓子について

アニョー・パスカル。アルザス地方で復活祭に作られるお菓子です。信者数22億5000万人。世界最大と言われるキリスト教が普及した国では、1年に一度、キリストの復活を祝う復活祭(フランス語でパークPâques 、英語でイースター Easter)の日が定められています。

ベツレヘムで生まれ、ナザレで育ったイエス・キリストは、やがて使徒と呼ばれる弟子たちを伴い、各地を周って自らの教えを広めました。そんな

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花の水

花の水

お菓子作りややスキンケアに使う、花の水の原産地は、チュニジアを中心とする北アフリカあたりです。

朝早く花を大量に摘んで、それを煮て蒸留させたものがその水になります。

オレンジの花の水は、フランスでは最初にお菓子の香りづけとして使われました。もちろん今でも使います。主に南のお菓子に多いですね。そのほか、スキンケアとしても利用されているし(お菓子材料として探す場合は、スキンケア用なNG)、原産地で

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君の食べているものを言ってごらん。君を当てます!

君の食べているものを言ってごらん。君を当てます!

まさか料理人と結婚するとは思わなったから、私もけっこう料理関係の本を持っていて、いざ結婚したら、相手もけっこうな数の本を持っていた!ということで、当初本棚には、同じ本が2冊並ぶ、という光景が。この本もそう。

フランス地方菓子料理クラスでは、毎回復習テストをする。いずれもカンタン。だって3つから選ぶんだもん。無記名、提出なし。自分で理解できていればよい。

ということで、今回の問題1は、サヴァラン

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クリスマスがクリスマスになった理由

クリスマスがクリスマスになった理由

フランスのクリスマスは、どんなに遠くに住んでいても日本のお正月のように、みんなが集まる日。ブルゴーニュの友人の家のクリスマスに招待されたことがありますが、すごかったです~。20人くらい集まったかな。たくさん、そして延々と食べます~。こっちは、フランス語もしゃべらなきゃならないし、食べなきゃってんで疲れました~(笑)。

メインは、七面鳥の栗詰め。フランス語で七面鳥をダンドと言い、Dindeと書くん

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タルト・タタンを作ろう!

タルト・タタンを作ろう!

タルト・タタンは、フランスのサントル・ヴァル・ド・ロワール地方のラモット・ブーヴロンという町の駅前ホテル「ホテル・タタン」で20世紀終わりにこのホテルを営む二人の姉妹の失敗によって作られました。

リンゴのタルトを作ろうとしたら、レストランがあまりにも混雑していたので、一人がタルト型にりんごだけを詰めて焼いてしまいました。その後もう一人が焼き具合を見にくると生地がないことを発見。あわてて生地をかぶ

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カヌレとミルフィーユ

カヌレとミルフィーユ

ボルドーってそんなにフランス人に人気な町だって知らなかった。4人に1人が住みたいと!概にコロナ禍で移り住んだパリっ子が増加。

元々三角貿易(奴隷貿易ですな、要するに。町をよく見ると奴隷の彫刻などが)でリッチだった町だったんですけど、町はイケテなかった。そこで、16世紀に、とある公爵が自腹で町を美しく建て直した。 

その後はナポレオン3世下で、パリ大改造をやってのけたオスマンが手を入れて、今のよ

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サロンのお菓子、フリアンて?

サロンのお菓子、フリアンて?

サロンということばがありますが、サロンはもともと女性が主催していた会で、芸術家や作家、当時の流行職業の人たちが集まって議論を交わしたり、朗読したり、演奏したり多岐に渡っていろいろ披露されていた場所です。

有名なところでは、17世紀サブレ公爵夫人のサロンというのがあり、そこで出されていた焼き菓子が美味しかったとかでそのクッキーをサブレと呼ぶようになったという説があります。これとは別にノルマンディー

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シュー生地はもともと鍋で焼いていた。

シュー生地はもともと鍋で焼いていた。

シュー生地は、16世紀にカトリーヌ・ド・メディシスのお抱え料理人がその前身を作ったと言われている。それはポプリーニと呼ばれ、その後ププランと呼ばれるようになる。そのレシピを、2世紀後の18世紀の料理人、ジョゼフ・ムノンの「ブルジョワの女料理人」という本の中で見つけた。

生地の作り方は今と同様。しかし、焼いたら中に溶かしたバターを塗って、上に粉糖とレモンの皮のすりおろしを散らして、さらに焼きごてで

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人生初めての本は、フランス一周から始まった!

人生初めての本は、フランス一周から始まった!

休みで色々整理していたら、なんと懐かしいノートが。1994年4月から5月とある。

この本の目的は、日本でまだ知られていないフランス地方のお菓子とその背景について書くことだったので、もう一度現状のフランスを見たいと思い、旅を計画。フランス人の友人Isabelleや、今は三ツ星シェフになっているクリスチャン・レスケール、他パティシエたちに資料や本を沢山送ってもらって研究。もうみんなそんなことは覚えて

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近代菓子の基礎を築いた偉大なパティシエ、アントナン・カレーム。5才で捨てられ、劣悪な厨房環境に悩まされたその生涯とは?

近代菓子の基礎を築いた偉大なパティシエ、アントナン・カレーム。5才で捨てられ、劣悪な厨房環境に悩まされたその生涯とは?

最近なんだかパリのピストロで、ヴォローヴァンが流行っていますね〜。19世紀の料理再来?
ヴォローヴァンとは、Vol au ventと書いて、風に飛ばされるくらい軽い食べ物ということで、折りパイ生地で器を作った中に、詰め物をする料理です。

フランス革命の6年前、1783年、その偉大なる菓子職人、アントナン・カレームは今のボン・マルシェあたりのバラックで生まれた。当時は革命の前で世の中が混乱していた

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淡雪と浮島!?

淡雪と浮島!?

先日フランスお惣菜クラスのデザートで、ウッフ・ア・ラ・ネイジュを作った。言ってみれば淡雪。イル・フロッタントとどう違うんですか?という質問あり。うーん、イル・フロッタントはイル(島)がフロッタント(浮いている)から浮島なのよ。

卵白の大きな塊が液体(アングレーズソース)に浮いているイメージ。どちらもパリのビストロの伝統的なデザートでよく見かける。

でも、日本ではあまり食べたことないかも?初めて

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復活祭の仔羊

復活祭の仔羊

Joyeux Pâques 💐今日は復活祭ですね!
教室のベーシッククラスでアニョー・パスカル焼きました。「アニョー」は仔羊、そして「パスカル」は復活祭、または復活祭の期間中のことを指します。

今フランスは復活祭のバカンス。お菓子屋さんでは卵形チョコが並んでいます。しかし、アルザス地方は、このアニュー・パスカルを作るのです。復活祭は移動祝日で、「春分の日の最初の満月の次の日曜日」と言われており

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