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毎日読書メモ

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2023年7月の記事一覧

地球に隕石とか小惑星が落ちてきて人類が滅亡するという小説(毎日読書メモ(496))

地球に隕石とか小惑星が落ちてきて人類が滅亡するという小説(毎日読書メモ(496))

しばらく前に、凪良ゆう『滅びの前のシャングリラ』(中央公論新社)を読んだのだが、読んでいる間中、デジャヴ感がぬぐえず、どうにもむずむずする。
(この先ネタバレだよ)
スクールカースト最下位レベルの少年が、最上位少女と、かつて本音で話したときのことを心のよすがに、うっすらとした片思いを抱く導入部は痛々しく、読んでいて辛い。そして、突然、1ヶ月後、小惑星が地球に墜落してきて、人類は滅亡すると報道され、

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『ふしぎ駄菓子屋銭天堂19』(廣嶋玲子・jyajya)(毎日読書メモ(495))

『ふしぎ駄菓子屋銭天堂19』(廣嶋玲子・jyajya)(毎日読書メモ(495))

今年4月に刊行された銭天堂シリーズ最新刊、廣嶋玲子・jyajya『ふしぎ駄菓子屋銭天堂19』(偕成社)、図書館で順番が回ってきたので早速読んだ。
一旦叩き潰した六条教授が、紅子への復讐へ再始動。
しかし潜伏していて、あまり動きが読めない…個人的には、復讐しようとする六条教授と紅子の対決が主筋であるなら、もう少し動的でないと読者にわかりにくい、この動きが何巻も続くと、読者が飽きてしまうのでは、という

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滝口悠生『死んでいない者』(毎日読書メモ(494))

滝口悠生『死んでいない者』(毎日読書メモ(494))

滝口悠生が『死んでいない者』(文藝春秋、のち文春文庫)で芥川賞をとったのが2016年下期、本谷有希子『異類婚姻譚』と同時で、ちなみに1期前が又吉直樹『火花』と羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』だった。
最近あんまりきちんと芥川賞受賞作をフォローしていなくて、この頃の受賞作、あまり読んでなかった。評判の良かった『長い一日』(講談社)を読んだのをきっかけに、近作『水平線』(新潮社)も読み、満を持し

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市川沙央『ハンチバック』(毎日読書メモ(493))

市川沙央『ハンチバック』(毎日読書メモ(493))

第169回(2023年上期)芥川賞の発表まであと1週間ちょっと。乗代雄介『それは誠』(文藝春秋)に既に心を持っていかれているわたしだが(ここで絶賛)、注目度という意味では候補作の中でも屈指(いや、候補が5作なんだから指足りるけど)の市川沙央『ハンチバック』(文藝春秋)も読んでみた。単行本もすでに店頭に並んでいるが、この作品は第128回文學界新人賞受賞作なので、「文學界」2023年5月号(『それは誠

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角田光代『タラント』(毎日読書メモ(492))

角田光代『タラント』(毎日読書メモ(492))

遅ればせながら、角田光代『タラント』(中央公論新社)を読んだ。2020年7月~2021年7月にかけて読売新聞に連載され、改稿のうえ、2022年2月に単行本が出た長編小説。
まず、タイトルの「タラント」の意味がわからない。そして、義足をつけたアスリートが高跳びをしているイラストの表紙なのに、読み始めるといっこうに義足のアスリートの話は出てこない。
(この先ストーリーに踏み込みます。未読の方注意)

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