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アストロマジシャンズ・リベンジ・アンド・ザ・マスカレイド
宇宙空間に漂う瓦礫の中で、4800億年ほどうごめき続けている者がいた。純白に輝く彼/彼女は、その顔にピタリと吸い付いている仮面にずっと苛まれていた。しかしついに開放される時が来たことをマガスは直感した。ようやくこの宇宙の生物も、アストロ魔術師たる彼/彼女の足元程度の技術を持ったことを。そして今ここで二つの派閥がくだらぬ諍いをしていることを。
彼らの次元兵器と私の魔力、そしてこの背中の亜神仙装置の
銃・病原菌・オリハルコン
ギリシャ、ピレウス港。雲ひとつ無い真っ青な空に、翼を広げたカモメが優雅に飛ぶ。朗らかな陽気の中、エーゲ海を望む広々とした港にひっきりなしにクルーズ船が訪れていた。
観光客で港のターミナルはごった返している。アメリカ人のステレオタイプをそのまま形にしたような白人、年齢を感じさせない伸びた背筋の洒落た老婆、皆で固まりきょろきょろとあたりを見るアジア人一家。
その喧騒から離れた岸壁に一人の黒人の女が佇
デモン・フェラー 伐鬼の斧
分厚い雲が晴れることはなく、陰も日向もない灰色の日々が続いていた。
昼とも思えぬ薄暗さの中、少年エモーは小さな体に襤褸をまとい、通りですりの獲物を物色した。
肋の浮いた牛が道に転がるゴミを難儀そうに避けながら牽かれている。向かいでは怒り顔の坊主が気の滅入る辻説法をしている。肌寒い乾いた風が、カラスの鳴き声と鼠の死骸の腐敗臭を運んでくる。
後ろの酒場では、腹を満たす以上の喜びは提供していない。ここの
クリスティ~魔女と秘密の英雄~
何者なのだ、この男。
闇の歩き手、千年を生きる古き者、女の中の女にしてこの国の魔女を統べるエマ様の館なのだぞ。何故これだけの魔力の罠と攻撃の中を平然と歩ける。
もはや、側仕えであり近衛である我々の全力を出すしか無い。この魅了術(チャーム)で奴が完全な下僕になっても構うものか。目でソフィアに合図し、同時に術を放った。しかし男は小さく会釈しただけだった。
「術が効かないなんて――」
男が微笑んだ
美食家なんぞブタにでも食わせてろ!
私の権力を使えばあらゆるものを手にできるとお思いではないか。
概ね正しいが違う。
“ほぼ”あらゆるもの、だ。
ある時気づいた。あらゆる食を楽しむのに人生は短すぎると。せいぜい一日に四食から五食。それに寿命までの日数をかけてみたまえ。たったのそれだけしか食事できぬのだ。美味いからと何度も同じものを食べれば、それだけ一生のうちの食事の種類が減ってしまう。
そこに気づいてからは、毎食違うものを食べた
魔術師フランスールの目覚め
「おじさま、本当に王と謁見されるのですか」
娘はそわそわと落ち着かない。これがあやつに連なる一族とはどうにも信じがたい。しかしその整った顔立ちと鮮やかな金の髪は、確かに面影があった。
「この私が戻ってきたのだ。当然であろう」
階段を上がり正門へたどり着く。
魔法が消えて久しいというのは事実らしい。正門は開かずの門と化し、みな勝手口から出入りしている。
この衛兵たちも王の権威を誇示する飾りに過
陽はまた昇る、昇らせる
まだ太陽は昇らないのか。今日の夜の軍勢は全て退けたはず。
朝焼けの騎士は戸惑っていた。遥かな昔の太陽王と夜の后の戦いの末、緩衝という役割を承って幾星霜、このような事は初めてだった。
夜の后が取決めを破ったというのか。ならばなぜ次の敵が来ない。
もはや待てなくなった頃、夜の中を一人歩いてくる者が見えた。おお、あれはまさか。こんな事が起こって良いはずが無い。
「お主の仕業か、夕暮れの狩人よ!」
ジャックとグレイプと妖精の国
「取り替え子をこんな大きな子と間違えるなんて、あんたの目はミミズ以下よ」
アップルの怒りが痛い。良いところを見せたかったのに。今までも失敗ばかりだったが、それでもこんなヘマはしなかった!
どう見ても赤ん坊じゃないじゃないか。6歳てところか。森の木々の手招き、岩の間のざわめく視線、池のしじまの音ならざる音。そんな異界から手が切れる時期。
それを連れてきちまった。どうして間違えたんだ。
俺のことな