ジャックとグレイプと妖精の国
「取り替え子をこんな大きな子と間違えるなんて、あんたの目はミミズ以下よ」
アップルの怒りが痛い。良いところを見せたかったのに。今までも失敗ばかりだったが、それでもこんなヘマはしなかった!
どう見ても赤ん坊じゃないじゃないか。6歳てところか。森の木々の手招き、岩の間のざわめく視線、池のしじまの音ならざる音。そんな異界から手が切れる時期。
それを連れてきちまった。どうして間違えたんだ。
俺のことなんて気にもせず、小僧はキョロキョロキョロキョロ!
「ここが妖精の国?」
「だったらどうした」
小僧の目が見開かれる。
まずい。馬鹿な俺でもこれはわかるぞ。良くないことを考えている顔だ。
妖精たちは赤ん坊以外の人間をほとんど相手にしたことはない。だから誰も、注意を払うなんてことを知らなかった。
小僧が走り出しても、しばらくは皆それを眺めていた。
ああ、駄目だ!まともな取り替え子じゃない人間がここにいるなんて女王にバレたら!
【続く!】
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