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クリスティ~魔女と秘密の英雄~

何者なのだ、この男。
闇の歩き手、千年を生きる古き者、女の中の女にしてこの国の魔女を統べるエマ様の館なのだぞ。何故これだけの魔力の罠と攻撃の中を平然と歩ける。

もはや、側仕えであり近衛である我々の全力を出すしか無い。この魅了術(チャーム)で奴が完全な下僕になっても構うものか。目でソフィアに合図し、同時に術を放った。しかし男は小さく会釈しただけだった。

「術が効かないなんて――」

男が微笑んだ。

「そんなことはない。年をくって嗜むことを覚えたからだよ。君達もその味を覚えると良い」

男と目線が合う。ああ、駄目、これは魅了術だ。それも飛びきり強い。だめだめだめ、だめよ、お願い。

その時、前触れなく現れたエマ様が男に火球を放った。これほど直接的で恐ろしい魔法でありながら、男は髪一本焦がしてない。

「貴様、一体どれほどの時を重ねてきた」エマ様がねめつける。

「君がおしめをしていた頃は、魔女を口説くのに飽きていた頃さ」

【続く】

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