風雲 生屠会義侠伝
奇妙であった。青空の中の小さな雲。雲から滴る雨は、僅か半径1mだけを濡らしていた。
雨のベールの中にはどす黒い傘を差した男。目深にかぶったシルクハットで目元は見えないが、眼前の巨大な穴を見ているのは明らかだった。
「またあの五月蠅なす糞虫共がままごとを始めるのか」
《雨男》の口元から、思い通りにゆかぬことへの歓喜が漏れ出していた。
「待ちぼうけ、待ちぼうけ。フフフ……」
「古の生徒会役員が蘇った」
先日、北大路先輩――生徒大評議会副会長が発した言葉に私は絶望した。
学園内の内海が突如干上がり、この先史学園遺跡が現れて一週間。もはやそう結論付けるしかなかった。
考古学部として出来る事を探すため、私は再度遺跡へやってきた。そして先程、この生徒玄室を見つけたのだ。
扉には難解な書道文字が描かれている。もし新たな役員だったら。
「ば……ばん……」
息を呑む。
「まさか伝説の番長――」
「やめてよ、せめてスケバンでお願い」
【続く】
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