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美食家なんぞブタにでも食わせてろ!

私の権力を使えばあらゆるものを手にできるとお思いではないか。
概ね正しいが違う。
“ほぼ”あらゆるもの、だ。

ある時気づいた。あらゆる食を楽しむのに人生は短すぎると。せいぜい一日に四食から五食。それに寿命までの日数をかけてみたまえ。たったのそれだけしか食事できぬのだ。美味いからと何度も同じものを食べれば、それだけ一生のうちの食事の種類が減ってしまう。

そこに気づいてからは、毎食違うものを食べた。金を使い人脈を使い、世界中の美味・珍味を食べた。しかし、何を使ってもどうにも手に入らないものと言うものがあるのだ。あるいは鮮度。あるいは地理的条件。あるいは地元民の抵抗。
ならば、私自身が出向くしかあるまい。
少々太りはしたが、昔取った杵柄というものがある。冒険ならば任せ給え。

というわけで、私は今、密林のゲリラ基地周辺にいる。
現在地、不明。
装備、喪失。
仲間、一人。
食料は。

「オッサン、人間は食わねえだろうな」

【続く】

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