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#私の作品紹介
【これが愛というのなら】告白
音信不通
石屋に行く前に、隣の市の駅前のパスタ専門店で、私たちはランチをした。
「美味しいねー」
望は幸せそうにパスタを頬張る。
いつもと変わりないように見えるその様子に、でも私は違和感を感じていた。
レモングラスが添えられたお冷やを飲みつつ、私は何気ないように望に聞いた。
「石屋さんなら、反対の市のお店の方が種類が多くないかな?こっちの方が遠かったし…」
望はフォークを皿に置く
【これが愛というのなら】はつこい
はつこい
ある冬の朝、望からメールがあった。
大雪で、世界は生まれ変わったように真っ白だ。
空気の入れ換えのために開けていた窓を閉めて、私はメールを読んだ。
「昨日の夜中、ドライブに行ったの」
この大雪に?
隆の持っている、あの高級で頑丈そうな車なら、そんな事は気にならないのか。
「どこまでいったの?」
「●●山を超えて、隣の県まで」
雪が降ってないときですら難所だ。
しか
【これが愛というのなら】チャラ男との出会い
嵐の予感
あんの自殺のことは、クリニックの中でも話題にされることはなかった。
あんが、最後に送ったメールの内容を、私は誰にも話さなかった。
望にも相談もしなかった。
望にはもう新しい彼氏もいて、この間の休みには九州の隆の実家まで挨拶にいったじゃないか。
元彼の嫁の子供が本当は誰の子供だろうが、私たちには関係ない。
あんのあの体の傷も、森山先生がつけたものか分からない。
理恵が裏で
【これが愛というのなら】その勇気があったなら、あいつを殺して。私も、殺すから。
理恵
何時に来るか分からなかった、森山先生がクリニックに訪れたのは14時過ぎ。
リーダーの心づくしの紅茶もケーキを無視をして、院長と院長夫人と一緒に、院長室に閉じこもった。
食べてもらえなかったケーキでみんなでお茶をした。
「なんか偉ぶった人だねー」
スタッフがこっそりつぶやく。
あんは、フォークでケーキを小さく小さく刻んでいる。
全員で挨拶をしたときに、森山先生があんの全身を舐
【これが愛というのなら】こじれた恋心が生んだ陰謀
院長夫人
あんが、体調を崩すようになっていた。
当時勤めていたクリニックに、看護師は3人いたが、1人は午前だけのパートで、人手が足りない。
新しい看護師の補充を院長に頼んだが、院長は曖昧に首を振って断る。
そしてあんは、院長夫人からいじめを受けるようになっていた。
院長とあんと私は、元々は同じ総合病院出身であったし、病棟勤務が長かったあんは、院長とも仲がよく、よく冗談を言い合う場
【これが愛というのなら】美貌の母親
新しい恋人
望は、辛い別れを忘れるように、すぐに新しい恋を見つけた。
望より2歳年上で、国家公務員の九州男児。
紹介された彼、隆は、体育系出身らしい丁寧さと若いはつらつとした魅力にあふれていた。
まだ25歳だったが、収入も高く、色々な資格を持っていて、キャリアとしてこれから順調に出世していくことは間違いないだろう。
出張が多く、そのたびに私にまでお土産を買ってきてくれる細やかさと、そ
【これが愛というのなら】腐ってやがる、遅すぎたんだ
あん
望は泣いて、泣きはらした目が元に戻るまで、うちにいた。
お母さんに心配をかけたくなかったのだろう。
「ごめんねえ、なぎさん。朝まで」
「気にしないで。本を読みすぎて徹夜はなれてるから」
私は笑った。
望もやっと笑って、帰って行った。
徹夜にはなれていたが、望の気持ちを考えると、辛く重苦しい気持ちになり、ついつい仕事中にため息がもれる。
「また読書で徹夜ですか?」
あ
【これが愛というのなら】小さな嵐の前の、たつまき
病棟勤務
理恵が退職し、しばらくしてから私は外来勤務から病棟勤務に変わった。
配属は整形病棟。
ICU担当や、長期入院、または転院から施設、また転院をくり返している患者がいる病棟担当(電子カルテ化して現在は楽になっていると思うが、手書きカルテ時代、大変算定が難しかった)は、忙しさに毎日6時かも7時間も残業しても時間が足りないようだっだが、整形病棟は楽だった。
冬にスキー場で骨折した患者
【これが愛というのなら】悪魔な美少女
「見た目は少女、心は少年」
望は小柄、華奢で、カラーもしてないのにさらさらの茶色の髪を持っていた。
大きな瞳はいつもきらきらしている。
「なぎさーん」
仕事で困ったことがあると、大声で私を呼ぶ。
私は医事課の嫌われ者だったので、私になつく望も巻き込まれるかもしれないと心配していたが、望はそのような事は気にしないようだった。
心の機微に疎いというより、「儚い美少女の見かけ」に反して、