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エッセイ

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2018年1月の記事一覧

沈黙の裡の対話

沈黙の裡の対話

長い沈黙、永い眠りから醒めたように彼女は話しはじめた。
ボクは嬉しさのあまり一言も逃さないように心を澄ませる。
彼女の懐しく柔らかな言葉が五線譜をくぐり抜けるように響く。
ボクは目をつぶり一言ひとことを味わう。

でもボクの嬉しさも喜びも長くは続かなかった。

彼女の輝いて見えた言葉にふいに雲がかかったように見えた。
ボクの喜びは不安に変わり、思わず目を明けてしまった。
彼女は笑って言葉をしぼりだ

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音を楽しむ 「蜜蜂と遠雷」より

音を楽しむ 「蜜蜂と遠雷」より

トタン屋根をたたく雨の音
草原を走る風の音
揺れる木々とセミの混声
海の碧い波の音
ドアの軋む音、米を洗う音……

きっと誰にもあったはずの遠い記憶。
暮らしをとりまく何もかもが音を楽のしめたはずなのに。
そんな音たちに合わせ好き好きに口ずさんでいたはずなのに。
口笛、草笛、いつしかピアノでさ、、
思うように感じるように音と戯れていたはずなのに。
いつしかそんな音たちを記録したくなっちゃたんだね。

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青いインクの赤

インク壺にペン先をつけ青いインク昇らせ「赤」という字を書いてみる。
彼女は「綺麗な碧ね」と呟いた。
アカでしょ、とボクが微笑うと、うねるような濃淡が故郷の海の色に似てると言った。ボクはアカを想起して文字を書いたんだけど。
海の見える故郷がなく都会生まれのボクにとって何色のインクで書いても「赤」はアカだった。まさかその綺麗な青いインクは碧い波だったなんて、
彼女の言葉が遠くなり、一瞬、紙の上の「赤」

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ウーマンラッシュアワー

今頃ですか?と笑われるかどうかは知りませんが、巷で噂の2017年末THE MANZAIでのウーマンラッシュアワーの漫才をyoutubeで観たんです。
ああ、まだ観てないですって? 旅のお供におひとつ如何ですか、笑。
巷で噂といっても、noteでは、あまり噂にならなっかったので知らなかったのかもしれません。ワタシ自身のブログも昔のように都会の喧噪のなかで政治ネタを書き殴って「あーでもない、こーでもな

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「人生フルーツ」@自ら暮らしを創る

「人生フルーツ」@自ら暮らしを創る

正月に東海テレビ制作のドキュメント映画のいくつかが地上波で放送されました。そのなかに映画館に観に行こうと思っていて行き損ねたものが「人生フルーツ」です。

「人生フルーツ」は、この社会の王道である高学歴で建築家の男と妻が、社会に対する違和感によりこの社会と一線を画す生活を営みます。
自らの手で庭に畑をつくり果樹園をつくり雑木林をつくり、落葉を集めて土をつくり木でおもちゃをつくり家の補修をしてスロー

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気づきの連鎖

やはり誰かと話をすることは大切なことだと思う。
自分ひとりだけではどうしても自らの気づきに限界がある。
他者の言葉からハッと気づくことはあれば幸せである。
誰かに話をしてもらうためには自分をさらけ出すことから始まる。
さらけ出すことは、ちょっと勇気のいることかもしれない。
だって、もしかしたら100人に解ってもらえないかもしれない。
それとも100人に嘲笑されるかもしれない。
それでもさらけ出さな

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