- 運営しているクリエイター
2023年5月の記事一覧
耕運機は畑に、スーパーカーは高速道路にーミニ読書感想『発達障害という才能』(岩波明さん)
精神科医・岩波明さんの『発達障害という才能』(SB新書、2021年11月15日初版)が学びになりました。オードリー・タン氏、三木谷浩史、ニトリの似鳥昭雄氏など、現代の傑出人の発達障害的特性を分析し、その特性をどのように活かして「才能化」しているか分析している本です。
「発達障害者は天才だ」と賛美する本ではありません。そうではなくて、特性の活かし方、「異能」である人と共に生きる社会をどうつくるかを
療育と『その悩み、エピクテトスなら、こう言うね。』(吉川浩満さん・山本貴光さん)
文筆家の吉川浩満さん&山本貴光さんによる『その悩み、エピクテトスなら、こう言うね。』(2020年3月14日初版、筑摩書房)を再読しました。やはり、これは名著。善く生きるための羅針盤になる。
1度目に読んだ時は、エピクテトスの「権内と権外を腑分けする」という哲学の要点に心を惹かれました。そのこころを「風を憂うより船上を楽しむ」とい言い換えて、自らの学びにしました。
当時はこんなパートに心を惹かれ
親を楽にする「仮の理解」という方法ーミニ読書感想『「発達障害」だけで子どもを見ないでその子の「不可解」を理解する』(田中康雄さん)
児童精神科医・田中康雄さんの『「発達障害」だけで子どもを見ないでその子の「不可解」を理解する』(SB新書、2019年12月15日初版)が勉強になりました。タイトルは少し長いですが、大切な願いが込められている。
それは、診断にこだわらず、その子の気持ちや特性を尊重する「仮の理解」を試みること。この仮の理解という考え方は、発達障害のある(あるいは可能性がある)子の親をとても楽にします。
著者の言う
日常に散らばっていた物語ーミニ読書感想『わたしのいるところ』(ジュンパ・ラヒリさん)
ジュンパ・ラヒリさんの『わたしのいるところ』(中嶋浩郎さん訳、新潮社クレストブック、2019年8月25日初版)が心に残りました。米国のインド系移民である著者が、イタリア・ローマで生活していた頃の経験からイタリア語で書いた本書。登場人物の誰にも、舞台のどこにも固有名詞がないという変わった物語でした。
「歩道で」「彼の家で」などなど「私のいるところ」について書かれた46の短い掌編が連なる。それは、日
価値観の定食メニュー化を超えてーミニ読書感想『ネット右翼になった父』(鈴木大介さん)
ルポライター鈴木大介さんの『ネット右翼になった父』(講談社現代新書、2023年1月20日初版)が面白かったです。タイトル通り、闘病の末に亡くなった父の言動が「ネット右翼」になったと感じた息子の著者が、その「変節」の理由を探る物語。しかし、検証すればするほど、「本当に父はネット右翼だったのだろうか?」という疑問と向き合うことになる。本書はネット右翼になった父を断罪するのでも擁護するのでもない。むしろ
もっとみる