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スピティ Spiti,H.P.

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2021年9月、インド北部ヒマーチャル・プラデシュ州、スピティへの旅行記です。 マナリから山を越えてチベット国境の近くまで。古い僧院や人界から離れた修行の地まで、友人と一緒にイン… もっと読む
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記事一覧

僧院ツアー⑤~19世ロチェン・リンポチェ~

僧院ツアー⑤~19世ロチェン・リンポチェ~

僧院の厨房から出てきた女性が日本語を話したので、筆者はびっくりした。

古い僧院らしく、薪で火を焚いて煮炊きをするので厨房は煤が多い。
彼女も全くの仕事着で、しかも手伝いとして働いているらしい。
日本人離れした、日本人女性である。

名をMちゃんという。

何処からその話になったかは思い出せないが、彼女は共通の友人から、スピティ地方を旅している日本人(我々)について聞いていた。
そしてたまたま、拙

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僧院ツアー③~先・先代ロチェン・リンポチェ~

僧院ツアー③~先・先代ロチェン・リンポチェ~

山岳地方の古い僧院の作りに共通しているのか、お城のように上に伸びるキー僧院も、土の壁が厚くて、階段は狭くて急だった。

階段の途中で横に入り口がぽっかり開いていて、その奥に広かったり狭かったり、天井の低い部屋が繋がっている。
まるでイモの根茎に育った芋がくっついているような感じである。

部屋の一部に外壁が当たれば、四角い穴が窓として開けられている。今はガラスがはまっているが、ガラスの無い昔はどう

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僧院ツアー③~キー・僧院~

僧院ツアー③~キー・僧院~

ラルンの柳にさよならをして車に戻ると、道は廻りながら下りに入った。
スピティ川沿いの幹線道路にもどって、カザを通ってキーへ向かう。

スピティ渓谷にある僧院の名前は村と同じ名前が多く、
村の名前がキーだったからキー僧院になったのか、
キー僧院の周りに集落ができてキー村になったのか、
よく分からない。

ともあれ、カザにもカザ僧院というサキャ派の僧院がある。
参拝する時間は無かったけれど、大通りに面

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僧院ツアー②~ラルン~

僧院ツアー②~ラルン~

ラルンへ足を伸ばそうと思ったのは、タボの僧院長先生のお話があったからである。

最初はダンカル僧院とキー僧院に参拝したいと申し上げたのだが、
「だったらラルンにも行くと良い。」とおっしゃる。

何故かというと、ロチェン・リンポチェが地にさした杖が、そのまま木になって生えているからだ。
「ロチェン・リンポチェ」というお名前から、勝手にロツァワ・リンチェンサンポを想像した筆者は、
千年の樹齢を持つ大木

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僧院ツアー①~ダンカル~

僧院ツアー①~ダンカル~

カザからタボへの道は整っている。
スピティ川は流域を広くして、流れは早いものの開けた風景である。
幹線道路は川の流れに沿って走っているので、高低差もあまりなく、走り易い道といえるだろう。

タボに宿泊を続けながら、1日で3僧院を巡るツアーは、朝8時半頃に出発した。
満月の翌日だった。

1日限りの行程なので出入域の申請は必要無いかと思ったが、
その日にタボを出発し、チェックポストのあるシチリン(S

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観音様をたずねて

観音様をたずねて

ソマンのお寺のご本尊様は、千手観音である。
メメの印象が強すぎて、ソマン・シリーズで記すことを忘れていた。

メメや巡礼者が泊まる家の先に、新しくセメントで作られた小さな建物がある。
背後は山の斜面と同化していて、前の部分だけ壁を作った感じだ。
中に入ると、人より少し大きいくらいの千手観音像がおわします。
背後は大きな自然石が張り出している。このお寺も最初は大岩の下の窟のようになっていたのだろう。

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再タボ・15泊

再タボ・15泊

タボに帰ったのは、9月10日の夕方である。
それから何故か、2週間もタボに留まることになった。
タボを出発したのは、9月25日。

その間何があったのかというと、大きなイベントは2つだけ。
インナーライン・パーミット(入域許可証)の再登録と、周囲の僧院ツアー。

先ず、インナーライン・パーミットについて。
特別な召喚状などが無ければ、許可期間は15日である。
もし、15日より長く1ヶ所に滞在するつ

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ソマン・ナコ・タボ~人界へ~

ソマン・ナコ・タボ~人界へ~

コロドンパからソマンへ下りてきた時にも、
人が多い場所へ来たと感じたものだが、
ソマンからナコへ帰る時にも、
人が多い場所へ行くのだと感じたものである。

コロドンパとソマンの印象が強すぎて、帰りたくない気持ちになっていたのだが、やむを得ず下りてきた、という感じである。

「また来ようね」と友人と言いあったものだが、
その時にはメメがいないと思うと、
今回のソマンは、本当に一期一会の機会だったと実

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ソマン⑪~人生最大のピンチ・後編~

ソマン⑪~人生最大のピンチ・後編~

※汚い話になります。

美味しい夕食を頂いて、少しゆっくりした後、筆者は自分の寝床がある上の部屋に戻った。
お祈りがまだ少し残っていた。

図らずも2泊することになり、ナコから運んでくれた軽トラックの運ちゃんには、「筆者が病気だ」という理由で、迎えを明日の午前中に伸ばしてもらっている。

「病気だ」とか言いながら山を登って下りてきたのだが、
明日も元気に下山できるだろうと安心していた。
お祈りを終

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ソマン⑩~人生最大のピンチ・前編~

ソマン⑩~人生最大のピンチ・前編~

やって来た時から波乱続きのソマンであったが、
更に人生最大のピンチがやって来た。

困難が起こった時の意識の持ち方のヒントは、
「困難は浄化である」と考えることである。
困難も原因があって起こる。
起こった後でそれにこだわらなければ、結果が実った業は効力を失って消え去る。

その大きさに大小はあるかもしれないが、
困難が大きければ、来るだろう更に大きな災難を避ける効果がある。

筆者の場合、何か大

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ソマン⑨~メメ~

ソマン⑨~メメ~

メメは、スピティ地方の言葉で「おじいさん」を意味する。
ソマンのメメは、5年間天空の?聖地を守っている番人である。

筆者達が訪れた時は、たまたまローカルの女性2人が5泊していたが、
訪れる人のほとんどは1~2泊で帰る人々ばかりだ。

ひとりで寺を守り、聖地を訪れた人のために寝る場所と食事の世話をする。
頼まれれば周囲の聖地を廻るガイドもする。
険しい山の上にある祠など、素人では登れない道でも、比

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