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僧院ツアー③~キー・僧院~

ラルンの柳にさよならをして車に戻ると、道は廻りながら下りに入った。
スピティ川沿いの幹線道路にもどって、カザを通ってキーへ向かう。

スピティ渓谷にある僧院の名前は村と同じ名前が多く、
村の名前がキーだったからキー僧院になったのか、
キー僧院の周りに集落ができてキー村になったのか、
よく分からない。

ともあれ、カザにもカザ僧院というサキャ派の僧院がある。
参拝する時間は無かったけれど、大通りに面する形で、新しく立派な僧院があった。

昼ご飯をカザで食べる予定にしていたのだが、カザから30分ほどでキー僧院に着くという。お坊さんも「このまま行こう」ということで、途中下車は無くなった。
彼はいたってお元気。
おそらく、ゆっくり参拝していた外国人にご飯まで食べさせていると、帰路が非常に遅くなると考えたのだろう。

実際、その日僧院に着いて僧院長さまにお礼を言いに行った時、
「何でこんなに遅くなったんだ?」
と訊かれた。

さて、カザ(約3500m)はタボ(約3000m)より標高が高い。
キーはカザより標高が高い。
近隣の僧院で最も標高が高い場所(4166m)にある僧院だそうだ。

先日観光客から聞いたところによると、ダンカル僧院が最も高いという話であったが。

キー僧院は、周りに何もない砂漠地帯の真ん中に、陸の孤島のように立っている写真が多い。
砂漠状に見える下の平地は、実はスピティ川沿いに作られた大麦の畑で、我々が参拝した9月下旬にはもう刈り入れが終わり、刈られた麦の穂が乾かされ、一部が脱穀されている時期だった。
新しい麦焦しが作られ、初物が僧院などに寄進される頃である。

なので、僧院へ向かう道すがらもベージュ色に乾いていた。
これが砂漠のように見えるのだろうと合点がいった。

村は低地にあり、僧院は丘の上にある。
僧院の正門近くまで上ると、何だか車が多く、沢山の人が動き回っている。
お坊さんがここで車を降りろというので、友人と2人、門の前で降りた。
この後、車は下の駐車場に停められることになる。

車を出た途端に目にしたのは、何人かの若者が炊いたご飯とダル(豆スープ)をバケツに入れて運んでいる場面だった。
飲み物を運んでいる者もいて、2ℓ入りのコーラのペットボトルが1本コロコロと転がり、標高が高いせいか蓋が開いてプシューッと泡を吹き、車のタイヤに向かって威嚇をしていた。

お坊さんは上に行けという仕草をしているので、しょうがなく友人と2人、僧院への道を歩く。入り口の広場を抜けると階段があって、古い僧院の建物へ向かう通路が続いていた。

キー僧院にはお坊さんが多い。
タボ僧院で引き受けるスピティ地区3村以外の村は、全てキー僧院の管轄になるという。
ゲルク派に属するキー僧院は、仏教哲学をテキストにそって問答とともによく勉強する。
学僧数は200~300人であるという。
彼らの中から成績優良者、あるいはやる気のある者がダラムサラや南インドの僧院へ派遣され、多くの学僧とともに研鑽を積んで、卒業して故郷に帰ってくる。
そして後輩に仏教哲学を教える、
というのが、理想のコースである。

多くのお坊さんが外に出て勉強をして帰ってくるけれど、
帰って来ない人もいる。

キー僧院には同級生がいると聞いていたので、ささやかなお土産を渡そうと思い、そこら辺にいた若いお坊さん達に、同級生Kについてきいてみた。
「あ、K先生だ」と分かってくれたのだが、今はいないという。

KとはSNSで連絡をとっていたので、友人がWiFiを貸してくれ、メッセージを入れようとした時、母からSkype電話がきた。

すごいタイミングだと思いながら、僧院ではなく下のスピティ川と麦畑、向いの山などを見せながら話をした。
「直子ちゃんは、そのままで良いからね。」と言ってくれた言葉が嬉しかった。

キー僧院では、建物を写真に撮ることはできないけれど、
ヒマラヤ地方に残っている古い僧院施設の中でも、最も僧院として実働している僧院の1つだろう。

現在進行形で、しかも活発に運営されていることは、我々が参拝した日の様子を見ても分かる。
明日からキー僧院のラマ、ロチェン・リンポチェの法話会が催されるということで、僧院挙げて準備の真っ最中であった。
同級生のKも、明日からの法話会に父君を連れてくるために、実家に帰っているとのことだった。

先ずは土でできたお城のような、僧院の建物に入っていく。
この僧院も、階段は急で狭い。

つづく。


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