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好きな記事(詩)1

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2021年7月の記事一覧

ねじれ

ねじれ

下から光が降り注ぐ。
そのはじまりは好奇心の甘さ。
タブノキの美徳を持つ人々は
耐えがたい高温の中で逆上を抑えている。

余りは数々の熾烈を超えた。
木陰からは恐ろしい欲動がはみ出している。
破裂するか萎え萎むかを選びうる、
風船が不動であることを明証してみせよ。

所有は受難に他ならない。
しかし、喪失は運動を意味している。
バラの花は告示した、
我々の喜びが深刻であることを。

ポットの中身は

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現代の病

現代の病

どうやら認めざるをえない瞞着が
海の一塊にはりついている
波打つほどに蔦は絡まるので
はばたくのを一度やめなくてはならない
黒い光がなにものもうつしだせずに
錆びの島をぐるぐる回っている

苔むした貝殻が都市をものがたる
そこかしこでぎょろぎょろしている瞼が
雲みたいにちりぢりになって 蒼白く
無関係を決め込んだ日の泡立ち

血みどろと養殖しかない海辺の
どの灯台を愛しうるだろう
枯れ木の歌は悲し

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我々は今すぐに逃走しなければならない

詩を書こうとするとき
それはもはや詩ではない
効率的な自殺を推奨している国家の威信
どんな正当性にも屈しない
核心の言葉が必要だった

加速度的に我々は乖離する
理念のないものは
人を踏まずに生きていくことができず
また信仰のないものは
どんな言葉にも耳を貸そうとはしない

菌糸の拡がりをまねる
時効の前には思うこともあるだろうか
目下あふれる廃棄物の放つ芳しい匂いこそ
閉塞と思考停止を象徴してい

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雨がわからない

雨がわからない

脊椎の痛みをわけあたえよう
祈りが路端におちているようだ
繊毛がわななく鐘の平たさだけを帯びて
短い言葉ではまずい文明以後の朝
熟れたつくりものは泥吐弁を持たなくては
銃眼はふかいところから聞き耳を立てている
赤ん坊の声ではない 金属音だ
狭さが遅延していく爛れた夕暮れ
のびやかな種が木漏れ日に浮き出ていた
アメリカの歯はしろい

ふ型の靄に光線を奪われてゆく
罪のすそを祈りたためば
そこはもう沼

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ナチュールモルト

新しい絵ができた
宗教的な言葉を並べてみる
読むことは煩わしい
だが描くことはもっと煩わしい

形而上のはさみで断つ
錯乱のうつつにおいて
鬱蒼としげる懶惰のくさばな
下弦の月は物言わぬ森に帰る

後ろめたさの王国
感情の通ってきた道のりは険しく
やさしさを忘れられない
そして争いがまたはじまる

愚鈍さと無能さが
風景に溶ける音程をききわける
べったりと塗りつぶしたものたちは
あらゆる方法で感光

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白い蝶が舞う

白い蝶が舞う

七月もあと三日を残すところとなった。
郵便局で用事を済ませ公園へ向かう
酔芙蓉は緑に包まれた蕾になった。
懐かしい嬉しい気持ちが湧き上がる。

斜面に視線を向けると小さな花
白い花の周りを蝶が舞う
蝶は変化と再生の象徴
動かぬものから空を舞うものへ

白き蝶は純粋と浄化の象徴
思いの汚れを教えにきた
想いを浄化せよと教えにきた
転機と始まりは心しだいなのだ。

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わたし という魂は うたかたの旅人

わたし という魂は うたかたの旅人

☆photopos-2516  2021.7.28

わたし
という魂は
うたかたの旅人

いつのまにか
あらわれ

つかのまの
からだを
激しく燃やしながら

つかのまの
こころで
せわしなく歌い

つかのまの
いまを
永遠のごとく生き

やがて
どこかへと
去ってゆく

わたし
という魂は
わたしを忘れ

忘れたあとに
またわたしになる
うたかたの旅人なのか

※愛媛県松山市・高縄山にて

好物

好物

雨に降られて
風に吹かれて
日に照らされて

草でもはやして

今日は
地面になって
なんにもしない日

約束のある日の尊さは
重々承知している

約束があるから
学ぶことができるし
痛みを知って
少しずつでも人になれる

けれども
そんな日の積み重ねばかりでは
命がすり減ってしまう

むっくりと
氣の起こるまで

とことん何もしない日

そんな日もまた
わたしの好物だ

⭐︎

京都ラーメン森井

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マレフィック

マレフィック

生まれながらに不幸者
我が身を呪った熱情に
命の揺らぎを焼き尽くす
地図に記した道なんぞ
楽しみひとつもなかろうと
道に非る外の道

這いつくばっては立ち上がり
木漏れ日さえも逃げて行く
陰鬱とした最中でも
一心不乱に目を開き
今が全ての始まりで
今こそ凡ゆる終末で

泥に塗れた斃死でも
土は等しく慈しみ
いつかは花も咲くだろう
いずれは風になるだろう
それが誰かの声になり
それもひとつの愛となり

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始まり

始まり

始まりは苦しむ為にあるのでは無い。

苦しみの始まりは果を実らせる始まり

果実が待つから苦しみは始まる

苦しみは心を広く強く靭やかにする

癒やされてばかりいると依存になる

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存在は分裂しうるか

存在は分裂しうるか

生命の山なす粒子、
そのための賭金、
それは毎日、毎日、
他の誰かの感受性を
奪いとろうとすること。
雨に濡れた土が放つ匂い。
葉の擦れる硬質な音、
その向こうに見え隠れする
きらめきをいつも胸元に置いておく。
それはけっして抜けない背骨。
だが、瞳の色は一様でなく、
血の密度は気分に基づく。
懐胎するのはふたりの人間が
肉の共鳴にとりさらわれたときだ。

吸い込む空虚、黄金色。
歪んでゆく今ここ

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できてる!

できてる!

落ちた時こそ

胸を張って

余裕がある時こそ
 
自然体で

食らいついてリディム

かなぐり捨ててサブライム

かつての同志はこう言った

成し遂げろ、なんとしてでも

そうこうして

人は丸みをおびて

貫禄のはしゃぎに到達

パイナップルは

引き裂かれる

ジューシーに

マスカットは

顔を出す

渾身のテンションで

ナッシントゥールーズ

天井知らずの開き直り

地獄の穴から

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敵か味方か

敵か味方か

敵を作り出す
味方を得る為
くだらない
悪をしつらえる
正義を立証するため
バカバカしい
渦中に居ると
気も付かないのか
全く呆れ返る
魂の抜けた
生ける傀儡
あな恐ろしや
行きはよいよい
帰りは無無無
選択は自由だ
悪いが俺は
関わりたくもない
呪いたきゃ呪え
殺したきゃ殺せ
そのかわり
臭い息を近付けるな

永遠の少年

永遠の少年

☆photopos-2513  2021.7.25

少年の無心が
有心に変わるとき
好きはただ好きではいられなくなる

イノセンスの好きに
いろんな理由が忍び込むとき
少年はもう少年ではいられなくなるのだ

少年であることを忘れ去ったとき
ひとは世間を生きるようになる

そこでは言葉はもう
心のままではいられなくなり
言葉にすればするほど
心はそこから離れてゆく

言葉が心から離れたとき
考える

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