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吾妻ひでお『失踪日記』を母に勧めた話

吾妻ひでお『失踪日記』を母に勧めた話

(2021年のブログ記事のリライトです)

吾妻ひでお『アル中病棟』を読んだ。
やっぱりこの人の実録マンガは面白い。大ボリュームだがスラスラ読めた。

前作『失踪日記』では作者本人にまつわる出来事がメインだったが、今回は登場人物たちのキャラ立ちが素晴らしい。
アルコール依存症のシビアな現状を、オモシロ奇妙な人間劇として描いている。

今から十年以上前、私は『失踪日記』を何度も読み返していた。
母親

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「テレゴニー(先夫遺伝)」の幻惑

「テレゴニー(先夫遺伝)」の幻惑

青空文庫で、夢野久作の『押絵の奇蹟』という作品を読んだ。

ある歌舞伎役者と人妻が道ならぬ淡い恋に落ち、その証は、予想もしない“あるところ”に芽吹いてしまう・・・・というお話。

物語の中で、歌舞伎役者と人妻(主人公の母)とは「純愛」ということになっている。
つまり肉体関係なし。それなのに、人妻が夫との間にもうけた娘は、歌舞伎役者に瓜二つ。
不貞を疑われた人妻は、夫に斬り殺されてしまう。

月日が

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意味不明なグリム童話『ハンスのトリーネ』が伝えたかった事とは

意味不明なグリム童話『ハンスのトリーネ』が伝えたかった事とは

グリム童話に、『ハンスのトリーネ』というお話がある。

『ハンスのトリーネ』の知名度はあまり高くないと思う。
それもそのはず、この物語は、グリム童話の初版でしか取り上げられていないからだ。

第2版以降で削除された理由は、調べた限り不明だった。

これは私の考えだが、単純に面白みが薄く、教訓と言うべきものがない、という理由があるのではないかと思う。
何より、はっきり言ってこの話、意味がわからないの

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『火口のふたり』を映画・小説両方から考察――富士山は火山である。

『火口のふたり』を映画・小説両方から考察――富士山は火山である。

(うっすらネタバレがあります。ご了承ください)

去年か一昨年、Amazonプライムで『火口のふたり』を観た。性描写が話題になった作品である。

率直に言うと、ちょっと気持ち悪くなるほど生々しい映画だった。
いわゆるポルノ作品のような「魅せる」ための性描写でなく、隣家の情事を覗き見てしまったような、気まずいほどの生々しさだ。

物語としては、帰郷した男・賢治(柄本佑)が、結婚式を控えた直子(瀧内公

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美輪明宏『おしゃれ大図鑑』から世界が広がった

美輪明宏『おしゃれ大図鑑』から世界が広がった

私にとって、芸術や文学への興味の門扉を開けてくれた本が、10代の頃に読んだ、美輪明宏の著書『おしゃれ大図鑑』(集英社)だった。

あまりに繰り返し読んだせいで本体がヨレヨレになってしまい、引越しのときに手放してしまったのだが、この本が教えてくれた事は、今も私の意識に多大な影響をもたらしている。

「おしゃれ」と冠されてはいるが、この本に取り上げられている内容はファッションに限らず、かなり幅広い。

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上質な混沌の欠片――山田花子『自殺直前日記』

上質な混沌の欠片――山田花子『自殺直前日記』

「ガロ系漫画家」のありかた
山田花子は「ガロ系」と称される漫画家である。
24歳で早世した彼女の最も有名な著作は、死後に出版された『自殺直前日記』であろう。

この本が世に出たのは、語弊を恐れずに言えば、彼女が亡くなった“おかげ”である。
あまりに率直で無邪気な言葉の断片たちは、混沌としていて、ひとつの「作品」あるいは「商品」として売り出すにはまとまりを欠いている。
プロの漫画家である以上、世に出

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「本を読まない」ということ――横尾忠則『言葉を離れる』

「本を読まない」ということ――横尾忠則『言葉を離れる』

私の夫は、仕事に関係する以外の本を全く読まない。余暇に小説を愉しむ、などということはまずない。
読むのは昔のジャンプ漫画(『こち亀』とか『男塾』)くらいだ。

わが子も、どちらかと言うと読書嫌いかもしれない。漫画や図鑑は熱心に読むが、それに比べると、文字の本はあまり読まない。
第一、ゲームとYouTubeに割く時間が多すぎて、読書にまで手が回らないといった様子だ。

私はわりと活字を読む方で、用が

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ミニマリスト・筆子さんのシンプル思考術

ミニマリスト・筆子さんのシンプル思考術

ミニマリストブロガー・筆子さん
断捨離というのは、元々やましたひでこさんが提唱した言葉で、ヨガの「断行・捨行・離行」に由来している。生活スタイルだけでなく、心の在り方にも深く関わる考え方だ。

そんな成り立ちもあってか、片付け・断捨離は、スピリチュアル界との親和性が高いように思う。
何かと「開運」という言葉と結びつけられたり、断捨離の後に悪い出来事が起きるのを「好転反応」と呼ぶ人がいたり。
一部で

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