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ミニマリスト・筆子さんのシンプル思考術

ミニマリストブロガー・筆子さん


断捨離というのは、元々やましたひでこさんが提唱した言葉で、ヨガの「断行・捨行・離行」に由来している。生活スタイルだけでなく、心の在り方にも深く関わる考え方だ。

そんな成り立ちもあってか、片付け・断捨離は、スピリチュアル界との親和性が高いように思う。
何かと「開運」という言葉と結びつけられたり、断捨離の後に悪い出来事が起きるのを「好転反応」と呼ぶ人がいたり。
一部では、断捨離やミニマリズムというムーブメント自身、ある種の宗教みを帯びてきてさえいるように思う。

私は油断するとモノを溜め込んでしまう方なので、自戒のために片付け本やミニマリストさんのブログを読むことが多いのだが、そういった逸脱気味のミニマリズムには、あまり共鳴できないなぁと感じていた。


そんな中で出会った、ミニマリストブロガー・筆子さんの文章は、最も共感出来るものであった。

筆子さんは、いわゆる主婦ブロガーの中では、かなりドライで現実主義であるように思う。時には読者から寄せられたコメントに対し「それって無駄じゃないですか?」という感じでバッサリいくこともあり、馴れ合いみたいなものもあまりない。
それでも、不思議と嫌な感じはない。冷たいというより、冷静で的確、理知的という印象を受ける。読者の求めることをスッ、スッと提示してくれるので、ブログを読んでいると「とりあえず動いてみよう」とやる気が出るのだ。

記事はどれも、視点の角度や深さが新鮮で、無意識のうちに惰性で続けてしまっている「形骸化した習慣」に気づかせてもらうことが多い。
筆子さんは現在カナダ在住とのことなので、それもあって、日本的な生活習慣を俯瞰する視点をお持ちなのだろう。


まず読むべき2冊


現在私の手元には、筆子さんの本が2冊ある。『1週間で8割捨てる技術』と、『それって、必要? いらないものにしばられずに、1週間で人生を変える30の方法』(いずれもKADOKAWA)である。

特に『1週間で―』に書かれている「1週間で8割捨てるプラン」は参考にしている。
私は2~3ヶ月に一度、「部屋がごちゃついてきたなぁ」と感じたタイミングで断捨離するので、その前に一度目を通し、段取りを確認している。
もはや辞書とか地図帳のように、「定期的に参照するための実用的な本」という扱いである。

この本には、片付けの具体的な方法と心構えが、過不足なく盛り込まれている。

タイトルには「捨てる」という言葉が入っているが、断捨離の「断」に当たる、「家に物を入れない」ことについても書かれている。
個人的は、キャラクター物への考え方に納得した。

(キャラクターグッズを見て)「ああ、かわいいな」と思うことがあります。しかし、「買いたい、欲しい」とは思いません。家の主役は自分や家族であり、キャラクター達ではないからです。

『1週間で8割捨てる技術』より

それまでキャラ物や飾り物が大好きだった私であるが、この一節を読んで、100均やし◯むらでキャラクターコラボ品を買い漁るという悪癖を改めることが出来た。

この一冊を通じ、「モノ主体でなく、住む人が主体の家にしよう」という意識が身についたように思う。


二冊目の『それって、必要?』は、基本的な捨てるテクニックから一歩進んで、買い物の仕方や生活習慣など、「自分を知る・省みる」ということにフォーカスしている。
ある程度、断捨離の進んだ人向けの内容だ。

この本を読んで捨てるべきは、ゴミや不用品だけでなく、「思い込み」である。
「必要だと思い込んでいるモノ」と「実際に必要なモノ」の間には乖離があり、そのことに気付けば、多くの労力や時間、お金などをムダにしなくて済むようになる。

例えば筆子さんは、マットレスや敷布団を使わない生活をしている。毛布を二つ折りにしたものを床に敷き、その上に寝ているそうだ。
これは「寝るときにはベッドや布団が必要」という思い込みを捨てることで、ベッドメイキングや寝具の手入れから解放され、本当に必要な「質の良い睡眠」を手に入れたという例である。

このようなテクニックは、筆子さんがご自身の生活に合わせて編み出したものであるため、人によっては、あまり実践的でないと感じるかもしれない。
それらを直接取り入れなくても、「あ、これ別になくても生活できるんだ」と考え方を柔軟にする手助けになるので、「自分にはそこまで出来ない」と切り捨てず、そのスタンスを学ぶべきであると思う。

筆子さんの文章には、物質からの束縛、さらには思い込みという自縄自縛から逃れるためのヒントがたくさん詰まっている。

7つに分かれた章は、後半に行くにつれ、精神的・哲学的なものになっていく。
不要なモノや考えを捨てた後で、「さて、これから何をすべきか?」と路頭に迷う人が、より「自分らしい生活(人生)」を送るためのガイドのような内容になっている。
つかみどころのない「自分らしさ」というものに近づく方法を具体的に示しているのが、本書の特長である。

私も取り入れている「モーニングページ」や「家事ノート」など、書いて頭と心をスッキリさせる習慣についても触れられているので、文字を書くことが好きな人にも勧めたい。

シンプル&ミニマル思考の基本は「足るを知る」


私が影響を受けたのは、筆子さんの「シンプルな考え方」そのものだ。

例えばボールペンひとつ取っても、必要なものを必要な分だけ買い、それを使い切る。
家にあるならそれを使う。使い切る。
当たり前すぎることではあるが、意外と出来ていなかったりするものだ。

「既にあるものを使う。使い切る」というのは、突き詰めると、老子の「足るを知る」という言葉に集約されると思う。
まずは断捨離を進め、物質面で「足るを知る」ことで、この言葉がより腑に落ちるようになる。

片付いていない部屋に悩む人は、そもそも、自分が何を持っているかを把握していないことが多い。
それで、既に持っているものを新たに買って来てしまったり、いつも「必要なものが足りてない」と不安になったりする。
片付けを通して、「既に持っているから、これ以上望まなくてもいい」とわかれば、より生活も人生も楽しめるというものだ。

私は、特に成人以降の人生というのは、すべて「足るを知る」ための物語であると考えている。
その手助けとなる筆子さんの文章に、今後も定期的に目を通していきたい。

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