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妄想ショートショート部

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妄想好きなオトナ達が同じテーマでショートショートを書きます。
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2020年7月の記事一覧

化け猫

化け猫

「こないだヒデの弟に久しぶりにバッタリ会ったよ。」

「ノブに?」

「うん。登校日だったのかな。ランドセルちっちゃくなってた。身長も抜かれちゃったかも。」

「6年だからな。背の順、一番後ろなんだって。」

 坂を登ると、鳥居から一番近い自動販売機に自転車を並べる。

 工藤はいつものようにレモン味の清涼飲料水のロング缶のボタンを迷いなく叩いた。その手の甲に汗が弾けて、傾き始めた西日を反射してい

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おじさんとパンケーキと若者

おじさんとパンケーキと若者

 「良いっすよね♪朝からパンケーキ。糖分とると幸せな気分になるし」

グイグイと俺の前に相席してきたのは、スーツをしっかりと着ている割には髪はロングヘアーを一括りにした、サラリーマン風の若い男だった。

「にしても、朝は混むってわかってんだから相席が嫌なやつは来なきゃいいのに!」

先ほどの女性客に聞こえる程度のボリュームで言い放つ。

「ま、あの人たちが待つっていったから俺が今パンケーキにありつ

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ご来店、お待ちしてます。

ご来店、お待ちしてます。

5月25日
 今日は久しぶりのバイト。コロナからの緊急事態宣言、やっと解除〜バイトもずっと休みで干上がるかと思った。社員さんたちはずっと出てるんだもんな、社会人って感じ。新宿駅のホームは人だらけで、店にもひっきりなしにお客さん。皆マスクでいつも以上に無口。ロボットみたいだ。そんなこと思いながら接客してたから、一度だけお釣りを間違う。もう、みんなSuica使えよ。

5月26日
 暑い。蒸し暑い。も

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たかみーが朝食を。

たかみーが朝食を。

え…あれ…たかみーじゃない?

いつからいた?なんで気付かなかったんだろう。こんな見える位置に…いや、本物かどうかわかんないけど。偽物?え?でもあんなに色白いおじさんいる?髪が綺麗なおじさんいる?窓際で朝の光が差し込んでキラキラしてるんだけど。あんなキラキラしてるおじさんいる?

周りの人は気付かないの?気付いてて知らないフリしてるの?となりの席の女の子たちはなぜ普通に座ってるの?たかみー知らない

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AM7:30

AM7:30

「僕はここのモーニングが好きでね。もし何か苦手なものがあったら遠慮なく言って下さい。」

 前菜の向こう側に座った男は耳障りのいい声でそう言うと、並んだ銀食器を内側から使うのか外側から使うのか忘れて考え込んでしまった俺を見て、にこやかに微笑んだ。

 髪をビシッと撫でつけた熟年のウエイターが、ワゴンに置かれた料理を真っ白なテーブルクロスの上に並べていく。

(スープはおそらくこの丸いスプーン…とす

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早とちり

早とちり

 初夏、執筆に行き詰まり、宿をとった。

 行き詰まったと言っても、生みの苦しみというような大層なものではない。ただ、元来、呼吸をするように言葉が内から溢れてくるタイプではないのだ。

 海岸沿いの平地に建つ古宿は、その立地から窓いっぱいに水平線が見渡せる造りになっていた。
 壮観な景色に、窓を開けて目一杯潮風を吸込みたかったが、畳の真ん中の座卓に置かれた『虫が入るため、窓を開けないでください』の

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故郷

故郷

嫌な事があって眠れない夜は、海を見ると不思議と心が落ち着いた。

海面に映ってきらきらと揺れる街灯り。繁華街の夜景が照らす水面は、華やかで喧しく、だが孤独を癒す灯りだった。あの灯りの一つひとつの下に人がいる。

都会に住む私は、暮していくための糧を得るのに心がいっぱいで、自分の孤独から目を背ける事を覚えた。

物心ついた時にはすでに両親はいなかった。老いて幼い私に依存してくる祖父母と暮らしていた日

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こんな海じゃ溺れない

こんな海じゃ溺れない

「ねえ運転手さん。この人降りたら、海に行ってください。近くでいいからお願いします」

 ベロベロに酔いつぶれた挙句、私に寄りかかって爆睡している同僚をすみに追いやりながら、そう告げたところまでは覚えてる。

 今、国道沿いを歩きながら、波の音を聴いているのはそのせいだ。こんな夜更けに、湘南にいるのはそのせいだ。

 全然近くはなかったけど、確かに、この上なく海らしい海にいる。

 でも、あそこで降

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砂を掘るということは

砂を掘るということは

ザクッ、グッ、ドサッ

ザクッ、グッ、ドサッ

ザクッ、グッ、ドサッ

なるほどね、砂を掘るのはたぶん幼稚園以来だけどなんとなくコツ掴んできたわ。スコップの角度と勢いとどの位置でテコするか、ね。いけるいける。

つーか、どこまで掘ればいいんだ?足曲げれば見えなくなるくらい?全身?もっと深く?ネットで調べておくんだったな。ネットにあるか?「砂浜 深さ 人」みたいな?ああ、こんなざるみたいな計画、うま

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断崖絶壁

断崖絶壁

  梅雨が明けて久しぶりの晴れ間、暇すぎて昼で仕事場を追い出され半休になった。溜めていた録画でも見ようかと思ったら、電話が鳴る。

「アオイ、私、結婚することになったの。隠してたけど、お腹に赤ちゃんが居てね、もう3か月も過ぎてて、いつ言おうか悩んでたんだけどね、今日彼と一緒に籍を入れてきたの。」

と言い出した。

「……おめでとう。ちょっと驚きすぎて、そうなんだ。良かったね」

「母子手帳って

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カメラマン(仮)

カメラマン(仮)

 ずっと馬鹿みたいに晴れてたのに、今日は朝から雨だった。日頃のおこないか?今日、姉は嫁に行く。

 こういう堅っ苦しい式みたいなのは苦手だけど、まあ、家族のだし。タダ飯食えるからいっか、くらいに思ってたのに。2年前から趣味で始めた一眼レフ。こいつのせいで、今日は一日カメラマンだ。

 ちゃんとプロに頼めばいいのに。こだわりはないのかね、そこに。「あんたに撮ってもらいたい」とか、なんだそれ。こういう

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白い金魚

白い金魚

おいおい、こんな街中でウェディングドレスで号泣してる女がいるよ…

引くわー。超絶引くわー。人よけてんじゃん。涙なの?鼻水なの?ってなってんじゃん。なんかの撮影かよってくらい綺麗に豪快に号泣してるわ。

まああれウチの姉ちゃんなんだけど。気付いてたけど。

25にもなってわんわん泣いてんじゃねえよ。

だいたいなんで今日なんだよ。智樹さんと衣装合わせだって言ってたじゃないか。そのままここ来たのかよ

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クーラー

クーラー

『へー。あんなに気強いのにね。』

「そこがいいんだって。義兄さん、物好きだよね。」

『ドMの人だ!』

「元カレのくせにそういうこと言う?」

『小学生の時の話だろ!』

 大体アレは、彼氏とかじゃなくて、ほぼ舎弟だし。おまけに2週間で一方的に解雇されたんだって。
 という工藤の恨み節まで含めて、この流れは姉が話に出る時のお約束になっていたが、この度、姉の結婚が決まったので、今のを最後にめでた

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ふじいろ

ふじいろ

 結婚式が嫌いだ。お金を払ってまで、どうでもいい話を延々聞かされるだけ。本当に祝いたい夫婦には、個別でなにか送ればいいでしょう? 自分が結婚した時に呼べばいいじゃないと言われても、こっちは結婚する相手も予定もない30歳なのよ。

 薄紫のふんわりとしたギリギリ膝下のドレスは、妹が自分のお色直しのドレスが紫だからと無理やり合わせた。わざわざ何店舗も回って、渋る私と一緒に購入したのだ。本来なら、花嫁が

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