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究極の「ヤバい人」の登場を学ぶ「帰ってきたヒトラー」

<文学(21歩目)>
「責任を取る」って待ち望むことばですが、「他者を考える思考」が無いと究極の「ヤバい人」を増長させることを学ぶ。

帰ってきたヒトラー 上
ティムール・ヴェルメシュ, 森内 薫
河出書房新社

帰ってきたヒトラー 下
ティムール・ヴェルメシュ, 森内 薫
河出書房新社

「21歩目」はドイツ発のベストセラーから、究極の「ヤバい人」の登場が、何故多くの国民に受け入れられてしまうのかを考えるのに最適な作品です。

ティムール・ヴェルメシュさんの素晴らしい作品。サラリーマン時代の研修で「究極の悪の台頭を許さない」ための研修で、旧大日本帝国陸軍の「辻政信」氏の専横を学んだ時に教えられたことがそのまんま出ていて驚いた作品です。

作品として面白い!テレビ局の裏事情を使って、深刻な問題を乾いた笑いに置き換えて、長編でも飽きさせない。

私は特にヤバイタイプの人として、アドルフ・ヒトラーと辻政信が似ていると感じた。

前者は選挙によって選ばれた政治家。後者は大日本帝国陸軍という官僚組織で頭角を現したエリート。両者に共通するのは「真剣」「真面目」「自分に厳しい」の3点セットに「たゆまぬ努力」がトッピング。この条件が揃うと究極のヤバい状態になる!

大半の人が「自分に厳しい」が欠けるので3点セットになることはほぼ無い。しかし、「自分に厳しい」がセットされ、「たゆまぬ努力」がトッピングされると大変なことになる。ここが核心部だと感じた。

私たちは神様ではないので、あらかじめ結果を知っているわけではない。
すると、現代の私たちは「過去問」の様に結果がわかっているので、ヒトラーと辻政信の「おぞましさ」が鼻につく(故に、乾いた笑いが起きる)が、結果がわからない時にこの3点セットに「たゆまぬ努力」が加味されたものに出遭うと多数派は引っ張られる。

この際のリトマス試験紙は、「世界観」に要注意なのだ!と20代の頃の研修で叩きこまれた。

この作品の「ドイツ民族」や、「大和民族」等の大衆が受け入れやすい「世界観」を究極に純化させた結果が、人類への大災害。

ヒトラーが提示したのは、「政策」は枝葉で、核心部は大衆が歓喜する「世界観」が重要で、この「世界観」が、大衆に受け入れられると、一気に渦になる。

つまり、台頭を許した流れを押さえないで、アドルフ・ヒトラー「個人」の犯罪(あるいは辻政信個人が悪い)として、学ぶことを怠ると、現代でも容易に「あの時代が帰ってきた」になってしまう。

作中のヒトラーは「責任を取る」を強く押し出して渦に乗る。これに騙されないためには3点セットが出てきた時に、「世界観」が欺瞞ではなく「他者を考える思考」が入っているか?がとても重要だと思う。
※具体的に言うと、「生まれ」のみで権利が取得出来る「右翼的思想」には他者を考える思考が入っていない。

そして、違和感を覚えた知識人は「反対」すると「声がでかい人物・集団」と対峙しないといけない「面倒」を避けて、ある程度野放しにする傾向がある。

この知識人たちの無関心により渦が巨大に成長すると「止められない」につながると感じた。

「自分に厳しい」は守ることが難しい美徳。だからと言って、何でも許してしまうと究極の暴走になる。
真の「悪」は、登場時は「素晴らしい資質」に見えがちなので、注意しよう!

家族で読んで、考えさせられた作品です。そして、映画よりも詳細で訴えるとことの多い作品です。

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