マガジンのカバー画像

おいしさを開く鍵

25
料理が苦手な方、好きだけれど億劫な方、 そして大好きな方へ、私なりの小さな自信の積み重ね方をご紹介します。
運営しているクリエイター

#エッセイ部門

うつわの衣替え

うつわの衣替え

木々の緑も日毎濃くなり、爽やかな初夏の頃がやってきました。
楽しそうな鳥の囀りを聞いていると、なんだかふーっ、と深呼吸したくなります。

江戸料理を教わったある料亭で、
器たちも、衣(?)替えをすると良いと習い、
そこでは四季それぞれにやっておられました。

春の器は使う時期が短いので、我が家ではそれほど大きく入れ替える必要もなく、
夏前のこの時期に、先生に倣った分け方でやり始めています。

特に

もっとみる
食卓の、ハレ(晴れ)とケ(褻)について

食卓の、ハレ(晴れ)とケ(褻)について

ハレとケ。
非日常と日常。
お祭りやお祝い、行事の日と、何気ない普通の日。
英語にするとformalとinformalでしょうか。
どうもそれでは括りきれない、日本ならではの伝統の根底にある一種の祈りのようなものが、確かにそこにあると感じています。

例えば身につけるもの。
元旦、七五三、結婚など、当日に晴れ着を着たり、参拝したり、きちんと形を整えてみると、普段の日とは段違いにスーッと、良い心持ち

もっとみる
料理が億劫になったとき

料理が億劫になったとき

私は頭の中がほぼ食べものという変わり者のため、作るときにはほぼしんどさや億劫が顔を出すことはありませんが、片付けも料理のうち。
ああ、あの時はしんどかったなあ、なんていう思い出は、やはり沢山、心の奥にあります。

使った道具や鍋、器を洗って拭い、元にあった場所に戻すだけでずっとすっきり片付いていることがわかっているのに、朝も晩もいつもぎりぎり。
頑張っているはずなのにうまく行かず、家事が終わり切ら

もっとみる
ひとさじの強い味方たち〜スペイン・バスクの料理〜

ひとさじの強い味方たち〜スペイン・バスクの料理〜

それはまだ自由に海外に行けていた頃、
スペイン・バスク地方の街へ訪れた時の話です。

旧市街をそぞろ歩いてみれば、
どの路地にも数多くの魅力溢れるバルが立ち並び、
わくわくしながら覗いてみると、
チーズ専門、肉に強い、シーフード多め、賞を獲得した最先端の店など、それぞれ固有の趣向を凝らしたピンチョスたちが、カウンターの端から端まで数え切れないほどに華やかに並べられ、
その壮観な眺めには、毎回心が躍

もっとみる
料理のなかの科学

料理のなかの科学

「料理は芸術であり、しかも高尚な科学である」という言葉を聞いたことがあります。
芸術ととらえられるかどうかは、作り手の思い入れや腕によってまちまちなところがあるものの、
科学については実感をもって気づかされることが頻繁にあります。

裏ごし器のざるの目に垂直、平行でなく、斜めにへらを押し付けるとよく潰れるとか、黒豆に鉄の釘を入れると黒く仕上がるとか、酢と油で乳化させてマヨネーズやドレッシングができ

もっとみる
うちの料理について。

うちの料理について。

仕事で作る料理と比べ、うちの料理で丁寧にすべきことはなんだろうか。時折考えることがあります。

少し話が逸れますが、
子育てが進み、綱渡りの毎日から少し時間の余裕ができたところで、空の巣なのか燃え尽きなのか、はたまた更年期なのか定かではありませんが、いっとき心の風邪のような状況になり、それこそ縋るように毎週土曜、禅寺の早朝座禅に通っていたことがあり
その時の経験をきっかけに、具体的に心がけるように

もっとみる