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#夜

葬儀屋の夜へ

匿名の他人に
死を運ぶ葬儀屋
そこに情は無く
彼は淡々と人を殺し
遺体を火葬して
一握の灰へと還す
自然の摂理の様に
死を与え葬儀を繰り返す
誰も微笑まない夜へ
霊柩車を走らせながら

白い朝

ラム酒を
飲み過ぎた夜は
白い朝が
ちらつきながら
私を迎えに来る
それは遠い
過去の様に
曖昧で
何時も思い出ずに
私は独り
白い朝の扉を開ける
どんなに
寂しかろうとも

フロイライン

錆び付いた夜に
フロイラインを越える
Z2のCRキャブレーターが
空を吸い込んで
延々と加速するのさ
美しい事は
曝け出してはいけない
それは心の奥に
しまって置くべきなんだ
自分の為だけにさ

貴方が消えた夜を

溢れる涙を数えたなら
貴方が消えた夜を
越えられただろうか
人の心が描く幻想を
形に出来たならば
貴方の消えた夜を
捨てられるだろうか
幾つもの日々が過ぎて
私が老いさらばえても
貴方の消えた夜は
私に延々と纏わり続け
壊してしまうのでしょう
弱い私を嘲笑いながら

闇と夜の子供

バラブシュカのキューを
両手に抱いて眠る
闇と夜の子供は
親の顔を知らない
生まれ落とされた
その瞬間から
孤独を歩むよにと
定められたから
夜と闇の子供は
親の愛を知らない
それはまやかしだと
震える命が囁くから
意味なき生を
歩み続けて
彼は化物に為るだろう
闇と夜の様に

ロカビリー・ジェット・エンド

ポマードで纏めた髪で
ステージに立つジェット団
ステップを踏み
ロカビリーを歌う
メンバーが外で揉めていると
連絡がヘッドに入り
ジェット団の精鋭達が
店を飛び出し単車を飛ばす
争いからは逃れられないと
理解していても彼らには
確かな誇りが胸に咲いていた
それを傷付けられない為に
命を賭けて来たのだから

ウエスト・トゥナイト

些細な喧嘩に
巻き込まれた
相手が呼んだのは
シャーク団だった
泣く子も黙る
その怖さに
警察もギャングも娼婦すら
一目置く彼らを
止めれる者は
ジェット団しかいない
鼓動が止まる前に
彼らのヘッドに話を付け
その場を何とか収めて
夜が少しずつ更けて逝く
強者達の夢の後先が

白蛇

内向的な少女が
求めるのは静かな日々
山も谷も無く
平面が続くだけの
人生で良かった
夜道で会った白蛇が
影も無く少女に囁く
君は外に出るべきだと
その言葉に背を押され
少女は夜の街へ飛び出す
蛹が蝶へ変わる様に

下天の夜へ

喜びは少ない方が
悲しまなくて済むと
呟く不良少年の
赤いCB750Fが
唸りを上げて
下天の夜へ消えた
其れは速過ぎて
誰にも掴めない
淡い真夏の夢の様に
記憶から薄れるだろう

夜と閃光

鉄工所の夜
光が途切れない工場
灼けた鉄は延々と
ローラーの上を回る
溶接の火花が
閃光の様に飛び散り
工員が炎に抱かれても
何時もと変わらずに
灼けた鉄は回るだろう
どんな風が吹こうが
構う事など無く

焔が落ちる

貴方の為には
生きられない
あの人は唯
そう言って消えた
焔が落ちる
夜の街は今日も
色鮮やかに
人を飲み込む
欲望を隠さずに

ナタリー

湿った夜に
安いバーで
酒を飲む不良
異国の娘に
本当の恋をした
上手く言えないけど
本物の恋をした
その気持ちが
美しい事だと
彼はまだ知らずに
単車で街を流した
朝が空に顔を出すまで

逃れたい真実

雨に歌う子猫
夜を待つ不良
客を待つ娼婦
人を殺すニート
誰かに守られたいと
願っても叶わずに
皆等しく
奈落へ落ちて逝く

老犬のスキャット

年も日付も
初めから知らなかった
だから今は
何をしても良いのさ
老犬のスキャット
夜に木霊する
左利きの猫が横目で
彼を眺めて消えた
憐れんだ顔を隠せずに