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#神

神の両手

世界を創造した神は
その両手を使い
土くれから人を作った
やがて人は増え
神の存在を忘れて
天に届きそうな
塔を作った
まるで自分達が
全てを手に入れたと
思い違えて
人の驕りを嘆き
神はその両手に雷と
竜巻を携えて
天に届きそうな
塔を破壊しつくし
人に見切りを付け
天へと去ってしまった
しばれる冬の夜に

不確かな真実

罪を与える事に
奔走するザアカイ
清貧を説きながら
幾ら金を掻き集めても
生活苦に陥るキリスト
久遠の十字架に
張り付けられながら
クレマチスの丘を
進むのは御免だと
声を張り上げ
民衆に叫ぶユダ
本当の罪人は
巧妙な罠の様に
隠されて見えやしない

愚者の宴

愚かな罪を犯す者は
宴でその禊を
落とそうとする
鋳造された神に
赦しを乞うまで
愚者の宴は
終わらず回るのさ
命が一巡するまで

神の居ない季節に

神の居ない季節に
悪魔と歌おう
手を取り合って
神の消えた季節は
悪魔と踊ろう
分かち合って
神の死んだ季節に
悪魔と踊ろう
世界が血に見えても

アムリィタ

機械の手錠に
繋がれた神は
近未来で作られた空を
眺めて終末を憂う
生き神を手元に
収めたと疑わない
浅はかな人類が
滅びへ向かう中で
最後に叫び狂う刹那
神は嘆き憂うだろう
全てを作り直そうと

ライト・エデン

幸せな筈の
楽園には
何かが無かった
それは
言葉に出来ない
哀しみの様に
内に秘めて
隠してしまおう
ここは楽園なのだから
神が作った
永遠なのだから

Ⅾ・Ⅾ

不可逆な生物の
哀しみを知ったなら
泣いてくれるかい
とても偉い人
戯れで作ったと
退屈そうに言い放ち
全てを壊すんだろ
そうなる前に
これでも喰らいな
ディート・デリンジャー
神には何も効かないとか
有り触れた事を言う前に
もがき苦しんで死ぬ
何故かってそれは
俺も昔そこにいたから
全て知っているのさ
所詮うつろうもので
作られた命なのだから

十字を切る者

異国の地で
敵兵を撃ち斃す
何も知らない儘
山の様に重なる遺体
気が触れた仲間が
手榴弾を體に纏って
敵陣へと向かい
途中で撃たれ自爆した
ありふれた
何時もの日常に
僕はただ十字を切る
祈る神すら探せない
この美しい地獄で
僕はただ十字を切り
銃を乱射する
生き残る為だけに

ロエン修道士の懺悔

黒ずくめの服を纏った
穏やかなあの修道士は
過去に殺人を犯した
陰ではそんな噂があった
確かに間違いではない
戦争で敵兵を山の様に
殺しまくった英雄なのだから
彼はその頃の己を深く蔑んで
自分を神の御許へ捧げた
許されざる者として
日々の願いが届かなくとも
彼は必ず祈りを捧げる
愚かだったあの日の自分を
地獄の業火に晒す為に
穢れた命が燃え尽きるまで
人で居られますようにと

メシアの転落

私は
神に選ばれた筈だった
祝福を受け
生まれ変われると信じてた
何故か
全て裏目に出て
祈りすら
届きはしない日々に
私は
疲れ果ててしまった
闇市で
手に入れた時限爆弾を手挟み
私は
人でざわめく街へと向かう
全てを清算する為に

剝がした夜

神の右手で
夜を剥がそう
壊れてしまった
貴方の為に
悪魔の左手で
街を壊そう
狂ってしまった
貴方の為に

リィンカーネーション

何度転生させても
殺し屋に為る鬼火
神が憐れんで
全てを組み替えようが
何故か彼だけが
輪廻の輪から外れる
自分の力に
限界を感じた神は
真実に気付いてしまう
自分もまた偽装れたのだと

チェーホフのライフル

漁火だけを頼りに
暗闇の大海原で
トドを撃つチェーホフ
その弾丸は一発で
心臓を確実に貫いて
祈る間も無く絶命させる
神の見えざる手の様に

脆い器

人と言う
脆く弱い器に
心を入れるのを
神が諦めたならば
世界は違う
色を写せたろうか
僕は偶に
考えたりする
突然訪れる死に
今日も怯えながら