マガジンのカバー画像

短編小説

12
様々なジャンルの短編小説集です。
運営しているクリエイター

#文学フリマ

短編小説【ウラとオモテシリーズ】「恋の賞味期限日・オモテ編」

短編小説【ウラとオモテシリーズ】「恋の賞味期限日・オモテ編」

「あっ、賞味期限、イヴの日だ」
今日は朝から何も食べていないことに気づき、深夜1時に家にストックされているカップヌードルを食べようとして、手に取って、ふとカップ麺の底を見ると、「賞味期限 22.12.24」と書かれてやがる。
くそっ「イヴ」と「賞味期限」の言葉を思い浮かべると、あのことを思い出すわ。
「恋の賞味期限は一般的におおよそ二年と言われている」
なんともクリスマスシーズンには相応しいことを

もっとみる
短編小説【ウラとオモテシリーズ】「嘘つきな69番目の欠片・ウラ編」

短編小説【ウラとオモテシリーズ】「嘘つきな69番目の欠片・ウラ編」

※「嘘つきな69番目の欠片・オモテ編」を読んでいない方は上記のページに飛んでいただければと存じます。

公園の隅にあるベンチに丸くなって座る。この場所が定位置だ。
この場所は公園全体を見回せれるから、気に入ってる。
隣には、目が死んでいて白髪交じりの人間の男が足組んで、新聞を読みながら座っている。
「最悪”69番”が覚醒するようなことがあれば、むこうとこちらの世界を結ぶ門を閉じるとする。いいよな、

もっとみる
短編小説【ウラとオモテシリーズ】「嘘つきな69番目の欠片・オモテ編」

短編小説【ウラとオモテシリーズ】「嘘つきな69番目の欠片・オモテ編」

「トルソニーミカは絶対復活してはならぬ」
鏡には机の上に座って、足をぶらぶらとしている黒のワンピースの女の子と神妙な面持ちの黒猫が映っている。
「その話、何度目?聞き飽きた」
女の子は幼い顔立ちだが、眉間のシワを寄せると老婆と見間違う程に渋い顔で黒猫を睨みつける。
「平和ボケとしている貴様にトルソニーミカの恐ろしさを何度でも理解してもらうためだ」
黒猫は身体を正面に向けて、ブツブツと文句を垂れる。

もっとみる
短編小説【ウラとオモテシリーズ】「夢の続きは…・ウラ編」

短編小説【ウラとオモテシリーズ】「夢の続きは…・ウラ編」

※「夢の続きは…・オモテ編」を読んでいない方は上記のページに飛んでいただければと存じます。

ー現実世界に生まれたら、あなたは私のことを好きになってくれるかな

ーあなたから生まれた存在だけど、私はあなたの理想であって、理想ではないわ

ーいつしか、あなたが思い描いた私の像は、感情を持つように。

ーこれが、笑うことなんだ。これが、腹を立てることなんだ。これが、寂しいことなんだ。これが…好きになる

もっとみる
短編小説【ウラとオモテシリーズ】「夢の続きは…・オモテ編」

短編小説【ウラとオモテシリーズ】「夢の続きは…・オモテ編」

「610号室は…この廊下か」
病院は走ってだめと頭で分かっていても、どうも身体は言うことを聞いてくれない。
君のもとに、すぐ駆けつけたい想いは目的の病室に近づく毎に昂ぶってくる。だが、今は感情を抑えるんだ。
頭がもやもやしている中、早足で歩いていると、”610号室”と書かれた壁に突き出たプレートが見えた。
「ここか…」
病室前の扉の横には”織部冬子”と表札が掲げてあるのを確認する。
僕は、息を整え

もっとみる
短編小説【ウラとオモテシリーズ】「ハートの転売ヤー・ウラ編」

短編小説【ウラとオモテシリーズ】「ハートの転売ヤー・ウラ編」

※「ハートの転売ヤー・オモテ編」を読んでいない方は上記のページに飛んでいただければと存じます。

「ちょ、ユ、ユウキくーん」
ミユキが叫び、ユウキくんがこっちへ全力速で走ってくるわ。
あたしというと昇降口の影で張り込みんでいる刑事のように隠れて、ミユキとユウキくんのやり取りを一部始終覗き見していたところ。
ユウキくんが校舎に駆け込み、あたしに気づかず通過しようとしていたので、「こっちこっち」と声を

もっとみる
短編小説【ウラとオモテシリーズ】「ハートの転売ヤー・オモテ編」

短編小説【ウラとオモテシリーズ】「ハートの転売ヤー・オモテ編」

「えぇー、第二ボタン、ミサキにあげた!?」
「く、苦しい、え、襟、捕まえ、んといて…」
「あっ、ごめん、ユウキくん」
驚きのあまり私はユウキくんの襟を掴んで、凄んでしまった。
襟を掴んでいた手を直様離し、何度も頭を下げて、謝った。
「ゲホゲホ」
首元を手で押さを、苦しそうに空咳をしているユウキくんに、恐る恐る口を開く。
「ねえ?なんで、ミサキなんかに?えっ、まさか、ミサキと…そんな関係やったの?」

もっとみる