マガジンのカバー画像

書評

148
運営しているクリエイター

#幸せ

NHKスペシャル取材班編著(2012)『無縁社会』文春文庫

全く色褪せない、むしろますます重大になっている社会問題である「無縁社会」。2010年にあぶり出され、流行語にもなったこの問題は令和の時代になっても、孤独・孤立対策が焦点になるなど人々の暮らしを蝕む一大要因である。

誰かに見守られながら生まれる人間が、どうして死に際には誰にも看取られることなく孤独で、時には何か月も発見されずに朽ち果てていることが有り得てしまうのか。人権や人道の次元で到底受け入れら

もっとみる

大久保真紀(2018)『ルポ 児童相談所』朝日新書



罪のない人間が、こんなにも不条理な環境で生きなければならないということに義憤を感じるのは人間の正しい感情の働きであるはずなので、早急な対応を心から求めたいと思います。

そしてさらに言えば、日本は「ケアする人」への待遇が信じられないくらい悪すぎます。社会全体を俯瞰してみたときの給与・報酬の分配の現在の在り方にメスを入れなければこの国の将来は全く無いと言わざるを得ません。

読売新聞経済部(2019)『インサイド財務省』中央公論新社



この国を動かす一つの組織の内実が、綿密な取材によって鮮やかに描き出されている。強く感じるのは財務省という組織が、この国の最高峰ともいえる人材集団であり、その一挙手一投足にまだ大きな影響力があるはずだということ。

理念を持って、この国の行く先を遠く見据え、解を考え抜く財務官僚の、誇り高きが再び蘇らんことを。そして、顔も見ぬ多くの国民一人一人の幸せを背負って立たんとする気概を持つ人間がこれからも

もっとみる

蒼井ブルー(2015)『僕の隣で勝手に幸せになってください』KADOKAWA



言葉が伝える大きな力。生きる力だったり、愛する力だったりする。そんな力をこの本から少しもらっちゃおうかな。写真をとってみたい。言葉を発してみたい。きれいに真っすぐ生きてみたい。

心が綺麗な人が、美しい言葉を紡げるのだろうか。正しい人が、人を動かす言葉を持っているのだろうか。たぶん間違っていないけど、ホントのところわからない。正直な思いなら、なによりも強い気がした。

水無田気流(2015)『「居場所」のない男、「時間」がない女』日本経済新聞出版社



ジェンダー関連の一般的な社会学の本である。女性の労働社会進出は、男性の家庭・地域社会進出と同時に進めなければならない。そうでない政策はただただ超人的な女性しか評価されない社会を生む。

題名が衝撃的だろう。でも、どこかふとした共感を覚える意味内容でもある。居場所と時間、二つの異なる貧困の形を私たちは否応なく突き付けられている。将来社会への不安を、現実のものにしてはいけない。