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書評

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#日本

馬場ゆうき(2022)『日本に20代国会議員がいなくなる日』国政情報センター

2021年の第49回衆議院議員総選挙で誕生した当代唯一の20代国会議員である福島県選出の馬場ゆうき衆議院議員による自伝的著書。いかにして育ち、政治家となり、何を考えてきたのかが余すことなく記されている。

一人一人がそれなりに立派な考えを持っているものだということを考えさせられる。しかしそれでも、皆が力を合わせて同じ方向に向けて進んで行くことは中々難しい。それは多様性と熟議の観点からはいいことだと

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塩野七生(2010)『日本人へ リーダー篇』文春新書

世界がテロと闘っていた米ブッシュ政権当時の国際政治環境下にあって、古代ローマを扱う歴史家がその含蓄とともに国際情勢と日本の置かれた環境を分析するエッセー集。驚くべきことは、現在のウクライナ侵略を巡る国際政治の有り様と世界が何ら変わっていないように思えること。

賢者は歴史に学ぶというが、ローマの歴史に学んだ著者の、今の我々からしたら一昔前を論評する本書に、また我々も学ぶところが多いというのは感じ入

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石原慎太郎(2018)『天才』幻冬舎文庫



天才・田中角栄の生涯を一人称視点で描いた小説。田中角栄という一人の人生があったことを厳然として標し続けてくれるだろう。この際、著者の長逝にも哀悼の意を示したい。

先を読み、例え理解されずとも国民にとって必要な施策を打つことが政治の仕事であり、現代の政治家も大いに勉強しなくてはならない。また、田中氏の人を巻き込む力には感心するばかりである。しっかりと引き継いでいかなくてはと思う。それでも、人生

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首藤信彦・鳩山友紀夫(2019)『次の日本へ』詩想社新書



国民が共に、手を携えて、お互いを認め合って、望むべき正しい姿=共通善を実現しようと共和主義を唱える本。参考になる部分もあるが、この手の類の本を読む際に気を付けなければならないのは、理想や目標という明るい部分に共感できるからといって、彼らが当座の敵と見なすものや改革の矛先という主張の暗い部分を無批判に受け入れてはならないということ。

政治は中道に寄ると言われる通り、我々人間の望む理想の世界なん

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岩屋毅(2016)『「カジノ法」の真意:「IR」が観光立国と地方創生を推進する』KADOKAWA



統合型リゾート(カジノを含む)の導入は、日本にとってどのような効果があるのかを解説した入門書。国会での立法の中心的役割を果たした著者による本書から、いっけん批判の多い政策でも確とした理由はあるのだということを感じ取ってほしいところ。

全ての政策的対立にあてはまることだが、一面では悪であっても他面では善であることは当然である。IRも確かに軽犯罪の増加などは事実としてあり得るものの、規制制度の確

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藤原正彦(2011)『日本人の誇り』文春新書



主に歴史認識の問題について、どちらかといえば当時の日本を擁護する立場で書かれた新書。歴史とは、史実そのものではなく、後の時代を生きる者によるある種の創作であることは避けられない以上、様々な見方があって然るべきだろう。

自国の過去や伝統に誇りを持つことが出来なければ、社会の発展も目前の課題解決もままならなくなるという主張には完全に同意するところだ。我々はチーム戦。チームに誇りを持とう。